グノーシス ~早く咲きすぎた薔薇のつぼみ
1、
グノーシス
早く咲きすぎた薔薇のつぼみ
いまだ茎が芽をださんとしている時に
花開こうとしたあなたたちは
教父たちのはさみにより
容赦なく切り落とされていった
教父は語る――
「信じなさい
神があなたの外におられることを」
2、
グノーシスよ
真実により近くしかしあまりに時季早く
花開きかけたあなたたちの存在自体が
教父たちに理解されることはなかった
私たちは見た
土の上に落とされたつぼみが寄り集まり
いつしか十字架を形づくっていったことを
3、
グノーシスよ
あなたたちは再び目を覚ます
いまだ園丁たちが眠るこの夜明け前
まどろむ教父たちの頭上に明けの明星が昇る
私たちは見た
役割を終えた教父たちのはさみが投げ落とされ
やわらかな土に覆われてゆくのを
グノーシス
早く咲きすぎた薔薇のつぼみ
私たちの内なるつぼみよ
あなたたちは再び花開こうとしている
ふるえながらしかし確かに決意をし
もはや時季外れではない今日という日に
つぼみは謳う――
「知りなさい
神があなたの内におられることを」
(初出:詩誌『十字路 8号』、2016年2月発行)
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