『読んで観て聴く 近代日本の仏教文化』
いただきもの。
日本の近代仏教研究が活発なのは、いまさらいうまでもない近年の研究トレンドだと思うのだが、なかでも2010年代以降、仏教からメディアに注目した研究が多数発表されていることが面白い。
メディア史研究会でも「宗教とメディア」の特集が組まれたところでもある。
そうしたなかで、日常生活のなかに現れてくるメディアを通じて近代の仏教文化の在り方を探ろうとした共同研究の成果が本書である。メディア史研究特集の著者も少し重なる。
個人的に特に衝撃を受けたのが「最澄絵伝の歴史的展開―大正期から昭和期を中心に―」(髙橋洋子)の一篇。
昨年、戦時下の教育紙芝居について卒論を書いた学生から、刊行された紙芝居の目録を見ると、仏教系の紙芝居がいくつかあるという話は聞いていた。そのとき私は何となく戦時中に色々な宗派が布教活動していたからその一環なんだろう、くらいに曖昧に認識して、そういう風に学生に伝えていたのだが、高橋論文によれば、当該時期の紙芝居の刊行理由は、農繁期に女性労働力を確保しようとして、寺院が設けた託児所で上演するためだったと説明される。
このくだりを読んだとき、自分の認識の浅さを恥じた。と同時に、なぜ紙芝居が作られたのかについて、本当に色々な角度から考察することができるのだということも知った。
そのほかにも落語や講談、ラジオでの展開。高山樗牛の言葉が身延山参詣の宣伝に使われていく様子など、いろいろ学ぶところがあった。
仏教とラジオという主題については法蔵館文庫にも入っている。