JASRACと音楽教室
音楽教室(原告)がJASRACに対して「レッスンでの楽曲演奏について著作権使用料を徴収することは不当」としてJASRACに請求権がないことの確認を求めた裁判の第一審の判決が2020/2/28に出た。
判決は、原告側の請求は棄却、JASRACの勝訴である。
判決文は、さらっと調べて見つからなかったので裁判長のコメントを引っ張る。
※2020/3/13追記
音楽教育を守る会HPに判決文が掲載されてました。ただ、長いのでまだ読めてないです。。。
「音楽教室では、受講契約を結べば誰でもレッスンを受けられ、受講した生徒は多数存在する」と指摘し、「生徒は不特定かつ多数の公衆に該当する」
裁判はあくまで「法律に基づいてどう判断するか」である。
色んな人が色んな考えを持っているが、感情論や利権は無視してフラットにこの結果をみてみる。
※情報はいろんなニュースから引っ張っているので間違いがあれば言ってください。
裁判について
争点は大きく2つである
1. 著作権法22条の「公の演奏」について
2. 著作権法22条の「聞かせることを目的」とする演奏について
著作権法22条の条文はこんな感じ。
(上演権及び演奏権)
第二十二条 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
(上映権)
第二十二条の二 著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
法律の書き方なので相変わらずわかりにくいが要約すると
「公の演奏をする場合の権利は、著作者にある」
ってところかな。
1. 著作権法22条の「公の演奏」について
裁判所としては、「生徒は不特定かつ多数の公衆に該当する」としている。
文化庁のHPを見るとこんな感じで書いてある。
(注)「公衆」とは?
「公衆」とは、「不特定の人」又は「特定多数の人」を意味します。相手が「ひとりの人」であっても、「誰でも対象となる」ような場合は、「不特定の人」に当たりますので、公衆向けになります。
うん。
原告側に反論の余地なし。
著作権法に書いてある「公衆に直接聞かせることを目的として演奏する」の公衆の定義は法律解釈だと「音楽教室の生徒=公衆」となるのは間違いない。
2. 著作権法22条の「聞かせることを目的」とする演奏について
裁判所としては、聞かせることは「外形的、客観的に他人に聞かせる意思があれば足りる」としている。
教えるために聞かせているとしても「聞かせることを目的とする演奏」に当たるのは誰がみても明らかである。
こちらについても原告側に反論の余地なし。
音楽教室の利益
法律の解釈とは若干異なるが、教室内でのレッスンはもちろん、音楽教室にはおそらくある発表会などのイベントでは絶対的にチケット代として(考え方によっては講師の働くことの対価として)お金(利益)をとっており「営利目的ではない」とは言えない。
もし、ライブハウスのレンタル代だけであれば「利益は出してない」と言えるのかもしれないが、そんな慈善事業ではないだろう。
判決のまとめ
判決をあたらめてまとめると・・・
著作権法第22条(「公の演奏をする場合の権利は、著作者にある」)に基づくと、音楽教室がレッスン等で楽曲を使用する場合JASRACは使用料を請求する権利がある。
感情論的な納得できるできないはあったとしても今回の争点が最初に挙げた2点であった場合裁判所は正しい判断をしたと言えるのではないだろうか。
逆に言うと
「本当はとるべきだったけど今までは取らなかっただけですよ」
と言う捉え方もできる。
言いたいことはわかります。
「だったら最初からとれよ!」と思う気持ちもわかるです。
CDが売れない時代、サブスクも浸透してきているとは言え(サブスクについては以前の記事を参照ください)音楽を作る側は単純にメジャーになれば儲かると言う時代でも無くなってきている。
そのためにも著作者に少しでもお金が入ることは必要だと言う考えもある。
原告側は控訴すると言うことだが、裁判はテレビでやっているように感情に訴えるものではないので争点を変えない限り今のままだと勝ち目はないんじゃないかなと感じてします。
とここまでは裁判について書いてきた。
ここからは個人的見解コーナーです。
ねこぜ的見解
JASRACの中でお金がどう動いているかは分からない。
「一人勝ちして儲けている」かどうかと話しても答えは現時点では出てこないので置いておく。
まず、「音楽教育を守る会」って言うのが正直納得いかない。
「音楽」を守るのではなく「音楽教室」を守るんだよね。
業界は違うが携帯電話事業者がもし「携帯電話事業者を守る会」を立ち上げて利益が減ることを妨害したら皆さんはどう思うだろうか?
話が違う?いや同じである。
音楽教室を守る会と言う名前をつけている時点であくまで自分たちの利益を守ることを前提として他の付属的なことを言っているに過ぎない。
音楽教室に通うことで、素晴らしいミュージシャンが育つ!と言うなんとも輝かしい言葉を言うのであれば、それで守っているのは「音楽教室」ではなく「音楽業界」だよね?
なんて言って取り繕っても第一は音楽教室の利益だし、個人的にそこを守ることはおかしいと思っていない。
ただ、手のいい理由をチラつかせて正義ぶるのはやめてほしい。
JASRACに入ったお金がどう動くかはJASRACのHPに記載されている。
「卵が先か鶏が先か」と言うことになるのかもしれない。
著作者にお金が入らないといい演奏は生まれないし、音楽教室など成長できる場所がないといい著作者は生まれない。
この話の結論は結局ないんだと思う。
どちらが正しいかなんてそれぞれの立場によって変わるし、どっちかにお金が入れば逆にはお金は入らなくなる。
他の仕事だって同じで全員がWIN-WINになることなんて絶対にない。
ただ、法律に基づくと言うルールがある以上その法律をうまく使える側が利益を得ることになる。
おかしいと思うなら法律を変えるしかない。
感情論で言いたいことはあったとしてもそれを言ったところで何も変わらない。
飲み会の場所で会社の愚痴を言っているクソサラリーマンとなんら変わらない。
何も考えずにJASRACが悪者と思っている人も多いと思うのでちゃんと考えてほしいなって思ってこの記事を書きました。
賛否両論あるのは重々承知しているし、感情的になる気持ちもわかるけど、何事も感情的なって攻撃的なことをする前に少しだけ色んなことを調べた方が絶対にいい。
情弱ピエロにならないために。。。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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