「計画を描く」ということ(1/2)
いつも熱中する組織のnoteをお読みいただきありがとうございます。
今週、来週と2週連続で中島が投稿致します。
今回は「計画を描く」ということについて取り上げたいと思います。
というのも、計画を立てることの必要性を理解しつつも、立てた計画をうまく使えていないケースをこれまでに数多く見てきました。
「計画を立てたことに満足してしまって、期中に一度も見ずに終わってしまう」
「計画は立てたものの形式的なものであり、達成イメージが湧くものになっていない」
「現場の状況や部下の意見が反映されておらず、行動に移せるような計画になっていない」
これらは、計画がうまく活用できていない典型的なケースであり、マネジャーの皆さんにも心当たりがあるはずです。
この状況は、「チームで物事を成し遂げよう」としている組織にとって、黄色信号が点滅している状況と言っても過言ではないでしょう。計画がうまく機能していないことで、「一部の人が理解しているが、チームとしての認識はバラバラ」「行動に力が入らない(迷いながら行動している)」という状況に陥り、その結果「思うように成果を出せない」「目標達成できない」というチームを何度も見てきました。
そればかりか、「同じような状況が繰り返される/前進感が感じられない」「成果創出が継続されない/業績が乱高下する」「突発作業や手戻り作業が多くいつも忙しい」などという状況を引き起こし、メンバーの働く意欲を低下させてしまっている印象さえあります。
そんな風になってしまう原因の一つに、計画を活用するイメージが湧いていない、ということがあると思います。そのような場合は、次のようにイメージしてみるといいでしょう。
何かを成し遂げようとする世界は唯一絶対の正解のない世界であり、「計画を立てる」とは、まだ見ぬ世界を冒険する際に「たどり着き方の地図を描く」ようなものです。目的地までの間にどんな山があるのか、谷があるのか、どんな道を選べば良いのかを想定し、行程をデザインします。実際に旅に出ると、山が予定より大きかったり、谷が深かったり、思いがけず川を渡るのに苦労をしたりします。そこで、地図を広げ、どういう行き方に変更をするか検討をし、足取りを早めたり、休憩場所を変更したりするでしょう。そのように、計画とは異なる新たな発見を楽しみながら進んでいくのが冒険と言えるでしょう。
いかがでしょうか。計画を活用しているイメージが湧いたのではないでしょうか。ですからここでは「計画を立てる」を「計画を描く」と表現してみたいと思います。
1.計画に対する一部の偏見
実際に具体的なアクションプランを描こうとすると、どのような組織でも
「計画を立てても計画通りにはいかないから立てても意味がない」
「仕事は上司の指示に従っていればいいので、計画を立てるまでもない」
「計画を立てる時間があるくらいなら行動する時間に当てた方がまし」
という人が出てきます。この方たちは、どうしてここまで偏った考え方に至ってしまったのでしょうか。
これを紐解く鍵は「マネジメント・システム分析」にあります。我々はプロジェクトを開始する前に、事前調査を実施します。その一環で「マネジメント・システム分析」があります。この分析では、PDCAサイクルの仕組みが目標達成のためにちゃんと機能しているかどうかを見ます。ちなみに、以下のように茶色の模造紙にPDCAに関連した帳票(紙)を貼っていきます。結構、原始的です。
この調査をやり続ける中で、計画について、次のようなサイクルが見えてきました。
「計画を描く→行動段階で計画を守れない/計画を守ろうとしていない→計画が大幅に変わる→検証が機能しない→次の計画立案に生かされない→計画が形式的なものになる→計画通りに実行されない」
そもそもこうなってしまっている一番の原因は、計画を描く段階から生じているのでしょう。そして、これらのサイクルを繰り返しているうちに、計画を描く目的を見失い、最終的には、前述のような偏った考え方へとたどり着いてしまったようなのです。
もしかすると、最終段階には達していないが、このようなサイクルの途中段階に位置してしまっている組織もあるかもしれません。
私は最終段階に達してしまっていた組織も、途中段階にいた組織もこれまでコンサルティングをしてきました。そして、計画をうまく機能させる取り組みを行ってきた結果、その鍵は以下の3点であると感じています。
・ 計画は「守る」ためにあるのではなく「目的や目標にたどり着く」ためにある
・ 計画を機能させるには、「計画の描き方」と「計画の活用の仕方」を知る必要がある
・ 計画を立てる力(計画立案力)と計画を実行する力(計画遂行力)はセットで考える
一つずつ詳しく説明していきたいと思います。
2.「計画を描く」必要性とは?
一言で言ってしまえば、「目的や目標へたどり着くため」です。もう少し正確に言えば、「目的や目標へたどり着く確率を高めるため」です。
計画を描いておけば、いざ冒険し始めた時に、その地図(計画)と見比べながらルートを進んでいけば、自分たちの現在地を見失うことはないでしょう。それ故、遭難することも防げます。また、たとえもしルートから外れたとしても、そのことにすぐに気づけ、軌道修正を図ることも容易にできます。さらに、どの地点に危険がありそうかも事前に予測し準備することができるので、チームを危険にさらすことも減らせます。
一方、計画を描いていない場合はどうでしょうか。ルートを描いた地図を持っていないので、目的地へ向かっているつもりではあるものの、自分たちの現在地点すら分からない状態です。そして、どこに危険がありそうか、注意すべきなのかも分かりませんから、メンバーはいつも怯えながらリーダーの後ろを付いていく必要があるでしょう。
もちろん、計画を描いておけば必ず目的地へたどり着けると言われればそうではありません。しかし、計画を描いていない時よりも描いていた時の方が、目的地へたどり着ける確率が高まるということは理解して頂けるでしょう。
そして、特にチーム(複数人)で目的地へたどり着こうとすると、計画が必要となり、効果を発揮します。ルートや行程(計画)を共有しておくことで、リーダーの後を単に付いていくのではなく、メンバー自身が主体性を持って前へ進むことができます。このメンバーの主体性を引き出すことにも、計画の存在が寄与しているのです。
ところで、よく「計画を守る」という表現を使う人がいますが、計画は「守る」ものではありません。
例えば、「エベレストに登頂する」という目標に対して、行程を進めている過程でメンバーの一人が体調不良になったとします。計画とは異なる状況となり、元々の隊列は組めません。そんな状況になった際、それでも「計画を守る」ことを優先するのか、「登頂する」ことを優先し計画を描き直すか、どちらを選択するでしょうか。当然、後者を選択すると思います。
この時に計画を描いていたことが役に立ちます。計画を描く際に「前提条件の検討」や「複数の選択肢の検討」をしていれば、トラブル後の行程を再構築することも容易になり、軌道修正が図れます。どこでキャンプを設けるか、どこで体制を立て直すか、チームで考えを合わせながら迅速に行動できます。その場でゼロから検討をスタートするのとは大違いです。
つまり、チームで物事を成し遂げようとする時、計画を描いておくことで、目的地へたどり着く確率を高める効果はいくつもあり、そしてそれが連鎖していく、ということです。計画は活用すればするほど、効果が増していくのです。
ここで、計画の活用方法やその効果について、計画を描く段階、行動する段階、検証する段階の3つの段階に分けてまとめておきたいと思います。
(1)計画を描く段階
計画が描けた時に、チーム全体で「これなら目的地に到達できそうだ」と達成確信度が高まること、そして、メンバー一人ひとりが「すぐに行動に移せる」状態になることがゴールです。
メンバーが目標達成に向け、「何をやっていいか分からない」という場面に出会いますが、これは「すぐに行動に移せる」だけの具体的な計画になっていないということが言えます。逆に具体的になっていればメンバーは「自分がやるべきことが分かった」「これなら目的地にたどり着けそうだ」という状態になるでしょう。そして、チーム全体で「これならいける」という空気感になります。この空気感を作ることがマネジャーの役割であり、その空気感が作れると、メンバーのエネルギーの出力方向が揃ったと言えます。
(2)行動する段階
計画段階ですぐに行動に移せる状態になっていれば、あとは「自分の役割を果たすだけ」と迷いなく、思い切って行動することができます。つまり、メンバーは思い切ってエネルギーを出力することができるのです。
また、描いた計画を一つずつ答え合わせする感覚で行動することを癖付けできるといいでしょう。答えが合っていても、合っていなくてもどちらにしても発見や気づきを得られます。この発見や気づきがメンバーにとって次なるアクションのきっかけとなるのです。
さらに、そうやって計画を意識する癖が付いていると、もし計画から外れたとしてもすぐに気づけます。そして計画のルートへ戻そうとします。こうして計画へ戻ろうとする作用が働きます。チームの中で、この作用が働くことも計画を描いておく効果なのです。
(3)検証する段階
検証がうまく機能しない組織でありがちなのが、仮説の質が低く、検証をしても「仮説の精度が低かった」という結論に達してしまうことです。逆に仮説の精度が高ければ、検証の質も高まります。検証の質が高まると次のアクションやさらには次に挑む目標の達成にも活かせます。つまり、活動してきたエネルギーが留まることなく、次なる取組みへと循環していくのです。このエネルギーを循環させることもマネジャーの役割と言っていいでしょう。
このように各段階ごと計画の活用の仕方を理解しておくと、「計画を描く」必要性を見失わなくて済むでしょう。
さて、今回は「計画を描く」必要性と活用方法ついて考えてみました。皆さん、計画に対するイメージは変わったでしょうか。まずはそんなものの見方や考え方もあるのかと捉えて頂ければ幸いです。
そんなイメージが持てたところで、次週の投稿では、具体的に機能する計画をどう描いていけばいいのか、「目的地へのたどり着き方の地図を描く」とはどういうことか、「計画の描き方」や「計画の精度を高める秘訣」について取り上げたいと思います。
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