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屋根より高い生活の質

6:50
アラームを無視して起きる時間が日ごとに遅くなっているのは気のせいではなかったようだ。残念ながら布団から出るには1日の半分くらいの体力を使う。第1段階、第2段階と徐々に体を起こし、のろのろとうつ伏せにに倒れ込み、深呼吸をしてまた起き上がる。私がこんなことを繰り返してようやく地に足をつけて直立する頃には、スマホの画面は7:10と力強く表示されていた。

7:50
なんとなくいつもよりも付けすぎてしまったコーラルオレンジのチークを気にしながら車に乗り込む。今日は家を出るのが遅かったから飛ばすか。いつもならその日の気分に合わせてプレイリストの楽曲を十分に吟味した上で車内に流すのだが、今日は中村一義の楽曲をランダムに再生してみる。

8:00
目の前の車の運転手がスマホを見ながら運転しているのって、案外後からよく見えるんだな。と変なところで感心しながらも矢印信号が出てるのに進まないのはさすがに腹が立つのでクラクションを鳴らす。こんなに道路が混んでいるのは3年間この道を運転してきて初めてだ。こんなにいらない初めてはない。いつもならこの時間は駐車場に着いて誰よりも早く登校しているというのに。少しでも『いつもと違う』ことが起こると舌打ちと貧乏ゆすりが止まらなくなる。本一番なりたくない大人になってしまった。
うーん、前の人も何かのっぴきならない事情があってスマホをいじっていたのだろうか。いや、だめだ。それでも私は許せない。イラついたという自分の気持ちも大切にしよう。私が正しい。

8:30
もう既に起床した時点で1日の半分のエネルギーを消費しているというのに、『渋滞にハマッてイラついて貧乏揺すりをしていた』などというクソしょうもない理由で貴重なエネルギーを消費し、決められた座席に着く。今日が2限で終わるというのが唯一の救いだろうか。

12:15
2時限目の記憶がまったく無いのだが、顔面に生成された服のシワの痕と真っ白なプリントが、私が何をしていたか、いや、どれほど何もしていなかったのかを物語っていた。今日の私は渋滞にイラつき、書けないレポートを目の前にして呆然とし、睡眠をとって終わったというのか。何とも情けない。情けなさすぎて乾いた笑いがこぼれる。
虚無感を抱きながら隣のスーパーに入り、頼まれていたもやしを1袋と、頼まれていない自分用の缶チューハイとお菓子を買って帰る。スーパーに入るとつい何かしら買い込んでしまう。財布にとっては余計な物なんだけど、私の生活にとってはまったく余計ではないしむしろ必要なので買うしかない。

12:30
もやしを買って来いということは、昼飯は味噌ラーメンあたりだろうか。そんな想像を巡らせながら車を走らせる。
中村一義の曲は良いな。何言ってるか聞き取れないことのほうが多いけど後で歌詞を見ながら聴いてみるっていう、一度で二度おいしい感じ。歌詞の独特な言い回しも好きだ。

13:30
惜しい。昼飯はタンメンだった。昼のワイドショーは嫌いだ。何が嫌いかと聞かれると答えられないけどとにかく嫌いだ。強いて言うなら、人の揚げ足ばかりとっている人間を見ていられないんだと思う。録画したままで消化できていない水曜どうでしょうの再放送を観ながら麺をすする。

14:00
さて、午前中はボロクソのカスみたいな生活を送ってしまったので勉強して体裁を整える。しかし苦手な分野なのでなかなかキーボードを打つ手が進まない。noteはスラスラ書けるんだけどな。

16:00
缶チューハイを飲んで一息つく。勉強した気になると安心する。
そうだ、欲しかったあのリップを買わなきゃ。いわゆるデパコスというやつだ。コスメカウンターに行く勇気がない私にとってネット通販というのは救世主である。キラキラしたピンク色のリップの写真を見ながら、初めてのデパコスに思いを馳せる。きっと私の好きな人たちは私が化粧を変えたことなど1ミリも気付かないと思うけど、それでいいのだ。あなた方に会うために頑張って綺麗なジャガイモになったという自分の努力が、自分でわかればそれでいいんだと思う。
休憩していると普段考えないようなことをよく考えてしまう。そういえば全然関係ないけど、最近って変な名前の劇団が増えたような。うん、私には全然関係ない。一時期架空の劇団を頭の中で立ち上げて旗揚げ公演までやったことがある。最終的に赤字になって解散したが。そんなことを思い出しているうちにおやつを食べ終わり、ダラダラと勉強を再開させる。

20:00
休憩を挟んだ後に勉強を再開すると、大体進捗は悪くなる。待ってましたとばかりに夕飯にがっつく。もう八時か。午後はなかなかに頑張って生活したのではないか。65点。

22:00
コーヒーを飲みながらnoteを書く。こうして自分が過去に書いたnote、といってもまだ2回しか投稿していないが、それらを見返していると、毎日同じことの繰り返しだと思っていた自分の生活観が変わってきたような気がする。こうして時系列に並べて1日を綴っていると、同じようで意外と違う毎日を送っていておもしろいなと思う。

11:00
疲れきった化粧を落とし、頭を洗う。シャワーを浴びている時は、余計なことを考えなくて済む。お風呂の時は別だが。シャワーは、なんというか時間との戦いだと思う。早く浴びて早く出なくては。私はいったい何に追われているのだろうか。急いで頭を乾かし、パジャマに着替え、歯磨きをする。入浴後のルーティンだ。

11:30
当然だけど明日も学校だ。早く寝よう。どうやり過ごそう。何をしよう。何から片付けよう。面接どうしよう。夜はたぶん朝の次に嫌いだと思った。

中村一義-1,2,3


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