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向いている職業ってそもそもあるのかという話。

高校時代の担任の先生で、変わった先生がいた。

英語の教員だったが、英語を話している印象がない。何故ならまともに授業をしないからだ。
当時おそらく30代後半の男性教員。
少しぽっちゃりしているが、無精髭ということ以外は割と身だしなみは整っている。
授業中に飛び出す雑談に定評があり、生徒からはそれなりに好かれていた。
授業が終わると質問タイムとかは一切繰り広げず、趣味のドラムを叩きに行くために軽音部へ直行する。

こんな感じの人が高校2年生、3年生の時の担任だったため、私はとにかく英語の授業の記憶がない。

ただ、この人の言葉で、強烈に覚えていることがある。

あれは3年生になりたてのときだ。
今はそういうのがあるのかわからないが、学年全体で「職業適正テスト」というのを受けさせられた。
ペーパーを見ると、数十個の質問がただただ並んでいる。
これに答えていくと、コーンフレークの栄養素の5角形みたいな(ミルクボーイさん大好きです。)結果が出て、「あなたはこういう仕事に向いていますよ」と、暗に進路を示唆してくる、例のアレだ。

めんどくさい。これで授業が一コマ消費される教育システムがすごい。そんなことを考えていたら、担任がこう言った。

「てきとうに答えればいいぞー。こんなのまじめに考えるだけ時間のむだだぞー。」

教育委員会を敵にまわしそうな発言を発していた担任は続けた。

「あとなー、結果も気にしなくていいぞー。職業の適正とかまったく気にしなくていいぞー。」

そこで私はふと質問してみた。「それならこれやる意味ないんじゃないですか?」と。
おそらくクラスの生徒の10分の10は私の意見に同意して、一様に担任をみ見た。そして担任は言った。

「ある分野ですごい結果を残す人って、それまでの既存の価値観とは違う人なんだよ。全く適正がないと言われた人が、その分野の内容それ自体を変えちゃうことがあるんだよ。だから、他人から適正うんぬん言われなくても、好きなことやってりゃいいんだよ。ひょっとしたら、すごいことが起きるかもしれないぞ。」

こんな無責任な大人がいるんだなぁと思ったが、今のところ、人生というものを歩んできて、この発言を否定するには至っていないです。

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