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腱板断裂手術日記8



 82歳の佐野さん

大部屋の私の斜め向かいは、82歳の佐野さんだ。
佐野さんの口癖は
"もう  82歳のおばあちゃんなのに"
である。

 佐野さんは、ナースステーションのすぐ側の部屋にいた。
両足の膝関節の手術をしたので身動きがとれず、全ての事を看護師さんにしてもらっていた。
そこから、出世部屋に引っ越ししてきた。
トイレに行くため、リハビリに行く為、何をするにもナースコールで呼んで、立たせてもらわないと1人では出来ない状態だった。そして、車イスを押してもらわ無いと何も出来なかった。

"もう  82歳なのに、両足の手術するなんて、どうかしてるわよね。もうすぐ、棺桶に入るのに、わざわざ痛いおもいして手術するなんて、、、"

 82歳の佐野さんの楽しみは、老人会で子供の頃からのお友達とおしゃべりをすることだった。
しかし、両足が痛くなり、トイレ以外はベッドで 過ごす日常になってしまった。
歩けなくなる心配と痴呆症を心配した娘さんが
即刻、手術を決めたそうだ
"普通はどうする?とか相談するわよねえ。あの人、私が答える前に手術しますって言っちゃったのよ〜。"
"私はする気が無かったの。もう82歳だから、このまま死んでもいいと思ってて。でもね、孫がね、おばあちゃん、足治して一緒に遊ぼうなんて言うもんだからついその気になっちゃったのよね"
と、お孫さんの話しをする時は幸せそうな顔してた。

しかし、このおばあちゃん、82歳の棺桶うんぬんなんて、めっそうも無い。
自主トレ、自主リハは人の3倍位やる。
"82歳だから、治りが悪いから、人の倍やらなくちゃ。
82歳だから、体が硬いから、人の倍やらなくゃ。"

食事は、全体的に量は少ないが、カルシウムを
補強するものがついていた。
一般の人より1品多いのだ。ヨーグルトとか、牛乳とか
"あら〜、私だけ違うの〜?  82歳のおばあちゃんだから骨を丈夫にする物なのね〜"

82歳の佐野さんは今日もたくさんのおしゃべりをして、人の3倍自主トレをして、早く退院出来るように頑張っていた。

早く退院しないと、82歳だから、先が無いのよ〜。と

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