バンコクへ(その4)
4日目。早起きして、明日訪れる予定のアムパワー行バスの時刻表を確かめに行く。ガイドブックや旅のブログなどに時刻表は載せられているけれど、こういうのは、前触れもなく変わっていたりするので、可能なら確かめておいたほうがいいという経験則。タイでは小型バスは”ロットゥー”というらしい。これ、大きめのバンやミニバスだけれど、国によって呼び名が違う。バスターミナルはエカマイ駅からすぐのところにある。係の人に聞いて、目的の窓口へ。時刻を確認できた。
せっかくなのでエカマイ周辺を散歩して朝ご飯にありつきたい。路地を歩いていると、ローカルな朝市を見つけた。高層建築の前で小さなパラソルと屋台がいくつか出ている。大きな袋にニラのような野菜が詰め込まれているのは、今朝方運んできたのだろうか。朝は気温もまだそこまであがっていないから、大量の氷に囲まれた魚や、机の上にビニールをかけたその上に切られた肉がおかれていたりする。黄色のマスクに、オレンジ色のエスニックな服を着たおばあさんがいぶかしげに見つめてくる。パックに入っていたご飯を買った。その奥にも小さな屋台が一つあってそこでおかずをGET。食べる場所もなくて、大通りの歩道沿いの開店前の店前に座って食べる。辛くて汗が出る。もれなく全通行人が視線を向けてくる。バンコクの朝は今日も、また動き出したみたいだ。帰りの時間が無くなってしまったので、地下鉄前にたむろしているバイクタクシーのおっちゃんに、ホテル前まで乗せてもらう。風を切って走る旅の感覚がここでもよみがえる。渋滞がひどい。トラムのほうが速かったかもしれないな。
今日は、マハーチャイに行く。タイのローカルの雰囲気を感じられる場所を探していたところ、「地球の歩き方」に書かれていたこの場所に目星をつけてみた。カメラを忘れて、トラムでは間に合わないと判断したので、またUberを使ってしまった・・・。Talat Phlu駅に到着。一つしかないホームでマハーチャイ行の列車を聞く。列車がやってきた。この列車に乗れという。乗ってみれば、反対方向の列車だった。近くの座席の翁がどっち方面に行くつもりなのか聞いてきたので答えると、次がバンコク方面の終点でそのまま折りらしい、セーフセーフ。地元の人も、Maha Chai方面に行くとは思わなかったのだろう。そして、タイの列車、時刻通りに来るのかもしれないぞ。
列車は、それなりのスピードで南西へ向かっていく。終点のマハーチャイまで1時間ほど。南国風の木々や、色の禿げたトタン屋根や、物干しざおに干された日本よりも色鮮やかな洗濯物など、タイの郊外の”暮らし”の間をすり抜けて列車は走る。昼前の車内はまばらだ。子供を抱えた若い男や、年季の入った窓の鉄枠にタイのオレンジの日差しが当たっては逃げていく。列車は途中にあるいくつかの小さな駅に近づくとスピードを落とし、濁ったクラクションを鳴らして停車する。ホームに褪せたピンクや水色のパラソルの屋台が並び、ステンレスの食器が反射しているのが見える。屋台の後ろ、駅の壁には破れた選挙ポスターや仏教関係のポスターがかかっていて、その向こうには絡まりそうな電線と住居が立ち並んでいる。
入れ違いでバンコクへ向かう列車の銀と青のすすけた車体が近づけば、電車は終点に到着する。私はなんとなく、夜行列車でインドのAhmadabadに到着した瞬間を想い出す。またひとつ私の身体はインドへ近づくことになった。
駅を出ればすぐに町のメインストリート。道の両側に、魚や海産物を中心とした商店が並び、買い物に来たスクーターのエンジンをふかす音と商品を売るおばさんたちの声が聞えてくる。路地を曲がって市場の中に入れば、ますます充満する海産物のにおいは、気持ちが悪くなるほど。日本で見たことがあるようなないよう魚が切り身になって大量に店の前に並ぶ。どの店もラインナップには大差ないみたいだ。
何か面白いものはないだろうか。渡し船があるのに向こうにわたらない手はない。対岸へ行ってみることに。鉄道は対岸から、遠くはマレーシアまで続くことになる。買い物や仕事などから向こう岸にわたるスクーターが続々と桟橋を進む。流れの少ない川の上でぬるい風が吹いている。
向こう岸のローカルな食堂でバンコクと一味違う昼ご飯を、と意気込むも、小さな屋台、衛生状態に難もありそうな屋台しかなかった。船をおりてすぐに英語を話すお姉さんが何を探しているのと話しかけて、食堂を、と聞くとなんとなく曖昧な答えだったのもわかる。住宅街に続く道をラウンドアバウトに向かって歩くも、目当ての店はなく、酷暑から来る疲れとこの上ないローカル感を感じ船着場へ戻り、Maha Chai側にあるおそらく街で一番ナウい感じのカフェでサンドイッチか何かを食べる。冷房のガンガンに効いた店内には、Macをいじりながらヘッドホンをつけて仕事をしている人がいて、それはそれで違和感を感じてしまった。
Bangkokに戻る時間はちょうど、下校時間だったらしい。白と紺の上下の制服を着た学生たちであっという間に車内はいっぱいになった。中学生くらいの女の子が向かい合った席に座る。なんとなく土埃と湿気でいっぱいの東南アジア一番さわやかなのは、子供たちの屈託のない話し声と笑顔かもしれない。少し眠る。
Talat Phluに戻ってきた。午後から夕方の時間を使って、Wat Paknamへ行く。ちょうどこの駅から歩いてそこそこのところにある。暑すぎるので、コンビニで水とアイスを買う。タイ(バンコク)にはセブンイレブンが多い。コンビニはほぼセブンだ。マハーチャイにもあったので、広範囲に展開しているのだろうか。セブンといっても、昔は個人商店であったであろうとテナント場所や見た目の古さから推測される。フランチャイズ化しているのだろう。なんとなく日本のヤマザキショップに似ている。
寺院へ向かう大通りには車が行きかう。緑色の軽トラック、荷台にはひさしが覆いかぶさっていて、10人くらいの学生たちがそこに立ったまま乗っているのが通り過ぎていく。他にもいくつか同じような光景をみた。トラックの前面には番号が貼ってあるから、これは行先が違うミニバスのようなものなのだろう。緑色のポロシャツを着て黒髪を三つ編みポニーテールにして、大きなリボンを付けた、まるでアジアの純真のような若い女性の後ろ姿が、スクーターの後ろに片側に両足をおろして斜めに座っている後ろ姿が通り過ぎていった。昼時に比べて暑さは幾分か弱まっただろうか。
Wat Paknamは人気なだけあって、日本人や様々な観光客が訪れていた。思いの外閑静で、観光地然としていない。敷地内にはオレンジ色の袈裟を着た僧侶たちがたくさん歩いている。入場料はかからない。白い仏塔の中に、お目当ての天井画がある。
街に戻り、空港や世界各国の街を模した「Terminal 21」というショッピングモールでお土産など買い物をして、有名なチェーン店でガパオライスを食べる。日本でも食べたことはなかったけれど、考えてみればこの組み合わせで美味しくないわけがない。まだ食べれそうだったので、Nanaに戻ってラーメンを食べて帰った。夜の街を歩けば、怪しげなネオンライトの光と、っ日が落ちて犬を散歩し始める地元の人々と、街が奏でるオーケストラのベースラインのように聞こえ続けるバイクのエンジンの音。
https://www.tripadvisor.com/Restaurant_Review-g293916-d25103775-Reviews-Gapow_Tapae-Bangkok.html
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