メンバーの状態を整えてからアプローチする
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
今週は中島が担当させて頂きます。
本日も「どうしたらメンバーは成果創出に向けて、自ら考え、行動するのか」について考えていきたいと思います。
目標達成に向けたメンバーへのアプローチ方法として、
・言う(指示する)
・教える(指導する)
・一緒にやる
・問いかける(聞く)
・(仕事ぶりを)見る
・(事実を)見せる
など、さまざまあります。
どの方法も間違っていないですし、場面や状況に応じて選択し、ときには組み合わせながらメンバーに向き合っていくことが必要でしょう。
ただ、これらの手段を単に使えば良いというわけではなく、相手により伝わりやすいようにするには、ちょっとしたコツが必要になります。そのコツとはアプローチする前に「相手(メンバー)の状態を整える」ということです。
本日は、メンバーが自ら考え動くような育成をするには「アプローチをする前に、メンバーをどのような状態に整えておけば良いのか」について考えていきたいと思います。
1.ビジネス現場におけるコミュニケーションの実態
メンバーに言葉を尽くして説明したのに、こちらの思いが「伝わっていない」と感じたことはないでしょうか?
少なくとも私はそう感じた経験を何度もしてきました。そして、そういう状況に陥ってしまっている組織にも幾度となく寄り添ってきました。
そんな経験からメンバーに伝わらない原因は、
「リーダーが話したいことを一方的に話してしまっている」
からであると感じています。
リーダーの方にとっては受け入れ難いことかもしれません。そして「私は大丈夫」と自分自身に言い聞かせたかもしれません。そうなる気持ちは十分に理解できます。ただ、一旦「もしかしたら自分が一方的に話してしまっているかもしれない」と自分を省みる機会にしてほしいのです。
ある上司(Aさん)と部下(Bさん)の話をします。
Bさん(部下)は先月、目標未達成でした。達成率は90%。Aさん(上司)はBさんが先月未達成だったので、今月こそ達成してもらいたいという期待から、Bさんが先月未達成になった原因を思いつく限り挙げ、それに対する対策を一つひとつ丁寧に説明しました。Aさんにしてみたら、そこまで伝えたのだから今月は達成してくれるだろうと思っていました。そして、Bさんの今月の結果はというとまたしても未達成。しかも、Aさんがアドバイスしたことはほとんど実行されていなかったのです。
実はこういう部分を紐解いていくのが、我々が現場に入り込んでコンサルティングする目的であったりします。
一体どうしてこのような結果になってしまったのでしょうか?
Bさんに先月の結果についてどう思っているのかを聞いてみました。Bさんは「未達だったのですが、自分なりには頑張りました。達成率90%まではいけましたし・・・。自分の行動を変えられた部分もありました」とのことだったのです。
Bさんにしてみれば、未達成だったけど、自分なりに頑張ったところもあったのに、Aさんからはできていないところばかり言われて、気持ちが下がってしまったのでしょう。こうなってしまうと折角の上司のアドバイスも受け取れなくなってしまいます。
上司と部下のコミュニケーション現場に同席すると、このような状況によく遭遇します。実際に上司であるAさんも悪気があった訳ではありません。逆にBさんに対する期待からしたことでした。もちろん部下のBさんも何も悪くありません。しかし、組織を成す(複数の人が集まって仕事をする)と、しばしこのような“すれ違い”が起こってしまうのです。
2.コミュニケーションのすれ違いが起こる原因とは?
どうしてこのような“すれ違い”は起こってしまうのでしょうか?
一言で言えば、「相手に寄り添ったコミュニケーションになっていないから」ということになります。「相手と対話することができていないから」と言い換えてもいいかもしれません。
前述の上司、部下の事例で言えば、上司のAさんは「先月Bさんは未達成だったのだからその原因と対策を知りたいのだろう」と想像し、あのような発言になったのでしょう。しかし、結果としてBさんが求めていたことではなかったのです。
ここでのポイントはBさんが求めていることとは違っていたのですが、もしかすると別の部下Cさんだったらうまくいっていたかもしれません。Cさんが求めていたことと一致していたので。そうすると自分のコミュニケーションには問題ないと上司は思いがちです。ただ、この進め方だと相手が求めていることと一致する確率は低く、部下のパフォーマンスを思うように上げられないリスクは高まるでしょう。
では、どうすればいいのかということですが、難しく考える必要はなく、相手が求めていることに一致させるには「相手に聞く」「相手の認識を確認する」ようにすればいいのです。そんな簡単なことかと思うかもしれませんが、成果を出す秘訣は、いつもその簡単と思うところに眠っていたりするのです。
3.地図を一緒に見てガイドするイメージ
では、具体的にどのようにアプローチしていけばいいのでしょうか?
ポイントは「目的地に辿り着くために、地図を一緒に見て、ガイドする(導く)」イメージです。
その方法が、以下の5つのステップとなります。
①事実を共有する
②その事実についてどう思うかを訊く
③「困る」「望む」=「求める」状態をつくる
④解決策をすり合わせる
⑤アクションを決める
上述のAさん、Bさんの事例に従って説明しますと、
①事実を共有する
先月の実績について「目標管理表(目標と実績、GAPなどが記載された帳票)」を使って、目を向けるべき結果に着目させるようにします。ここでのポイントは「同じもの(帳票)を見る」ということです。
というのも、目標に掲げていることは一つではなく、例えば、営業であれば販売金額や販売数量に加え、その達成に向け、見積提出件数や訪問件数などの行動目標も設定します。目標が複数あると、どの目標に焦点を当てているのか、ここから食い違いが発生していることも少なくないからです。
②その事実についてどう思うかを訊く
相手(メンバー)と同じ帳票を見て、事実の確認ができたら、「この結果についてどう思っているのか」と訊ねます。
実はこの「相手の認識を確認する」ステップが重要であり、というのも相手の認識しだいで④以降のアプローチを決めていくことが必要だからです。
先程の事例ですと、Bさんの発言のように、「未達成でも頑張った」「自分なりに変えた部分はあった」と思っている人もいます。その上で次月は「達成させたい」と思っていたりもします。
また、未達成だったことを問題とは思っておらず、「自分は頑張った」と主張するだけの場合もあるでしょう。
③「困る」「望む」=「求める」状態をつくる
例えば、先程の「未達成を問題とは思っていない」部下に、未達成の原因とその対策について一方的に話したところで、部下は話しを聞いているでしょうか。おそらく、上司の話しをちゃんと聞けていないケースがほとんどではないでしょうか。
ですから、相手が「困っている」「望む」ことを確認することが必要になります。
例えば、Bさんの場合であれば、
「次月、達成させるにはどうすればいいのか」と聞いてみます。Bさんから達成させるための対策が出てきて、上司の目からも達成できそうだと思えば、あとはその対策の実行を後押ししてあげればいいのです。
また、対策が出てこないようであればメンバーは「困っている」状態になります。そして、上司からのアドバイスを「望んで」います。この状態を確認できたところで、初めて④のステップへ移行します。
④解決策をすり合わせる
③で相手が困っていること、望んでいることが判明したので、それらに対応した解決策をすり合わせるようにします。
例えば、Aさんであれば、このタイミングで、今月の目標達成に向け、未達成の原因やその対策について話すようにすれば、Bさんはすんなり受け止めることができるでしょう。
もし、相手が「困っていない」「望んでいない」ようであれば、解決へ向けた働きかけというよりは、「困る」「望む」環境をつくっていくことが必要でしょう。
⑤アクションを決める
そして、最後、これから具体的に行動すること、いつ、その行動をどの程度やるのかを相手に決めさせるようにします。
この5つのステップを経ることで相手に伝わりやすく、よりアクションへ繋がるアプローチとなります。お分かり頂いたでしょうか。実はこのようなコミュニケーションの進め方をすると、メンバーにも考え方がすり込まれていき、メンバーが自ら考えられるようになっていきます。
こうした日々のアプローチの蓄積こそが、「自ら考え、行動する」人を育てるアプローチではないかと感じています。
4.最後に
繰り返しになりますが、熱中している組織とは、メンバーが100%なすべきことへエネルギーを向けられている状態であります。
組織は自然にそうなるわけではなく、リーダーのガイド(導き)があってこそ実現できることだと感じています。
ですから、是非、相手の状態を整えてからアプローチするための5つのステップを心がけていくようにしましょう!
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