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歳をとったら動物とは暮らせないの?高齢者と猫が暮らすために必要なこと

「保護猫ってどこからくるの?」そんな疑問を持ったことありませんか?

いろんな理由で保護猫は生まれますが、そのひとつが飼い主の遺棄です。「引っ越すから」「子供がアレルギーになったから」「可愛くなくなったから」など理由はさまざまですが、最近増えてきているのが「飼い主が高齢で入院/施設へ入居するから」という理由。

そしてこのケースは、今後もどんどん増えていくことが予想されています。

高齢者と猫の暮らしが抱える問題

2020年に飼い主によって保健所へ持ち込まれた猫の数は10,479頭。同じ理由で保護猫になった猫が、neco-noteにも登録されています。

保護猫シェルターQUEUEの『ジェニ』です。東京都の動物愛護センターからレスキューされたジェニは、同居人との死別によって動物愛護センターへ持ち込まれました。

また、先日neco-noteを卒業した『チコラータ』は、同居していたご夫婦の奥様が介護施設へ入居されるとのことで、岐阜の保健所に持ち込まれました。

「どうして簡単に保健所に連れてっちゃうの?」と思うかもしれませんが、飼い主の置かれてる環境次第では、保健所への持ち込みを避けられないケースも多いのです。

特に飼い主が近隣住民や親族との関係性を築けていない場合、問題は深刻になりがちです。

まず、先に紹介した2匹のように引き取り手が見つからない可能性が高まります。飼い主が歳をとると入院などの理由で住環境が変わることも多いですが、新しい環境で猫と一緒に暮らせるケースはかなり稀です。

そして、地域からの孤立化が生み出す課題として深刻なのが「多頭飼育崩壊」です。多頭飼育崩壊とは、自身が世話できる数を超えて飼育し、家計が破綻してしまうことを指します。

特に、多頭飼育をしている高齢の方が施設へ入るケースも少なくありません。そうなると、すでに保健所や保護団体の負担が大きいところに、突然膨大な数の猫を保護する必要が出てきて、負担がさらに増えてしまいます。

高齢者への譲渡をNGにする保護団体も

紹介したようなケースを避けるため、高齢者への譲渡をしていない保護団体も多くあります。

一般的に保護猫の譲渡を受ける際には、保護猫団体による審査が必要です。「この猫が一生幸せに暮らせる人なのか」を見る審査なので、家の間取りや職業について質問することも多いです。猫は20年近く生きることもある生き物ですから、一緒に暮らす人の年齢も大切なポイントになってきます。

とはいえ、すべての場合で「高齢者絶対お断り」というわけでもありません。高齢者が譲渡を希望されてるときには、高齢の猫を紹介したり、本人が一緒に暮らせなくなった際の後見人がいれば譲渡できたりする保護団体もいます。

高齢者と猫の幸せな関係は?

では高齢者は猫と暮らすことができないのかというと、そうは考えていません。

高齢者と猫の問題は、年齢ではなく地域からの孤立が原因です。つまり、地域(あるいは親族)の繋がりを持ちながら暮らしていれば、万が一の場合でも猫が路頭に迷うことを減らせますし、猫の行方に気を揉むことも減らしていけます。

例えば、預かりボランティア(人間でいう里親)として猫と一緒に暮らす。譲渡ではないので猫の所有権は保護団体のままですが、実際に暮らすのは高齢者の家です。

定期的な報告があれば保護団体としても安心ですし、猫と暮らす高齢者にとっては「繋がり」が生まれます。(実際に、ネコリパブリックという保護猫カフェを営む会社が、岐阜県飛騨市で預かりボランティアの取り組みを始めようとしています。)

すでに猫と暮らしている高齢者のためのサービスもあります。紹介している「老猫ホーム」は、飼い主が入院や介護が必要になった場合の預かり場所です。

高齢者が猫を飼えなくなった場合、いまは親族が引き取るか、団体や保健所に持ち込むしか選択肢がありません。そのため、どうしようもなく野に放すこともあり、猫が不幸になる場合も多いです。

「老猫ホーム」のような一時預かり場所があるだけで、時間にも心にも判断するための余裕が生まれます。

高齢者と猫がよりよく暮らすために必要な「コミュニティ」

これから超高齢化社会を迎える日本で、ペットとなる動物と高齢者との付き合い方は、間違いなく見直されていくべき課題です。これまでは猫を野に放せば済んでいた問題かもしれませんが、猫の室内飼養が推奨されはじめた昨今ではそうもいきません。

とはいえ室内飼養が推奨されはじめてまだ日が浅いので、行き場を失った猫たちをケアする制度はまだまだ整っていないのが現状。官民の連携を強め、紹介した事例のようなセーフティネットを張っていく必要があります。

さらに、その活動を持続可能なものにしていくには地域コミュニティとの連携も欠かせません。ひとりで抱えきれない問題を、地域や周りの人たちで分担していく。1対多の構造で支え、そのシステムと多対多の関係性で構築していく。

共助の精神を前提に保険のビジネスモデルとコミュニティデザインの考え方を合わせれば、個人の負担を最低限に抑えつつ、猫と人との共生社会を築けるはずです。

高齢の方と一緒に暮らしてほしい、落ち着いた猫「しおから」のストーリーはこちら🐈

<執筆=黛>


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