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メンバーが真剣勝負できる場を作り出そう!

いつも熱中する組織のnoteをお読みいただきありがとうございます。
今週は中島が投稿致します。

前回の投稿で、メンバー育成の日常化について取り上げました。

実はメンバーの育成を意識し始めると一つの壁にぶつかる場合があります。

それは、「なかなかメンバーが育たない」という壁です。

メンバー育成を意識するようになったマネジャーにしてみれば、
「自分はこれだけサポートするようになったのに、どうしてメンバーはできるようにならないのか」
メンバーのせいにするわけではないでしょうが、そんな弱音を吐きたくなるのが人材育成であったりします。

そもそも人はそんな簡単に育つものではないと皆さんも薄々気づいているはずです。ただ、人や組織が飛躍的に成長を遂げるケースもあります。そんな時は必ずと言っていいほど、「高い山(目標)」が存在します。そのような高い山を登り切ったという成功体験こそが飛躍的な成長には必要不可欠なのです。

今回は、メンバーにそんな成功体験を積ませるには、マネジャーは日頃からどんなアプローチを心がければいいのかについて、一緒に考えて行ければと思います。

ありがちなアプローチ

このような悩みを抱えるマネジャーのアプローチを紐解くところから始めたいと思います。

例えば、初めて「お客様の前でプレゼンする」「お客様と商談する」「お客様と打合せをする」ようなケースで、メンバーに対してどのように働きかけるでしょうか。

これは、営業部門に限ったことではなく、設計/開発部門、品質部門、IT会社であればPM(プロジェクト・マネジャー)やSE(システム・エンジニア)などもお客様とのコミュニケーションの機会は発生します。

これまでの経験から言えることは「メンバーを目標達成に導けていない」「メンバーを成長させられていない」マネジャーの多くは、出てしまった「結果」に対するアプローチになってしまっているということです。ですから、以前、以下の投稿をしました。今回は詳細の説明を割愛します。

メンバー育成を意識し始めたマネジャーであれば「行動する前」のアプローチの大切さは実感されていると思います。

「だから行動する前に商談や打合せのゴールやゴールに辿り着くためのシナリオは事前に確認するようにしました。けど、なかなかできるようにならないんです」

という声が聞こえてきそうですね。実はこれだけでは結果を出せないメンバーもいるでしょう。というのも、サッカーに例えるならば「事前に作戦会議(事前打合せ)をしただけで、公式試合(お客様に対する行動)に臨ませ、結果を出してこい」と言っているようなものだからです。

サッカーであれば「作戦会議→練習→練習試合」などの流れを通じて、選手の全力なプレーを引き出したり、マインドを高めさせたり、調子を確認したりしてメンバーの状態を総合的に見極めて上で「公式試合」へ臨ませるでしょう。

つまり、事前にゴールやシナリオを確認するアプローチだけだと「練習」や「練習試合」のプロセスが抜けてしまっていて、お客様の前で結果を残せるだけの実力(スキルやマインド)にメンバーをさせられていない、ということなのです。

飛躍的な成長を生むアプローチとは?

ここで、2015年ラグビーW杯で南アフリカに対して歴史的勝利を飾った日本代表の事例をご紹介したいと思います。

当時、日本代表を率いたのがエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(HC)でした。エディーHCが就任する以前の日本代表のW杯における戦績は1勝21敗2引き分けで、世界の壁を感じるとても苦いものでした。それが2015年のW杯では3勝1敗と3勝もしてしまいました。そればかりか初戦で南アフリカに勝利してしまったのです。サッカーで言うならブラジルやドイツに勝利したというレベルと言っていいでしょう。それくらい世界が驚く日本代表の勝利でした。

どうしてそのような結果を残せたのでしょうか。エディーHCのアプローチは、当時のラグビー界では革命的でした。そのエッセンスを以下の3つにまとめてみました。

①本番を徹底して想定する
エディーHCの想定は徹底されていました。

W杯の予選リーグ4試合の日程間隔や対戦相手を徹底的に想定した練習試合(遠征)を組んだり、初戦の南アフリカ戦のレフリー(審判)を日本代表の合宿に呼んで紅白戦で審判をしてもらったり、イングランド(開催国)は雨が多いと分かれば、ボールにボディーソープをかけてすべりやすい状況で練習したりしたそうです。

これは本番を想定した訓練のほんの一部ですが、エディーHCは「いつも練習は試合と同じシチュエーションでなければならない」とこだわっていたそうです。

②トレーニングの目的をぶらさない
エディーHCは「トレーニングは単にこなすものではなく、上達したり目的に近づいたりするための手段」だと言います。

日々の練習で選手に対し、与えられた課題をこなすだけではなく、自分で考えたり、決断したりしてよりよくすることを徹底して求めたそうです。集中していない選手がいれば、練習から容赦なく外し、チーム全体の雰囲気から「準備ができていない」と判断すればその場で練習を中止する徹底ぶりだったそうです。

③「勝つ」ための精神状態をつくり上げる
エディーHCは、就任当初日本人選手の「自分たちは弱い」という思い込みが強固だったと振り返っていました。

そんな選手たちに「ジャパン・ウェイ」と名付けて日本独自の勝ち方にこだわらせたと言います。外国人に比べて体格的に劣る日本がW杯で勝つためには、外国のやり方を真似するのではなく、自分たちの長所を活かし、短所を補うことが必要であり、そこに集中させたのでした。

そして「ハードワーク」との合言葉で「世界のどのチームよりも練習(準備)した」と選手自ら自信が持てるほどの練習をしたそうです。

このように南アフリカに勝ったことは偶然ではなく、勝つための練習を積み上げ、選手は勝てる根拠に裏付けされた自信を持ち、試合に臨んだ結果、歴史的な勝利を手にすることができたのでしょう。これは起こるべくして起こった奇跡だったのです。

ビジネスの現場で、全く同じことをすべきだと言うつもりはありません。しかし、成果を出すという意味でここから学び、ビジネスの現場でも実践できるようなことはたくさんあるのではないかと思い、ご紹介しました。

仕事における「練習」や「練習試合」とは何か?

では具体的にどんな「練習」や「練習試合」をビジネスの現場ですればいいのか、考えていきましょう。

前述したケースの中から「メンバーが初めてお客様と打合せや商談をする」ようなケースを使って考えていきたいと思います。

①作戦会議
これはお客様との打合せや商談のゴール(得たいこと、しておきたい状態)を設定し、そのゴールの達成に向けたシナリオやそこで使用する資料などの確認をします。また、その機会を利用して自身はどんなことを上達したいかを設定するのもいいでしょう。

②練習(メンバーの自己練)
ゴールに達成するためのシナリオを頭の中で何回も繰り返したり、繰り返した結果シナリオをアップデートしたりします。また、同僚などにお客様役になってもらい、ロールプレイをしてシナリオを体に染み込ませていきます。

③練習試合
マネジャーがお客様役となり、緊張感を持って、本番さながらのリハーサルをします。ここでのポイントは“真剣勝負”であるということです。マネジャーはお客様になりきり、お客様の立場で聞いたり、お客様の目線で質問したりします。

④振り返り
メンバーが練習試合を行った結果の振り返りをするサポートをします。ここでのポイントはメンバーのできていることや良さをフィードフォワードしようということです。というのも、多くのメンバーはできていない部分ばかりに目が行きがちだからです。

⑤次なる練習計画
振り返りをサポートした上で、次なる練習計画のアドバイスができるといいでしょう。質問にうまく答えられなかった部分の回答方法やシナリオを変えた方がよい部分のアドバイスなども具体的に実施するようにしましょう。

まとめますと、メンバーを成長させるには、高い目標を目指すマインドづくりやメンバー自ら実現させるような真剣勝負の場をつくる。その真剣勝負は準備段階から始まり、マネジャーはお客様役になるなどして、メンバーに胸を貸す存在となる。そういうプロセスを経ることで成功体験の質が高まり、メンバーを成長へと導くことが可能となる、ということなのです。

最後に

さて、今回もいかがでしたでしょうか。

ちなみに、ラグビー日本代表は前述した通り、2015年以前のW杯における戦績は1勝21敗2引き分けでした。しかし、2015年のW杯では決勝トーナメントには惜しくも進出できなかったものの予選では3勝1敗の成績を残しました。この「自分たちでも勝てた」という経験と「決勝トーナメントに出られず悔しい」という経験の質が高かったからこそ次のエネルギーとなり、2019年に日本で開催されたW杯では見事予選リーグを全勝で突破し、決勝トーナメント進出することができたのではないでしょうか。

ビジネスにおける現場でもメンバーはたった一回でも、真剣勝負した結果、涙が出るくらい嬉しいこれまでにない成功体験をすればメンバーの実力は格段に上がることでしょう。たとえ成功せずとも心から悔しいと思える経験もまた次の成功へ向けたエネルギーになると確信できるはずです。

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