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海の見える街

2018年の初夏
当時、初任地で社会人3年目となった私に転勤の辞令が出た。
神戸市垂水区が次の勤務地だった。

辞令を受け、配属の前に挨拶と引継ぎを受けに行くこととなった。
その日は13時に次の勤務先の最寄り駅で待ち合わせだった。
西明石駅で新幹線からJRに乗り換え東へ向かっているとき
線路からの視界を遮るように立ち並んだ建物が急にひらけて
きらめく水平線が見えた。

海の見える街だ

頭では魔女の宅急便のあの曲が流れだした。

待ち合わせまで時間があったので、駅の周辺を散策した。
様々なお店が揃っていて一カ月後からの生活を想像して心が弾んだ。
頭ではずっとあの曲が流れていた。
気分が良くて、ショッピングモールのベンチで休んでいるマダムに
私、来月からこの街に住むんです!
と話しかけたい気分だった。

あの日感じた高揚感は住み始めた後とのギャップも少なく、
実際本当に住みやすい街だった。

丸二年住んだけれど、同僚に歳が近い人が多かったこともあり
社会人なのに、まるで大学のサークルのような日々だった。

真夏の海岸通
ベランダから眺めた明石海峡大橋
改札に漂うパンと揚げ物の香り
坂の上の郵便局
毎回3軒目で行っていたダーツバー
夜の堤防で吸った煙草

思い出せる風景は日々色褪せていくけれど
その分水平線のきらめきは増していく。

第二の青春の街。

当時より大人の私は今垂水に住んでも、
あの二年間のようなきらめきを再現することはできないと思う。
それでも
もう一度住みたいとか
老後に住みたいだとか公言するくらいには
#この街がすき

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