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ナチュラル ハイ ~ You Got Rhythm!

 ナチュラル ハイというボーカルとピアノの女性ユニットがいました。音大卒の技能や知識にポップスの感覚をあわせ持ったハイレベルなユニットだったのですが、アルバム二枚程度を残したのみで解散となりました。その後、サブスク文化が浸透しても長らく登録されていなかったのですが、少し前に解禁されたので記念に。ミスなのか、一枚目のアルバムは後半の数曲がSpotifyで登録漏れしてしまっていましたが。彼女らは発表曲数が少ないので、今回は六十分に収まる一つのアルバムのように聞ける形でまとめてみました。
 ナチュラル ハイはボーカルよりもピアノの個性が立っています。軽やかで跳ねるような鍵盤の音がずっと鳴っていて、その音を耳で追いながら聞くのがリスナーの基本スタイルになります。そしてピアノを追っているうちに気付くのです。このボーカルだからナチュラル ハイの音楽は楽しいんだと。声や歌唱の個性はありますし上手ですが、売れるにはパンチがいまひとつ足りない。でも、このピアノにはこのボーカルが妙に合っている。お互いの足りないものを補い合っている。売れるアーティストは自分たちだけでは未完成で、そこにファンが加わることでようやく完成という感じがあります。しかしナチュラル ハイは二人だけですでに完成してしまっていて、その隙の無さが逆にプロとしては弱点だったのかもしれません。
 ピアノの方は後に風カヲル時というインストユニットで活動し、それも悪くないのですが、ナチュラル ハイと比べると物足りない。やっぱりあのボーカルを求めてしまう私がいます。漫才コンビのボケとツッコミのように、音楽でもそれはあるなと再認識させられます。
 上手いだけの音楽なら皆が皆、楽しくはない。彼女らの音楽はジャズやクラシックのバックボーンがあるうえで、キャッチーな要素を意識して入れている。おそらく割り切ってポップスをやっている。
 「プロローグ」と「だから、私は歌う」という両A面シングルがありました。これらは彼女らの個性が確立したナチュラル ハイ史上一位二位の名曲で、アルバム「key」の初めと終わりに配置されました。その完成度から、先の活動にもさらに期待が生まれたのですが、残念ながら2ndアルバムのリリース後はシングル二つを出して活動終了となります。それらもナチュラル ハイの音楽の広がりを感じさせる良作でした。

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