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新年詠 2023年1月ポレポレ俳句部

(テキスト:楽来)

1月14日に今年1回目の俳句部が開催されました。まずは、私の感想を交えながら作品を紹介していきたいと思います。今回は「新年詠」です。


福寿草雪冠る墓に供えたり(藤風)


墓地や墓石の暗いイメージに、真っ白な雪、そして福寿草の鮮やかな黄色。色彩の対照性が印象的な作品です。色彩のみならず、墓の死、福寿草の生、雪の自然という象徴的な次元においても、読者に訴えかけるものがあると思いました。


あらたまのクリムトのキスポルカ鳴る(紙の舟)


クリムトという画家に「接吻(キス)」という代表作があります。私はこの俳句で初めて知ったんですが、お花畑に膝立つ女性を、男性がしっかり抱きしめキスをしているという構図の絵画です。抽象度がかなり高く、金色が主体の作品ですので、男女の愛というようなものではなく、幸福そのものを表現しているように私には感じられました。また、ポルカというのは、19世紀にプラハから世界中に広まった舞曲だそうです。クリムトの絵やポルカという音楽を俳句に取り入れたチャレンジングな作品ですが、視覚や聴覚を刺激しつつ、新年のおめでたい気分が表現されています。


新年や培おう人間力(森の中の田んぼ)


新たな年を迎える時に、何か目標を立ててみたり、決意を表明したりすることは、誰でもあることだと思います。この俳句では、人間力というのが何を意味するのかが重要ですが、自句自解によれば、武器に頼らず人間性を磨こう、という意図が含まれているとのことでした。ロシアによるウクライナ侵攻には出口は見えず、国内の政策にも大きな影響が及びました。国民の中に、大きな危機意識が広がっていることを感じとることができました。


福笑ひよりへんてこな君の部屋(松竹梅)


「福笑ひ」というものと「へんてこ」という言葉の相性が抜群に良いですね。「君」は誰のことだろう?ということが俳句部の場においても話題になりましたが、松竹梅さん自身は、特に決めていないとのことでした。でも全体の表現から、「君」に対する思いやりや、やさしさが感じとれるという点では、皆の意見は一致したようです。


松明けの食卓囲む見知る人(のん)


「松明け」というのは、正月の松飾りを取り去る頃のことで新年の季語の一つです。日常と非日常(例えば正月のような)が切り替わるような時に、いつもは何気なく接している身近な存在が、ふっと特別な意味を伴って立ち現れることがあります。そのような感覚はたいてい持続しない事が多いので、俳句で詠むのは難しいと思いますが、この句では家族のことを「見知る人」とすることで、うまく表現できていると思います。見知る人という言葉に冷たさを感じる人もいるかもしれませんが、私には、安心感、納得感、覚悟というものが伝わってきました。


初明り川に降り立つ鷺一羽(楽来)


これは私の句ですが、説明しだすと長くなるので省略します。


さて、年明け最初の俳句部でしたが、あらためてこのような場の貴重さというか、ありがたみを感じることができました。一人一人が感じた事、考えた事を、俳句という一つの作品に仕上げ、月に一度それを持ち寄り仲間に披露する。このような体験は俳句部以外ではなかなか味わえないように感じています。この活動が、末永く続きますように。

楽来/一粒で二度おいしい

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