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coro’s note from 夢見る書店 「追い続けた夢(上)」

◆NEFNEに関わる人たちによる自由連載《汽水域の人々》
雑貨屋&フリースペースのお店「NEFNE」で交わるひとびと。多様な執筆陣がリカバリーストーリーをはじめ、エッセイ、コラム、小説など好きなように書いています。


 私には大きな夢がある。それは「アイドルになること」。

 物心がついたときには、その夢をずっと叶えたいと思っていた。今は、地下アイドルやアイドルグループが数多く存在していて、その夢へのチャンスの枠は私が幼かった時より遙かに広がったように思える。でも、その分倍率も高くなり、よほどのことがない限りオーディションに受かることも夢のまた夢に近い。それは十八歳になった今だから現実を見ることが出来る。ただし、私は自分で言うのもなんだが、ルックスはそれなりに良い方で、学校ではなんだかんだでちやほやされる部類に入る。まぁ、愛媛県の田舎の村だから都会のアイドル達には叶わないのも重々承知なのだけれど。

 そんな私の生い立ちは、幼い頃に両親に捨てられて施設に預けられた。その後、里親として今一緒に暮らしているおばあちゃんに引き取られた。本当はお母さんと呼ぶのにふさわしいぐらい若い人に引き取られたかったけれど、今振り返れば、おばあちゃんに育ててもらって幸せだ。おばあちゃんにも引き取ってもらったときから「夢」のことを告げていたので、応援してくれている。

 そんな中、私は高校を卒業したら東京へ行くことを決めた。アイドルになるにはこの田舎村では無理だと悟ったのだ。しかし、応援してくれていたおばあちゃんは、上京することを許してはくれなかった。愛媛と東京では距離がありすぎて心配で心配でたまらなかったらしい。本当は芸能科のある高校に入って「夢」に向かって羽ばたきたかったけれど、その時は資金面で上京は拒まれた。しかし、専門学校に行くなら私はアルバイトをしながら学費を稼ぎ、おばあちゃんの負担にならないようにすると言って説得したが、おばあちゃんは首を縦には振ってくれなかった。

 その時の私は「どうして、自分の好きなようにさせてくれないの!」とおばあちゃんにたてつくしか出来なかった。

 おばあちゃんは「ごめんね」と謝るだけで理由は決して言わなかった。

(続く)

【今回の執筆担当者】
兼高貴也/1988年12月14日大阪府門真市生まれ。高校時代にケータイ小説ブームの中、執筆活動を開始。関西外国語大学スペイン語学科を卒業。大学一年時、著書である長編小説『突然変異~mutation~』を執筆。同時期において精神疾患である「双極性障害Ⅱ型」を発病。大学卒業後、自宅療養の傍ら作品を数多く執筆。インターネットを介して作品を公表し続け、連載時には小説サイトのランキング上位を獲得するなどの経歴を持つ。その他、小説のみならずオーディオドラマの脚本・監督・マンガ原案の作成・ボーカロイド曲の作詞など様々な分野でマルチに活動。
闘病生活を送りながら、執筆をし続けることで同じように苦しむ読者に「勇気」と「希望」を与えることを目標にしながら、「出来ないことはない」と語り続けることが最大の夢である。
夢見る書店 本店
https://takaya-kanetaka-novels.jimdofree.com


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