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レースフラワー


今日は花友達と初めて待ち合わせをして一緒にご飯を食べた
今日から友達で、以前は客と従業員の関係

「何かお探しですか?」と聞くと
「ガーベラを探してて」と言葉が返ってきた
そこからが2人の始まりだった
偶然にも「いちばんすきな花」のドラマをお互い見ていた
私はドラマに毎週出てくるお花が週ごとに変わっていくのを楽しみにしていた
その客も同じ気持ちであり、毎週ドラマに出てくる花を花屋に求めに来ていたのである。
“花が好き” はたくさん居るけれどその客は特別だった
レースフラワーという白くて小さな花が密集している花がいる
小さな花は寿命がちぢむ度に花が散りやすい
よく他客に言われる
「これかわいいね、でも花が散ってゴミになっちゃう」って、、、
でもその客は違った
「散るとき雪みたいで綺麗ですね」と言った
その瞬間にこの人と一緒に花を見に行きたい
と私の心が救われた
それから半年、花友達が毎週花を買いに来た時は決まって私がおまかせの花を束ねることになり会話が華やかになりすぎない程度に対応していた
退職日もいつも通り花を買いにきて、いつも通りの会話をした
「また会いましょう」とだけ言葉をくれ、
連絡先を交換した

そして、今日、花友達と喫茶店で遅めのランチを済ませ
出逢うきっかけになった花屋へ向かった。
その途中、冷静に驚いたことがあった
花屋の入口を曲がろうとすると、お店によく逢いにきてくれたご夫婦と車ですれ違ったのである
その優しいご夫婦は退職する事を伝えたときまで
「いつでもいいからウチにコーヒー飲みにいらっしゃい、ご飯はよく食べるんだよ」
と芯の温まる言葉をたくさん貰った
ドラマに出てくる台詞かよ、とも思った
そんな夫婦とまさかの店前ですれ違った
本当のご縁ってこの事なんだろうな
その後は花友達と花を見ながら心を弾ませた

もうひとつ驚いたことがあった
花友達と喫茶店の待ち合わせ場所に行く途中に「正欲」という本を買った
興味深い映画だった為公開されてると知ってすぐに昨晩見たところだった

花友達がやってきて何か驚いた顔で見ていたのですぐにドアを開けると
「この本昨日読んだよ」と
「私は昨日映画を見て今日本を買いました」と
花友達が言葉を言い終えるまでに急いで自分の言葉を重ねた
“あぁ、やっぱり会わなくても話さなくても通じてる“
ここでも何かしらの縁を感じて気分が良くなった
たぶん、こういう人は出逢う形が違っても必ずどこかで、また出逢えるし逢っちゃうものだと微笑ましく
花を見た

車内で花友達は冷静に伝えてきたが
カネコアヤノを聴いていた

約束しないで逢うことができたらどんなに嬉しいことだろうね

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