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メンバー育成を日常化しよう!

いつも熱中する組織のnoteをお読みいただきありがとうございます。
今週は中島が投稿致します。

これまで「メンバーが自ら考え、動き出す育成術」というテーマで投稿してきました。早いもので、本日で10回目となります。

「マネジャーが生きる世界では、唯一絶対的な答えというものが存在しません」と、以前の壽田の投稿でありました。

人材育成こそ、唯一絶対的な正解はなく、とても悩ましいテーマではないでしょうか。

特に、マネジャーになったばかりの方にとっては、メンバー育成といっても「一体何から手を付ければいいのか」「どうやってやればいいのか」と途方に暮れてしまっている方もいるでしょう。

結論から書いてしまえば、人材育成の手段に魔法の杖のようなものは存在しません。15年以上、現場でマネジャーの方々にマネジメントをサポートしてきた者として言わさせて頂けるとすれば、どちらかと言えば、地味で、コツコツと日々の業務の中で積み重ねることが、人材育成のベースになるのではないかと考えています。

その主な手段の一つが「日々の振り返り」です。

本日は「日々の振り返り」をテーマにしたいと思います。この「日々の振り返り」をどう人材育成に結びつけていくのかについて、一緒に考えていきましょう!

現場の実態

メンバーが「同じミスを何度も繰り返す」「成果が出なくなったと思ったら以前言ったことをやらなくなっていた」などという事象が起こったときは、「日々の振り返り」を導入するサインかもしれません。

しかし、「日々の振り返り」の導入を促すと、マネジャー陣からは「そんなことをする時間はない」や「既にやっている」などの返答で、まともに受け取ってもらえないケースもしばしばです。

そのようなチームの日々の業務を観察していると、いくつか共通する実態が見えてきました。

①余裕がない組織
メンバーは目の前の業務に忙殺され、マネジャーも社内会議や管理業務でいつも忙しく、メンバーに対しても指示しっぱなしで結果のフォローができていない。マネジャーは「何かあればいつでも相談して」と言ってはくれるものの、いつも忙しそうにしていてどうしても話しかけづらい....

②責任追及の振り返り
営業活動の結果を振り返るマネジャーとメンバーとの会話。
マネジャー:どうしてA顧客で失注したんだ!
メンバー:申し訳ございません。二度とこのようなことがないように気をつけます。
マネジャー:どう責任を取るんだ?
メンバー:責任と言われましても....

①はそもそも余裕がなく振り返りの時間が取れていない(取ろうとしてない)パターンであり、②は振り返りの時間を取れているものの振り返りの目的ややり方を間違えてしまっているパターンです。

いずれにしても日々の業務の中で、マネジャーの意識がメンバー育成まで至っていない、ということが見えてきました。

「日々の振り返り」を実施する目的とは?

そもそも会社組織は日々の業務をこなすだけでいいのでしょうか。また、うまくいかない時に誰かが責任を取ればその後はうまく回っていくのでしょうか。

一度、会社組織の目的に立ち返って考えてみましょう。

会社組織というものは、組織の目的を果たすことやビジョンを実現することのために日々成長、進化し続けるもの、ということは誰も否定できないでしょう。そして、そのためには組織の価値を高める必要があり、その組織を構成しているのが一人ひとりの社員(メンバー)ということになります。

つまり、会社組織を日々成長、進化し続けるには、日々の業務の中にメンバーの成長、進化を見出す必要があるということではないでしょうか。

その代表例が、世界的な自動車メーカーとして有名なトヨタで根付いている“カイゼン”です。1975年頃、当時副社長であった大野耐一氏が現場に来ては現場改善の指示をされたそうです。しかし、決して答えは言わず、一週間後に「それでどうなった?」と必ず確認に来たそうです。

そういう日々の現場改善がトヨタ生産方式(ジャスト・イン・タイムや自働化)の基礎となったことは間違いないでしょう。

しかし、現場での“カイゼン”の本質は、効率的な生産方法を生み出せたこと以上に、そういうことを生み出せるだけの組織力にまで磨き続けたことではないかと私は考えています。大野氏にしてみればそれこそが人材育成だったわけです。

業務のムダを指摘することで、現場社員は「対策の仮説を立てる→実行する→結果を確認する→結果を振り返る→次の実行へ繋げる→最終的にムダをなくす」というサイクルを回すようになります。

こうした社員とのやり取りこそが大野氏の人材育成のプロセスだったのでしょう。大野氏の凄さは必ず結果を確認しに来たという点です。これだけではないでしょうが、こうした日々の積み重ねが今のトヨタを作っているのではないでしょうか。

こうした実例からも日々の業務に育成を溶け込ませることの必要性を感じることができると思います。私はこれを「育成の日常化」と呼んでいます。

そして、その一つの手段が「日々の振り返り」というわけです。

育成の日常化とは?

メンバー育成の日常化は大きく2つのことから成り立っていると考えるといいでしょう。

一つは「行動する前」のアプローチです。これは以前の投稿を参考にしてみて下さい。今回は割愛します。

そして、もう一つが「行動した後」の「振り返り」です。前述した②の責任追及型の振り返り=「反省」を想像してしまう人は、もしかするとネガティブなイメージをしてしまうかもしれません。そうならないためにも、ここで言う「振り返り」について、認識を一致させておきたいと思います。

「振り返り」の目的は前述の通り「日々の業務の中にメンバーの成長、進化を見出す」ためです。もう少し具体的に言えば、日々の業務で行動したこと、経験したことから学びを見出し、それを次のアクションへ繋げるためです。

これを「内省」と呼んでいます。「反省」とは異なります。
「内省」と「反省」の違いは以下をご覧ください。

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どのようなことを振り返えればいいのかと言えば、例えば、営業部門であれば商談の進め方やプレゼン内容さらには事前準備の状況などお客様にとって有効な商談だったかどうかについて、製造部門であれば製造の手順や段取り状況など効率的な生産活動だったかどうかついて、設計部門であれば一日の時間の使い方や仕事の進め方に無駄がなかったかどうかについて、などが挙げられます。

ここで、メンバーの「振り返り(内省)」をサポートする際にマネジャーが心がけると良いと思うことを列挙してみました。
・メンバー自身の性格や意思などではなく、行動に焦点を当てさせる
・うまくいかなかったことだけではなくうまくいったことも振り返えらせる
・振り返ったことはメモ程度でもいいから蓄積させる
・メンバー自身が振り返りができるように対話を通じてサポートする
・マネジャーの評価を伝えない(メンバーが求めてきた場合は別)

あくまでもメンバー自身で「振り返り」ができるようになることがゴールであり、マネジャーはそのサポートに徹するということを肝に銘じておきましょう!

身近なことから始めてみよう!

もし、前述のような「振り返り」を実施するのはハードルが高いと感じられた場合は、以下のことを試してみるのもいいでしょう。

どのような部署でも共通して始められるのが、日々やるべきことができたかどうかの「振り返り」です。

具体的なステップ例としては、
1.業務開始前(前日の夜または当日の朝)、今日やるべきことを書き出してもらう
※ここでのポイントはやるべきことの完了基準も一緒に書き出してもらうことです。
2.やるべきことが完了したかどうかについて○×をつけてもらう
3.○になった要因、×になった要因を振り返ってもらう
これだけです。

これなら業務開始前に10分、業務終了時に10分といったところでしょうか。まずは身近で、簡単なことからスタートしてみるのもおすすめです。

最後に

さて、いかがでしたでしょうか。

「人材育成」というテーマは壮大で、奥が深く、なかなか取り扱いづらいものですが、人材育成に悩むマネジャーがどんなことから始めてみればいいのか、という点に絞って取り上げてみました。

そして、マネジャーができるメンバー育成とは、日々の業務の中に見出し、一日5分10分という短時間でも手間をかけ、時間をかけることではないでしょうか。

そのような日々の蓄積が育成のベースとしてあるからこそ、Off-JTによる研修や外部からのアプローチも活きると思うのです。

是非、メンバー育成の日常化を心がけていきましょう!

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