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多重人格商店街 「家路」

◆NEFNEに関わる人たちによる自由連載《汽水域の人々》。雑貨屋&フリースペースのお店「NEFNE」で交わるひとびと。多様な執筆陣がリカバリーストーリーをはじめ、エッセイ、コラム、小説など好きなように書いています。

夕暮れ時に手を繋いで
十円ぽっちの飴を買った
お兄ちゃんと揃いの飴を
二人で転がした
砂糖を直接舐めたような味が
口に広がって
自然と心がウキウキする
走り出そうとするぼくを
焦ってお兄ちゃんが手で止めた
踏切で止まる
ごうごうと風を切って走る電車
「ぼくはいつかあれの運転手になるんだ」
指をさして
近所に響き渡る声でわあわあ言った
お兄ちゃんは意地悪く
「パイロットも警察官もやるのに〜?」
口角上げて 目尻を下げて
「だって百年も生きるならできるでしょ」と
ぼくは訴える
お兄ちゃんは がんばれよ〜と
心のこもってない返事をする
むすっとしたぼくだけど
お兄ちゃんの手は離さずに
太陽も交えて家路を行く


【今回の執筆担当者】
青嵐柘榴(あおあらし・ざくろ)/20代。人生の3分の2ほど思い出しだくないけれど、今は人との縁に恵まれました。偏りがすごい。柘榴は誕生石の柘榴石から。尖ったものからネチネチ系、ほのぼの、祈りまで色々書きたいです。本作りたい!


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