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振返るということ

いつも熱中する組織のnoteをお読みいただきありがとうございます。
今週は壽田が投稿致します。
 今回は「熱中する組織」の最大の特徴の一つである「検証」について書きます。その「検証」のなかでも基本となる「振返り」について深く掘り下げます。振返りは非常に重要であるにも関わらず、うまくできている組織はそれほど多くはないと思います。
 冒頭で最もお伝えしたいことを書いてしまいますが、「振返り」は絶対に習慣すべき活動です。騙されたと思って、「振返り」を実践しましょう。ここでは、振返るとはどういうことなのか、その基本について整理していきたいと思います。では、今回も少しの間お付き合い下さい。

なぜ振返る必要があるのか

 これまで多くの企業のなかに入り、マネジメントの状況を拝見する機会を得ましたが、計画や実行に比べて、圧倒的にできていないのが、「振返り」です。「振返り」をしているつもりでも不十分だったり、「振返り」をするという発想がなかったり、なかには、「振返り」について「過去について考えても意味がない。もっと前向きにならないと」と考えて、「振返り」を拒絶したりしている組織もありました。「振返り」をしなかったからといって、すぐに実害が発生しないことが多いので、その必要性が認識されていないのは仕方がないことかもしれませんね。まずは、じっくり「振返り」の必要性を考えましょう。​
 マネジャーが活動するのは「答えがない世界」です。この話につきましては過去にまとめておりますので、そちらもお読みいただけると嬉しいです。

 唯一絶対的な答えがない訳ですから、実行してはじめて、行動が意図した結果に結びついたのかどうかがわかります。正解を導き出すには「答え合わせ」をする必要があるわけです。つまり、課題として設定したことが本当に取り組むべき課題だったのか、やるべきことだと思って実行したことが、本当に成果を出すために必要だったことなのか、検証してはじめてわかるのです。そんな世界で、振り返らなかったらどうなるでしょうか。少し大袈裟に言えば、組織は過去に犯した失敗を何度も繰り返して、その度に付加価値のない活動をしいられたり、環境が変化しているのに過去にうまくいったことにこだわったりして、成長機会を逸したりしています。答えがない世界では、答え合わせになる「振返り」は必須なのです。

経験したからといって学ぶとは限らない

 次に「振返り」の必要性を人材の成長という観点から見てみましょう。組織行動学者のデイヴィッド・コルブは、その著書「最強の経験学習」で次のような主張をしております。

 具体的な経験をした後に、内省しながら経験を検討することで、経験の意味を抽象化し、最終的に積極的な行動に出る。うまく学び進めるためには、この学びのサイクルが重要である。

 この経験学習モデルは、組織の学習、そのなかでもマネジメントのような、知識を持っていたからといって結果が伴うとは限らない領域においては特に有効だと実感しています。私なりにコルブの経験学習モデルがマネジメントに役に立つところを2つ、以下で強調してみます。
 まず、経験学習モデルが良いところは、このモデルが終わりのないループになっているところです。このモデルは「常に学習の途上にある」ことが前提となっておりますが、マネジメントの原則は、あるべき姿を高く描き、現状をあるべき姿まで引き上げることにありますから、マネジメントも同様にあるべき姿を永遠に探求する「終わりなき旅」だと言えるでしょう。
 もう一つは、経験学習モデルが「最終的に積極的な行動に出る」という行動変化をベースにしていることです。現代において、企業は激しく移りゆく変化と戦っており、知識付与型の受動的な学習ではなく、常に正解を求める行動変化は、まさにマネジメントに不可欠と言えるでしょう。
 経験学習のサイクルを回し続けるためには、原動力となる「振返り」が不可欠です。行動すれば経験にはなるかも知れませんが、その意味を見出すために「振返り」しなければ、新しい行動には繋がりません。

ではどのように振返るのか

「振返り」の重要性を見てきましたが、次は、どのように振返るのかについて整理しましょう。「振返り」には次の2つのアプローチがあります。
 ①客観的アプローチ
 ②主観的アプローチ
 これは、どちらか一方のアプローチを選ぶということではありません。「振返り」をするときには、2つのアプローチをセットで実施することが重要です。では、各々、少し内容に触れてみましょう。

①客観的アプローチ
 これは、成果と行動を対象に、事実の確認や原因の追究を行う「振返り」です。つまり、目指した結果が得られたのかどうか、計画したことをその通りに実行したのかどうかについて、振返ります。これは至極当たり前のことで、「何を今更」という声が聞こえてきそうですが、それでも敢えて、このアプローチの重要性を強調したいと思います。この客観的アプローチがうまく機能するためには、明確な評価基準を持ち、事実に基づいて振返る必要があります。つまり、あるべき姿やゴール、やるべきこと、アクションプランなど、照らし合わせる明確な対象があり、かつ、いつ誰が何をしたのか、何件なのか、といった事実が把握できて、はじめて学びにつながる「振返り」になるのです。振返りができていると思っている組織の多くは、事実に基づかず、比較対象となる基準も存在しないため、極めて、情緒的な回想になっています。

②主観的アプローチ
 これは、組織の考え方や感情を対象に、内面の探究のために行う「振返り」です。つまり、正しい判断ができたのか、誤った前提はないか、どういう心理状態だったのか、何にこだわっていたのかなど、組織が持つ考え方や感じ方の癖について振返ります。この主観的アプローチのポイントは、価値観や理想像、欲求や喜び、不満など思考や感情を言葉にするということです。結果や行動について、メンバーがどう受け入れているのかを知ることが肝要です。メンバーが持つ思考や感情のパターンを知らなければ、組織のエネルギーを未来に向けて集中させることはできないでしょう。
 そのためには、「答えがない問題に取り組んでいる」という意識をお互いに持ちながら、職位に関係なく、オープンに自分の意見を出し合い、恐れずに内面を出し合える関係性を築くことが大切です。

最後に

 いかがでしたでしょうか。想定以上に長くなってしまいました。まだまだ書き足りないのですが、今回はこのくらいにしておきましょう。「振返るということ」について、ご自身の考えと照らし合わせながらお読みいただけますと非常に励みになります。私もこの記事を自分で読みながら、客観的かつ主観的に振返ってみたいと思います。今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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