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多重人格商店 「藍色の心臓」 (連作2/2)

「唾棄」(連作1/2)より続く

https://note.com/nefne/n/n083cc945580b



濁流のような感情
彩ったのは藍だった
昔好きだったキャラクターの瞳の色でもあるし
よく見るシャツの色であるし
美しい響きの語であるし
普遍的な色として使われている
奥ゆかしさのある日本語で
奥ゆかしさのある色だ
でも内側から裂け
腕から溢れてくるものまで
藍色である必要はないな

藍色の心臓が
藍色の血液を
ポンプとして全身に充満させた
そしてだくだくと
出口を見つけたからか
腕の切れ目から流れていく

悲劇だったな
この身を掌握するものは
王座について
我が手足を臓腑を意のままに操るは
自分がまいた種だったな
自分が美化した藍だったな
悲劇だったな
誰にも届かない
手の出せない場所に
閉じ込めるなら
この身の中が望ましい
抉られない限り出てこないなら
この身の中が望ましい

「なあ、流石にキモくね」

時代錯誤の価値観投げられ
しかし我が望みは永遠の平和
深い意味などないふたり
このまま共に歩けたらと思うばかり
だけどこの身が傲慢にも
あなたから恋人を奪うなら
あなたから平穏を奪うなら
あなたから親友を奪うなら
それなら捨てましょう
この心臓ごと

突然、
我が身から藍色溢れ出て
愛しく思う間もなく流れ出て
青ざめ決意に至る
決意に至る
すべて暴かれてしまう前に
あなたの幸福が失われる前に
気色の悪い己から
あなたを守るために

心臓藍色に染められた
あなたが気に入って
その色ばかり身につけて

藍色の心臓撃ち抜かれて
親愛をほとばしらせ全身に充満する

藍色の傷口を抑えこんで
藍色の傷口を抑えこんで
胸骨の間で
肥大する
藍色の心臓こわして

さよなら
さよなら
もう二度と会えないね
さよなら
さよなら
わたしは幸せでした
さよなら
さよなら
共に歩くふたりに
さよなら
さよなら
名前が与えられてしまう前に

さよなら
さよなら
藍色の心臓破裂して

朽ちた

【今回の執筆担当者】
青嵐柘榴(あおあらし・ざくろ)/20代。人生の3分の2ほど思い出しだくないけれど、今は人との縁に恵まれました。偏りがすごい。柘榴は誕生石の柘榴石から。尖ったものからネチネチ系、ほのぼの、祈りまで色々書きたいです。本作りたい!


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