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きみ、アルバイトをする暇があるなら小説を書きたまえ! 3

今宵も昔話で、

僕の好きなアニメ作品に「SHIROBAKO」があります。アニメ制作スタジオを舞台にした青春ドラマで業界の裏側を描いたことでも話題になった作品です。
このテレビアニメ版放映から少したって劇場版が公開されました。そのオープニングテーマ曲が実に緩やか、まったり。聞き惚れているとこんな歌詞が流れてきました。

──みんな、いなくなりました♪ だれも、いなくなりました♪

広島の片田舎から東京へ上京した僕は、当時それなりに知名度のあった某パソコンショップに勤めました。
ちょうど新規開店ラッシュで毎週のようにオープンするお店のお手伝いに奔走しました。労働基準法なんて存在してないも同然。一週間休み無しで働き続けました。
夜はレジ締めが終わっても「今から棚卸しして、ファックスを流して」と本部から無慈悲な電話。
「終わるの朝方になりますよ」と言えば「大丈夫、俺が朝まで待機する」と返ってきます。
そんなブラックな環境なのにアルバイトの募集をすればその面接だけで一日が終わってしまうほど希望者が殺到していたのも、いまの人手不足からは考えられない時代でしたね。

僕はそれでも時間があれば小説を書いておりました。
阿佐ヶ谷に会社が借りていたマンションがあり、そこへパソコンを持ち込んでいたのです。出たばかりの98ノートに一太郎をインストールしていました。
パソコン販売店とはいえ安くはなりません。2年ローンを組んでの購入でした。
このあたりからインターネットがぼちぼち出始め、僕の周囲も『ホームページ』を作る人が増えています。会社がそういう系だということもあり(超有名美少女脱衣麻雀ゲームの開発元でプログラマーをやっていた人とか、社会現象にまでなった”竜の冒険者”の開発企業で営業をやっていた人とか、濃い人ばっかり)皆、はやくから環境を整えていました。
僕はどちらかというと『パソコン通信』にハマっていて、NECが運営していたPC-VANの文学系BBSで小説を発表していました。感想ももらえて嬉しかった。
思えば、青春がビッグバンしてました。彼女とかはいませんでしたが、毎日が充実してたなぁ。

そして、今。
インターネットには高速回線でつながり、テキストを流すだけでなくキンドルなどで表紙や挿絵もついた電子書籍を販売出来る時代。パソコンも98ノートではなく、僕はいまこれをMacBookProで書いております。
でもね、あの時代に知り合った人々はもういません。
世界中がネットを通じてとても近くなったはずなのに、心を震わせたあの時代には戻れないんですよ。

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