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とある放送作家の苦悩 #近未来予想図 イベント投稿

DMM オンラインサロン「近未来予想図」では

少し先の未来はこうなるのでは?ということを自由にブレストしながら、未来予想をエンタメとして楽しむ人が集っております。

こちらのnoteは、DMM オンラインサロン「近未来予想図」の 2020年6月の未来予想イベント

「テレビの5年後について」

投稿されたショートショートです。(オリジナルは下記のPDFです)

とある放送作家の苦悩

三題噺をご存知だろうか。観客に適当な言葉を三つ言ってもらい、その題目を折り込んで即興で話を作る落語の一形式だ。

 私の仕事はそれ、というか三題どころか五題、十題になることもあるのだけど。

 私は放送作家。名前はまだ売れていない。目の前に出されたお題を見ている。

「納豆」「リュックサック」「サボテン」「化石」「雨がさ」「ロードバイク」。そしてジャンルは「バラエティ」。

 テレビの世界は大きく変わった。YouTubeの躍進、NetflixやHuluといったネット配信の拡大を受けて、テレビの視聴率はどんどん下がり、メインの収入源である広告費も下降一方。CMでは立ち行かなくなった結果、テレビ局がとったのは「番組そのものを広告に」するだったのだ。

 今、テレビ番組に映るありとあらゆるものはボタンひとつで購入ができる。タグがつけられていて、視聴者が良いと思えばすぐに買える時代になったのだ。確かに視聴率は以前と比べれば、低い。ただ依然権威性はあるし、簡単に見れる。ワンクリックでポチれる仕組みが出来てからは広告費は増えている…らしい。

 そんなこと放送作家末端の私には関係ないのだけど。ただ自分が関わった番組でたくさん売れればフィードバックはある。稼ぐためにはスポンサーの商品を登場させた上でいかに面白くかが重要なのだ。結果、仕事の内容は三題噺になる。

「芸人がリュックサックを担いでロードバイクに乗って旅に出てポイント毎にお題に挑戦しOKであれば地元の名産品を食べれる企画。納豆早食い、サボテンの上に乗って痛さに耐えるチャレンジ…」

とここまで書いてボツにすることに決めた。スポンサーの商品を雑に扱っているし、そもそも雨がさが入ってない…

 あーっと頭をかきむしりながら、次の案件を探すことにする。他にも案件はいくつも来ていたのだ。わざわざ難しいものに挑む必要はない。

 その中で一件やたら報酬の高いものがあった。アニメの全体的なストーリーを提案してほしいというもの。最近では商品だけでなくスポンサーからの要望に沿った内容で放送作家が修正して番組にすることも多々あるのだ。

 案件の提案内容を確認する。

「豚野郎VS鷄ヤロー 〜至高の味を求める漢達の青春〜」

 見なかったことした。

 提案されたお題で作る大喜利を延々繰り返す。テレビの創造性は減ってしまったけれどまだまだ稼げるからいいじゃない。お金のために、割り切って。私は今日も何とか成立できそうなお題を探していく。いつか名のある放送作家になれることを夢見て。

登場人物

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豚野郎:山西牧場で養豚を営んでいる人。倉持 信宏という別名もあるらしい。

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鶏ヤロー!:居酒屋鶏ヤロー!の鶏締役。ウィズコロナ時代の生き残り策に奔走している模様。

著者:カッパッパさん

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自動車業界の人、子育てにてんやわんやの30代サラリーマン。読書や料理が趣味。子育てやら仕事やら勉強やらについて語る。

前回のショートショートがきっかけとなり、MONOistで連載を持つようになった。いきなりランキング1位を叩き出していて、いま一番勢いのあるカッパ。

ぜひサロン紹介動画をご覧ください



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