PIN百物語 なんでいるの? byみんみん
舞台には霊が寄ってきやすい
そんな噂を聞いたことはないだろうか?
今回は、私が舞台女優をやっていた頃のお話である。
少し長くなるが、お付き合いいただきたい。
序章
私(みんみん)は、20代のほとんどを劇団員として過ごしていた。
年間で4本以上は舞台に立ち、バイトを3つ掛け持ちして生計を立てる、いわゆる貧乏劇団員だ。
芝居をする劇場は様々な場所があり、お墓の真横に建てられたものもある。
そこの劇場で階段系の芝居をやった時には、ポルターガイスト的なことが頻発したとかしないとか。
しかし今回は、その劇場の話ではない。
私の劇団の稽古場で、無料公演をしていた時に事件は起こる。
一章:舞台の幕は上がる
舞台裏で準備を進め、声を殺して出番を待つ。
きっかけ台詞を聞いて、袖から登場して自らの役を演じ始める。
体を正面に向けたタイミングで、客席でこちらを見ているお客様の表情が飛び込んでくる。
『集中してくれてるか?楽しんでくれてるか?』
リアクションから、その日のお客様の"重さ"を測っていると、ふとあり得ない光景に心臓が止まりかけた。
その日の客席に、いるはずのない人の姿があったのだ。
二章:きっかけ
少し時を戻そう。
私がJKとして、ミニスカートにルーズソックスを履いていた頃(それはそれでホラー)
お小遣いを稼ぐため、地元のステーキ屋さんでバイトをしていた。
社員さんもバイト仲間も優しく、何より賄いがうまいという素敵な場所。
時給は安いものの、バイトはうまい賄いを求める大学生などに人気だった。
私の仕事が慣れた頃。
新しいバイトの男性Aさんが入ってきて、私が仕事を教えることになった。
その男性は190cmを超える高身長で、確かかなり頭のいい大学に通う大学生。
パンツ(ズボン)ではなく、パンツ(下着)にシャツINをしているのが印象的な、ちょっと変わった人だった。
何日間かに分けて業務を教えて、だんだんとAさんも業務に慣れてきた頃。
バイト同士、シフトを代わってもらう連絡もするからと、Aさんと私は連絡先を交換。
しかし、AさんはPHS(時代だねぇ)も携帯も持っておらず、渡された連絡先は実家の番号。
心の中で『連絡することはないなぁ』と思いながらも、そのメモを受け取ったのだった。
三章:食い違う2人
数日後。
私のPHSに、Aさんの自宅からの着信が入る。
シフトのことかと思っていたが、その様子はなく。
世間話のようなものが続いた。
不思議に思いながらも、切るに切れなくて相槌を打っているとAさんが不思議なことを言い出した。
Aさん「今度のデートはさ、図書館に行こうよ」
ん?んんん?
私はこの人とデートなんぞをする関係性ではない。
私「いやいや、何言ってるんですか(苦笑)」
Aさん「近くにいい図書館あるからさ。そこに行こう。」
私「...いや、行きませんよデートなんて。」
Aさん「あー。図書館は嫌だった?じゃあ、どこがいい?〇〇(私の下の名前を突然呼び捨て)の行きたいところは?」
私「!?...いや、だからデートはしません。そういうの困りますから。切りますね。」
一方的に進む話に、ちょっと気持ち悪さを感じ、私は無理やり電話を切った。
恐怖すら感じていたので、Aさんの自宅の番号はすぐに着信拒否設定に。
友達などにこの話をしながら、恐怖を紛らわしていた。
数時間後、今度は公衆電話からの着信が入る。
なんの疑いもなく電話に出ると、相手はAさん。
Aさん「何度も電話したんだけど、調子が悪いのかなんだか繋がらなくなっちゃって。」
私「...(恐怖)」
Aさん「んで、どこにデートに行く?」
すぐさま電話を切り、公衆電話からの着信も拒否する設定をし、バイト先の店長に相談の連絡を入れた。
その後、恐る恐るバイト先に出勤すると、Aさんはバイトを辞めていた。
店長がクビにしたのか、自ら辞めたのかは謎。
Aさんが辞めたのでしばらくはバイトを続けたが、バイト先はAさんと自分を繋ぐ唯一の接点。
その事実が怖く、さらに実家の引っ越しもあいまって、私もほどなくしてバイトを辞めたのだった。
四章:なんでいるの?
時は舞台本番のあの日に戻る。
舞台上から客席を見ると、そこにはAさんが座ってこちらをジッと見つめていた。
190cmの巨体に、少しぬぼっとした独特の雰囲気。
見間違えるはずもなく、Aさんだった。
私『なんでAさんがここにいるの?』
恐怖に動揺しながらも、芝居は続けなければならない。
約90分の芝居を終えると、私たち役者は客だしと言って、お客様のお見送りをするためロビーに向かう。
私は客より先に小走りにロビーに向かい、脚本・演出をした先輩に事情を話した。
先輩はAさんと接触しないように取り計らってくれ、私はなんとかその日の舞台を終えることができた。
全てのお客様を送り出すと、先輩が近寄ってきて
先輩「お前が言ってた人、お前のこと聞いてきたよ。なんか偶然っぽかったぞ。」
とのこと。
私の劇団の稽古場は、ステーキ屋さんがあるところと同じ駅。
舞台当日は、駅前にスタッフが立ち
「無料でお芝居やってるので、ぜひ見に来てください!」
などの客引きもやってるので、Aさんがたまたま入ってきたとしてもおかしくはない。
JKだった頃からすでに10年近く経過しての再会に、恐怖を覚えてしまったが...。
ただの偶然なら、今後会うこともないだろうと胸を撫で下ろした。
最終章:偶然ですか?
Aさんが観劇に来た舞台も千秋楽を迎え、その夜は打ち上げが行われた。
打ち上げでは、公演中にお客様から書いていただいたアンケートが回る。
本番中に見ると芝居がブレる人が出てくるので、アンケートは打ち上げまで見れないのがルールだった。
いろんな意見に目を通す中、問題のあの日のアンケートが私の手元にやってくる。
恐る恐る一枚ずつめくっていき、とうとうAさんの名前が書いてあるアンケートを発見。
私「え!?...嘘でしょ...」
私はその用紙を見て絶句する。
そこに書かれたAさんの住所は、私が住んでいる場所の目と鼻の先だったのだ。
あの事件の後、たまたま家族の都合で隣町に引っ越した私。
ステーキ屋さんの近くに住むAさんとは、もう会うことも無いだろうと思っていたのに。
一体いつから近所にいたのか...
Aさんは私の実家の住所を知っているのか...
果たしてこれは、偶然なのか...
謎は未だ、解けないまま。
終わりに
生きてる人間が一番怖い!
と思ってしまう思い出です( ;∀;)
皆さんにも、そんな怖い体験ありませんか?
ぜひ教えてくださいね(^^)
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