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【歌】外食食堂のうた
本日投稿した動画は、原民喜の詩『外食食堂のうた』(1949年発表)に曲をつけたものです。 原民喜(1905-1951):詩人・小説家。広島の原爆の被爆体験を描いた小説『夏の花』で知られる。 ♪『外食食堂のうた』(弾き語り) 詩:原民喜 曲・歌:鈴木太緒 毎日毎日が僕は旅人なのだらうか 驟雨のあがつた明るい窓の外の鋪道を 外食食堂のテーブルに凭れて 僕はうつとりと眺めてゐる 僕を容れてくれる軒が何処にもないとしても かうしてテーブルに肘をついて憩つてゐる 昔、僕はかうした身すぎを想像だにしなかつた 明日、僕はいづこの巷に斃れるのか 今、ガラス窓のむかふに見える街路樹の明るさ 出典:青空文庫(原民喜『魔のひととき』所収)https://www.aozora.gr.jp/cards/000293/files/4789_6744.html この詩が発表されたのは敗戦から4年の1949年。戦後の東京にて、民喜氏は住む場所さえ定まらない(知人宅の一室を間借りする、など)日々を送っていました。 最愛の妻はすでに5年前に他界。孤独と空腹と(おそらく被ばくの影響による)倦怠感や体調不良に苦しむ中、行きつけの食堂にて窓の外を眺める様子を描写しているのがこの作品です。 当時の彼を取り巻いていた状況は非常にシリアスなものでしたが、この『外食食堂のうた』は不思議な明るさに満ちています。 先のことを考えると悲観的にならざるを得ない日々……。「明日、自分はどこの町で行き倒れになってしまうのだろう」と彼自身も詩の中で述べています。 しかしここで民喜氏が真に目を向けているのはまだ見ぬ明日ではなく、いまこの瞬間、窓の外に見える街路樹の明るさでした――。 ふと見上げた街路樹の明るさに慰めと、永遠につながる何かを見出す彼のまなざしは、時を超えて私たちの胸を打つものがあるように思います。 ~お知らせ~ 原民喜から名前をとった「民喜」という青年が主人公の小説をnoteに掲載しています。宜しければご覧ください♪ 小説『ネアンデルタールの朝』 第一部 https://note.com/neanderthalnoasa/m/m406519a76342 第二部 https://note.com/neanderthalnoasa/m/m1f74f9035f8c 第三部 https://note.com/neanderthalnoasa/m/m6ba91cd56e81