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隙あらば好く

7:00
起きたときには左手にスマホを握り締めていた。良くない寝覚めだ。スヌーズのアラームと早く起きろといわんばかりの大きな雨音のアンサンブルが部屋中に響き渡る。わかったから静かにして欲しい。起きるから。アンサンブルはチェロと尺八だけでいいんだよ。(※ツイッター参照)

7:45
今日使う予定の教科書が一冊見当たらないが学校にあることを信じつつ車に乗り込む。どうせ教室に置きっぱなしにしてあるだろう。
朝の道路は混んでいる。そんな中で合流してくる車に道を譲ってくれる余裕のある車にはなかなかお目にかかれない。私は余裕のある運転をしたいと思う。思うだけタダだ。

12:30
午前中の授業はどうにか集中できた。私の集中力は30分が限界なのだが、今日はなかなかにスッキリとしている。昨日より軽い足取りで『いつもの』空き教室へ向かい、仲間と昼食をとる。ハタチの女が30分間で食べるにはやや大きいクロワッサン2つとおかずを平らげた。
クラスのLINEに気付く。どうやら卒業式にスライドショーをバックに全員で歌う曲を決めたいらしい。候補は、卒業ソングとしてはあまりにも有名な5曲と、見た事も聞いたこともないようなバンドによる全く知らない曲が上がっていた。投票は21:00まで。ふむ。王道の桜ソングといこうか、いや、ここはあえて全く知らない曲に投票して曲を買って1から覚えることにするか。精神的に余裕なのは前者なのだろうけど、今後の面白さでいったら圧倒的に後者だ。頭の冴えている(当社比)今の私には、卒業式には王道よりも刺激を求めたいようで、私の決意は既に固かった。

13:00
今日は不思議なくらいに頭がスッキリとしている。特に変な薬とか植物はやった覚えはないのだが。
いつもより丁寧な字で板書してみる。授業の内容は全く意味がわからないが、一文字一文字になんらかの気持ちを込めてみる。こんなことを繰り返していたらいつのまにか今日の授業は終わっていた。今日は寝なかった。偉い。

16:30
もう一度卒業ソングを考えてみる。看護学校だけが特別というわけではないが、やはり3年間積み上げてきたもの、失ってきたもの、乗り越えてきたものを、他の学問を学んでいる学生が「看護学校って大変そうだよね」「うん、めっちゃ大変だよ」の会話の中で理解するにはかなり困難だと思う。
我々看護学生の中で「卒業」というプロセスはかなり高いハードルだ。『3年間で学校辞めたいと思ったことがある回数アンケート』を一度とってみたいなと試みたことがある。実行に至らなくてよかった。頑張ってもダメならしょうがない、と何回思っただろうか。涙の数だけ強くなれるなんてウソだと何回思っただろうか。
出会いと別れの回数もかなりの数ではないだろうか。数々の実習で出会ってきた患者さん、ご家族、看護師さん、コメディカルの方々。数え切れないくらいの人たちとの出会いと別れを思い出すと感慨深い。実習に行っていると先生や友達、もちろん働いている看護師さん、つまり私以外の人間、全員とんでもないベテランに見えてくる。私が無能であるが故に、もう全員看護師歴1億年くらいに思える。私もナイチンゲールの生まれ変わりかと思われるくらいの看護師になれるように生涯続けて生きたいと思った。

17:00
家についてレモンティーを飲むまで、ずっとこんなことを考えていた。看護学生としての私は、たぶんこの歌が全部体現してくれていると感じた。歌は不思議だ。たまにこの歌は自分のために作られたのではないかと錯覚することがある。

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