名前通り、少し大人向け。味のある猫「しおから」
時々、「本当のわたしってどれなんだ」って考える。これといった収まりのいい答えはない。
だけど少なくとも確定していることはあって、わたし自身の内的な条件と、わたしを取り囲む外的な条件で「わたし」は変化するし、みんなそういうものだということ。
こんなことを思い出したのは、もりねこに保護されている「しおから」のお話を聞いたから。
沿岸部からやってきた猫の「しおから」
ーー 今回はもりねこにいる、猫の「しおから」の話を伺いたいなと。まずは名前の由来から聞いてもいいですか?
沿岸部にある町で多頭飼育崩壊が見つかって、そこから保護されたんですけど、一度にたくさんの猫がいる状態。
「沿岸部」ってことで、海産物の名前を順番に当てはめていったんです(笑)。だから、「しおから」みたいな顔だったからとかそういう理由ではなくって。
とりあえず、名前を26匹分考えて、捕まえた順に上から順番につけていきましたね。
ーー 他にはどんな名前があったんですか?
他には、さしみ、にぎり、しおさい、さざなみとか。
ーー 握りってなんかいいな〜(笑)
「うに」とかもいいな〜と思ったんですが、以前他の猫につけてしまってたので諦めました。
ーー 多頭崩壊飼育のレスキューにいった際のお話し伺ってもいいですか?
猫が中と外を自由に出入りしていたので、近所から苦情がきて。あとお家の近くに行くと猫の匂いがしてましたね。
猫たちは外で排泄をしていたせいか、中に動物が閉じ込められている多頭飼育崩壊の現場のような劣悪な環境ではなくて、割とキレイではありました。
前の飼い主の方も愛情深い一面があって、聞いたら「このコはこんな日に生まれて…」と話してくれるし、ご飯も大きなお皿にこんもりと盛ってあって、食べたい時に食べ放題って状態で。みんな毛艶もよいんです。
ただやっぱり田舎なので、外に出てると野生動物に襲われたりして亡くなった猫もいたと聞いてます。
半数くらいがFIV(*1)のキャリアでしたね。で、しおからもFIVでした。
(*1) FIV:猫エイズ
ーー 外で自由に繁殖してるってなると。やっぱりそうですよね。
うん、ただ全頭がかかっていたわけではなかっただけマシかなって感じです。
ーー じゃあ、ご飯はちゃんと足りていただろうし、ある程度は健康だったというか、ふくよかだったりしたんですかね?
そうですね〜。中にはもう歳もとってしまって、FIVが発症してしまってそうな猫(*2)もいたのですが、前の飼い主さんが「歳をとってFIVが発症した猫は自分が最期まで面倒をみる」って。それで2匹くらいは置いてきたのかな。
(*2)FIVは感染していても発症しないまま生涯を終える猫もいます。
ーー 前の飼い主さんのもとに残った猫のFIV発症は確定なんですかね?
そこはどうでしょうね〜。発症してるのかな?って感じで、よだれとかがずっと垂れてる状態で。一回病院に連れていって「これはFIVだね」と言われたそうなんですが、「それ以来通院してない」とおっしゃってたので。
“猫らしい”をマルっと詰め込んでみたら、きっとこんな感じ。
ーー しおからの性格ってどんな感じですか?
写真を見るとすごい美人なんですよね。ただ、歯の状態から見るに8〜9歳くらいのそろそろシニアの猫です。
で、性格的にはやっぱり引っ込み思案な子ですね。夜はもりねこのシェルターにあるケージに入れてから帰宅して、朝ケージから出すといつも隠れられる戸棚みたいなスペースにいることが多いですね。
ーー ケージから出るともうスッと隠れていっちゃうみたいな感じ?
もう、そうですね〜!
写真もあんまり好きじゃなくて、写真取ろうとするとなんか変な顔するし(笑)。
夕方ケージに入れようとすると、やっぱりケージには入りたくないから「シャー!!」ってするし。
ーー いや〜、猫だな〜(笑)。
最初は本当に三つ星(キャットフードのブランド名)のカリカリと三つ星ジュレっていう限定されたパウチしか食べなかったです。最近は私が間違えて出した他のフードも食べるようになりましたね。
ーー そこは寛容なんですね(笑)。
そうそう!「なんだ他のも食べられるようになったんじゃん!」って思って。
一時預かりのボランティアさんにしおからをしばらく預けていて、その方が猫を甘やかす方で、残すと違うのあげて、好きなものだけ食べさせるような優しい方だったのもあって、好きなフードしか食べなくなっちゃったんだと思うんですけど。
もりねこでは「これしかありませんよ!」と言ってご飯を出すので(笑)。
ーー なるほどね。じゃあ、多頭飼育からレスキューした時は、その一時預かりの方のところで過ごしてから、もりねこにやってきたんですか?
そうです。その時、FIVキャリアのお部屋が満員だったんです。もうこれ以上入れられないってくらいの猫がいて。
それでしおからは一時預かりさんの元へ行って、FIVキャリアの猫に新しい飼い主が決まってキャリア用のお部屋が空いたので、もりねこにやって来たんです。
ーー なるほどね。最近はなでなでとかはできますか?まだ、シャーシャー?
場所によってかなぁ。フリーにしてたら逃げちゃうんですけど、ケージに入ってしまうと嫌そうな顔をするけど触らせてくれます(笑)。
ーー でも、いい性格してますよね。
本当に、「猫」って感じの性格してますね〜。
ーー ご飯はすぐ食べます?人間が出したものでも食べますか?
食べます、食べます!ご飯の時間が決まってるので、しおからも最近は「そろそろご飯の時間かな」って、自分からケージの中に入って待機してますね。
ーー やばすぎる!
賢いな〜!って思って。もりねこだとゆっくりご飯食べてると他の猫にご飯を取られちゃったりもするので、みんなちゃんと食べますね。
ーー なんか他に愛おしいなって思うエピソードとかありますか?
愛おしい、ですか…日中はとにかく隠れてしまっているので、遊んだりしているところは見たことがないですね。
ーー 他の猫と遊んだりとかもなく?
多頭飼育のところから来たので、他の猫との喧嘩はなく、いつも誰かとひっついてるんですけど。言うなら存在感があんまりないというか…(笑)。
グイグイ自分からアピールしていけば、すぐにお迎え先も決まりそうなのですが。隠れちゃうから、なかなかご縁がなくて。
ーー たしかにしおからは顔も可愛いし、もっとうまくアピールできればね。
やっぱり懐っこい猫から、新しい飼い主さんが決まる傾向があるので。
ーー それはしょうがないですもんね。
しょうがないですね〜。なかなか隠れてるとね。
偶然か必然か。名前通りに少し大人向けな味の猫「しおから」
ーー もし、しおからがもう少し心を開いてくれたとして、どんな家庭なら相性がよさそうですか?
もう8歳程度のシニアなので、未就学児のお子さんもいる家庭というよりかは中学生以上のお子さんで、ある程度落ち着いた環境がいいのかなと思いますね。
あとはご高齢な方がいるようなお家だと一日一緒に過ごせるので、合っていそうです。おじいちゃん、おばあちゃんとご家族みたいなご家庭もいいと思います。しおからは、そんなにはしゃぎ回るような性格ではないので。
ただ、もりねこでは大人しいけど、お家にいくと猫が若返る…と言うか元気になることもあるので、ずっとおとなしいかは少し心配ではあります。
ーー あ〜!ありますよね〜!
「大人しいと思ってお迎えを決めたのに、いざお家に来たらすごく元気で夜も走り回って寝られません」と言われるのも懸念してます。こればっかりはわからないのでね。
ーー もうそれは蓋開けてみないと分からないですからね。
だから、「そんな猫だったとしても問題ないです」って理解のある方だと一番かな。
“ご縁”を楽しめたなら、きっと出会いの彩度がぐっと上がる
保護猫の施設などで共同生活をしていた猫が、猫一匹の環境に変わった途端に性格が変化する話は、わたしも耳にしたことがある。
このお話を聞きながら、「わたしもそういう節あるな…」と自分のことを言われたわけでもないのに共感羞恥に近しい感情に襲われた。で、考えてみた。
どういう場合、その変化が起こるのかと。
結論からいうと冒頭にも書いた通り、あまりにも影響する要素が多すぎて、その変化のパターンは想像しきれないし、変化して当たり前じゃんって再確認するに至った。
結局は何事もご縁で、その一か八かって正直怖い。相性がもうどうしようもなく悪い人と出会って、エネルギーが吸い取られるようなことも実際に経験してきたことがあるので。
一方で、その一か八かの怖さをぐっと堪えて「少し楽しんでみよう…!」と思えた先に見つけた素敵な出会いも知ってる。それがまたわたしの視界の彩度をあげたことも。
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