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そこはかとなくネガ

10時ジャストの終電を逃すまいと全力疾走する僕の左側にぴったりと伴走する気配。

一瞥し、それがいつものネガであることを確かめた後、ファミリーマートのおでんを買ってしまったことを後悔しながら、最後のカーブを僕はドリフト気味に右ターンした。

案の定、大きくふられたお気に入りのエコバックからは、大量のおでんの汁がほとばしり、今日はやけに毛並みの揃ったネガの黒い前髪を濡らした。

「あ、ごめん。君がいること、気がつかなかった。」

ネガは、そんな僕の見えすいた嘘には飽き飽きした様子で軽く会釈した後、慣れた様子でバックパックに潜り込む

じゃあ、いつものやつで、よろしく。

くぐもったネガの声が背中から聞こえる。

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