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「若い男性を採用したい」の罠~雇用管理はちゃんとできていますか。

 地方の中小企業では新卒採用よりも中途採用がメインのところが多いと思いますが、それでも「若い人(特に男性)を採用したい」という企業は多いようです。いいんです、長く勤めて欲しいという気持ちはよく分かります。しかし。御社では労働者の年齢に合わせた雇用管理をちゃんと行っているでしょうか。
 特に若い人を採用してもすぐに離職してしまっている企業さんは、十分な注意が必要と思います。
・ 若者は離職率が高いです。平成30年卒の場合、全国平均で高卒で1年目16.9%、2年目11.9%、3年目8.1%、3年合計で36.9%の若者が離職しています。大卒でも1年目11.6%、2年目11.3%、3年目8.3%、3年合計で31.2%の若者が離職しています。内定直後から構ってあげて人間関係を作ってあげること、不安を除いてあげること、仕事や社会人生活について丁寧に教えてあげることが必要です。
・ 今の若者は飛び石連休でも大学の授業をサボらないくらい「真面目」ですが、逆に人と違うことを嫌い、リスクを嫌い、面倒を避ける若者が多いです。厳しくされることに慣れていません。ネット上で情報を探し、見ています(情報が多いとも言うし、惑わされているとも言う)。そこを理解した上での雇用管理が重要です。
・ 日本の若者は外国の若者と比べて、自尊心・自己肯定感が低いと言われます。結果としてチャレンジしない、リスクを取らない傾向があるのではないかと思っています。褒めてあげること、認めてあげること、聞いてあげることは重要です。
・ 一方で少子化や親の友達化あるいはネット社会などの関係で、コミュニケーションに苦手感を持つ若者が多く、初対面の人や年上に話しかけるのが苦手な若者も多いです。年上のほうから「優しく」話しかけてコミュニケーションに慣れさせる必要があります。
・ 日本では学校教育で「将来の働く意識・態度」を育てる習慣があまりなく、「社会人はこうしないといけない(礼儀作法だけでなく早寝早起きとか挨拶とか)」などの基礎も企業側で教える必要があります。

 以上個人的見解による「若者の取扱説明書」の概要ですが、逆張り(若者男性以外の採用にウイングを広げる)もアリだと思っています。
・ 若者よりも中高齢者/世帯主のほうが離職率が低く、定着率が高いです。2021年3月の全体の失業率2.7%に対し、世帯主は1.3%、配偶者は1.4%、その他の家族は5.6%、単身世帯は3.7%、支えるべきものを持つ人は忍耐力があるというか安易に離職しません。同月の15~24歳の失業率5.2%に対し、25~34歳は3.2%、35~44歳は2.7%(ここで平均)、45~54歳は2.0%、55~64歳は2.6%、65歳~は2.0%です。歳が上になればなるほど(他の仕事が探せなくなることもありますが)辞めません。
・ 男性よりも女性のほうが完全失業率は低いです。
・ 職種転換は大変ではありますが(多くの企業で中途採用の場合は経験者採用ですが)、例えばハローワークには「トライアル雇用」という3ヶ月のお試し雇用制度があって、例えば中高年齢者を含めた未経験者を「試しに雇う」という仕組みがあります。「辞めない人」をお試しで雇って、確認してから正式雇用する方法もあります。
・ 最近は自社社員からの紹介で採用する企業も増えています。自社社員なので「一緒に働けそうな人」を最初から選別していますし、自社社員の紹介で採用されたほうも紹介してくれた人の手前、下手な仕事はできません。

 いずれにせよその会社で一人前の社会人になるには、会社にもよりますが概ね3~10年かかると言われています。そうすると3年以内に離職されてしまうと、企業としてのメリットがありません。雇用管理は「面倒」かもしれませんが、会社のためにも必要なことです。特に若い人には「慣れるまで」の手厚い支援が必要です。
 ある清掃会社では、現場から「若い人が欲しい」と言われたら若年者と中高齢者の継続勤務年数を見せて「早期離職でもいいのか、長く勤めて欲しいのか」「長く勤めて欲しければどっちか」を理解してもらっているそうです。ここしばらく某大手新聞社では新卒よりも第二新卒(あるいは転職者)に力を入れているという話もあります。第二新卒や転職者だと、新卒者と違って礼儀作法やマナーあるいは業界の基礎知識を教えずに済むというメリットもあるようです。
 若者男性がダメで中高齢者や女性が最高という訳ではありませんが(もちろん人によります)、本当に御社にとって必要な人材を継続雇用できていますか?雇用管理はしっかり「管理」できていますか?年齢とか性別に惑わされていませんか?


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