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「いま」をどう見るか

いつも熱中する組織のnoteをお読みいただきまして、ありがとうございます。今月は壽田が担当致します。
 今回は「いま」をどう見るか、というお話です。今回は前置きは短くしてすぐに本論に入りたいと思います。しばしお付き合い頂けたら嬉しいです。
 

苛立つマネジャー・不満を口にする部下

 期待どおりの結果が出せない部下に対して、マネジャーがきつく当たる場面に遭遇することがあります。一昔前は、皆の前で長時間にわたって厳しい言葉をぶつけたり、人格否定に近い暴言を吐いたりするところを目の当たりにすることもありました。最近は、さすがにパワハラにならないように注意して、酷い叱責や暴言をぶつける方はかなり減ったような気がしますが、相変わらず、結果が出ない部下の現状に苛立っているマネジャーは少なくないと感じます。
 反対に、苛立ちをぶつけられた部下の方に目を向けると、一部でかなり精神的に傷ついてしまう方もいますが、多くの方は、結果が出ない現状よりも、厳しい言葉をぶつけてきた上司への不満を口にします。結果が出ていない現状を見つめるのではなく、上司の酷い対応にフォーカスが当たってしまっているのです。
 このように「いま」を解釈していると、組織を良い方向に導くことは難しいでしょう。組織のエネルギーがなすべきことに向かわず、苛立ちや不満にエネルギーが漏れている状態になってしまいます。

ある経営者の教え

 これから書くことは、ある経営者に教わったことです。素敵な見方ですので、改めて書いてみます。こんな感じであったと記憶しています。
 「人の現状は絶対に否定してはダメです。それは部下であっても、生徒であっても、子供あっても同じ。その人が今までやってきた行動には、それなりの考えや価値観がある。期待どおりではないかもしれませんが、それでも、その行動には理があるんです。結果が悪くても、すぐに考えや価値観を変えようなどとは思いません。変えたくないんじゃなくて、そういう発想にならないんです。だから否定しても、行動が変わることがない。そうではなくて、良くない結果を『良かったね』と言ってあげるんですよ。良くないことがわかったんですから。そこを変えればいいんだ、一緒に変えよう、とね。現状のままではダメですが、現状をダメと言ってはいけないんです」。 
 これはとても考えさせられる言葉でした。かつて働いていたコンサルティング会社では、「問題点を見つけても得意になるな。深い悲しみをもって、クライアントの問題点を見つめろ」という教えがありましたが、これらの根本は同じ思想かもしれませんね。

マネジメントにおける「いま」

 現状をどうみるかについてマネジメントの視点から見てみましょう。マネジメントの使命は成果を上げることです。言い換えると、あるべき姿と現状のギャップを埋めるのが使命とも言えるでしょう。そして、あるべき姿を実現したら、それが現状になるので、更に高いあるべき姿を描く、この繰り返しです。マネジャーは、つねに現状よりも高い水準を目指している、ということになります。つまり、現状は常に「満足できる状態ではない」わけです。マネジメントに携わる者は、この状態に慣れなければなりません。現状のままではダメというのが常なのです。そうすると、現状の見方が変わります。現状を否定しても仕方ないということです。現状は、常に「足りていない状態」ですから否定する意味がないのです。
 「現状」は、かつての「あるべき姿」であり、実現したことによって、当たり前になったという価値観の変化が背景にあるのです。

「いま」をどう見るか

 いよいよ結論に入ります。現状を否定しても意味はなく、否定することでかえって、組織のエネルギーは余計なことに流れてしまいます。かといって、現状を肯定して「このままで良い」と解釈されるのも違うと思います。現状を維持することは、周囲が進歩することによって相対的に低下していることを意味するからです。では、どのように「いま」を見るべきでしょうか。私は次のような見方をすることをおすすめします。
 「いま」は事実としてそのまま受け入れましょう。それはどう説明しようが一生懸命働いてきた唯一の実績だからです。そして、その「いま」を「これでは足りない」と思うことができたら、それは一段上に成長した証ですので、それ自体を喜びにしましょう。もちろん、これは自分に対してだけではなく、部下に対しても同僚に対しても同じです。メンバーの多くがそう思えた時、組織はエネルギーをなすべきことに向けることができるようになると思います。

最後に

 いかがでしたでしょうか。今回は、「いま」をどう見るかということについてまとめてみました。
 達成が難しい目標に挑もうとするとき、うまくいかない現状をそのまま受け入れることは難しいかもしれません。しかし、逆説的ではありますが、それを「良かった」と思える方が、組織のエネルギーの無駄遣いを防げるので、かえって状況が好転するように思います。少なくとも、そう思うことによってメンバーを優しく見つめることができるという副産物は得ることができるでしょう。
 今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。


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