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ジェイミー感想文

誰かに見られてもいいけど誰かに見られるためではない観劇日記その7
ネタバレあり。

20本ほどある下書きたちをこれまたすっ飛ばしてのこないだ観たジェイミー。
6月に観たものもまだ書いてないのに…(震え声)


もうずっとずっと、発表された日から半年以上ずっーと楽しみにしていた作品。
ストレートプレイはずっしり重くて深くて複雑な作品が大好き。だけどミュージカルはとにかくキラッキラした作品が大好き。
だからジェイミーには最初からとんでもない期待をしていた。期待どころではなかった。


大阪千穐楽と愛知初日を観劇。


ドラァグクイーンになりたい男子高校生ジェイミーのお話。プロムにドレスを着て参加しようとするも反対があり…といった内容は「The PROM」を思い出す。あの作品も大好きで大号泣した。
いいなあ。わたしもドラァグクイーンを目指したい人生だった。ステージに立つ人はみんな素敵。輝いている。ジェイミーから溢れ出るキラキラしたオーラがまぶしくて仕方がない。

とにかくつらつらと書こう。



・ジェイミーを取り囲むあたたかくて強い人たち

ドラァグクイーンという職業に憧れるジェイミーに冷たい視線を浴びせる人たちもいた。ドラァグクイーンの定義は一般的に女装をしてステージに立つパフォーマーといったところだと思われる。彼らの恋愛対象は様々であるが、同性愛者や両性愛者が多いそうだ。ジェイミーの恋愛対象は男性なのか女性なのかといったことには直接触れられていないが、「時々女の子になりたい男の子なの」といったセリフがある。しかしこれだけでは判断しかねる。まだ16歳であるジェイミー自身もハッキリとは分かっていないのかもしれない。どれだけ多様性が大きく認められる世界になっても性的マイノリティーを理解できない人はおそらく少なからず存在するだろう。この作中ではジェイミーの父とクラスメイトのディーンがその象徴的な存在だ(このことはあとで詳しく述べたい)。しかし、ジェイミーの身近には良き理解者が沢山いた。母マーガレット、レイ、プリティ、そしてヒューゴたちドラァグス。

やはりジェイミーにとって最も大きい存在だったのは母マーガレットではないだろうか。マーガレットは何時もジェイミーにありったけの愛情を注ぎ、彼の思いを尊重した。一言で言ってしまえば最高の母親である。マーガレットが味方でいてくれるという保証があったからこそ、ジェイミーはのびのびと素直に育ってくれたのではないかと思う。ジェイミーは実話を元に作られており、パンフレットではモデルとなったジェイミーさんそしてマーガレットさんと出演者との対談も掲載されている。その対談だけでもマーガレットさんの海のように広い心がうかがえる。「人はみんな違うのだからジェイミーはやりたいことをやりなさいと言った」とおっしゃっていてその強く優しい人間性は作中のマーガレットそのままだった。母は強い。

それはレイも同じだ。マーガレットの良き理解者であり、ジェイミーの良き理解者である。レイの竹を割ったような性格は見ていてスカッとするほどだ。身近にいてくれればそれだけで強くなれるような気がする存在。(ジェイミーたちの)家族同然よ!と言っていたが、彼女こそ大黒柱ではないだろうか。

そしてプリティ。"クラスの中の変わり者同士"としてジェイミーが頼りにしている女の子。わたしはとにかくジェイミーとプリティの関係性が大好きだ。素直に褒め合い、正直に意見をぶつけ合える関係。ジェイミーはプリティに「メイクする必要ないのよ。あなた元が可愛いから」と躊躇うことなくさらっと言う。ジェイミー観劇中はとんでもなく馬鹿になっている私の涙腺がこのセリフだけで決壊する。年頃の男の子女の子という関係性でこんなに素直に褒め合えるのは見たことがない。逆にプリティはミミ・ミーの姿ではないジェイミーに「とっても綺麗よ」と言う。お互いを認め合い素直に言葉に出来るこのふたりの関係性がグサグサと刺さる。もちろん見返りを求めて褒めているわけではないことは見ていれば誰にでもわかる。もっとこうジェイミーとプリティのように認め合える世界だったらいいのになあ。ちゃんと私も素直に言葉に出来る人間でいなくちゃ。

ドラァグスがジェイミーの背中を押すのはもちろんのことだろう。ロコ・シャネルをはじめとした先輩ドラァグクイーンたちの言葉は妙に強く真っ直ぐで納得できる。考えてみれば今テレビで活躍している女装家の方たちの意見もなぜか優しくて厳しくて愛があって説得力がある。だから腑に落ちる。マツコさんだったりナジャさんだったり。どうしてだろうか。答えは分からないがジェイミーの世界でもそれは同じだった。ヒューゴのお店での会話も、ジェイミーのステージデビューの時の会話も、そしてあのバス停での会話も。大号泣ポイントのひとつであるバス停でのジェイミーとヒューゴのシーン。夢に向かって奮い立たせる愛のあるお説教だ。正直泣きすぎてあまり内容を覚えていない。思い出そうとするとふたりのセリフよりも先に涙が出てくる。本当にこんなに強い大人たちに囲まれているジェイミーは幸せ者ではないだろうか。



・お前気持ち悪いんだよ

ジェイミーがとあるふたりから浴びせられる言葉だ。そのふたりが先述したジェイミーの父とクラスメイトのディーンである。ディーンはいつもクラスの中心だった。いわゆるジャイアンだ。それがジェイミーにクラスメイトの視線を奪われてしまう。おそらく嫉妬と焦りゆえの言葉だろう。だがジェイミーにはその言葉は何も刺さっていないように感じた。「だって僕気持ち悪くないもん」なんて突き返されてその侮辱は一瞬で砕け散った。

ただ父親に言われた言葉は違う。8歳の時に言われたその言葉が今までずっとジェイミーの心臓に突き刺さっていたようだ。そして16歳、再び同じ言葉を言われてしまう。父から送られてきたと知らされていたバースデーカードやステージのお花も母による優しい嘘だったと知ったことも重なりジェイミーの心は壊れてしまう。その結果父ではなく嘘をついていた母に刃をむけてしまう。ここが本当にむずがゆい。そのまま父に反論して大喧嘩でもできていればよかったのになあ。でもあの"最低の模範"とでも言えるような父親に何を反論しても無駄だろうなあ。多感な16歳にとってはあまりにもむごい現実だ。そんなところまでは描かれていないがきっとマイノリティーとして生きていく上で少なからず小さい頃から悩みや葛藤があったのではないだろうか。その強くも繊細な心に1ミリも寄り添えない父には1ミリも同情の余地がない。そう考えると父ではなく理解してもらえる母とぶつかったことは正解だったのかもしれない。


やばい、ジェイミーめちゃくちゃすき!!!みたいな話ばかりしようとおもったのにちょっと真面目な文章みたいになっちゃった。


・ドラァグスが愛おしすぎる話
作中に登場する4人のドラァグクイーンたち。作品におけるスパイス的な存在?愛おしい。石川さん、吉野さん、今井さん、泉見さん。今井さんはジェイミーの父との二役だが本気で別人じゃないかと思うほどの違いようだ。とにかくやり取りが楽しすぎる。でもやるときゃやる、そんな愉快な方たち。アクスタにして飾りたいよ〜〜。ちなみにドラァグスでの推しは泉見さん演じるライカ・バージンちゃん。もうすき。あの"留守番してる子どもに電話する"シーン好きすぎて。何回でも見たくなる。配信されていた特別映像の大人座談会でライカ・バージンは"どやさ系"っていじられててちょっとわかると思ってしまったwくるよ師匠みあるよね。
ドラァグス4人と飲み会したいな。絶対楽しいw


・こんなところまで楽しい

ジェイミーの楽しみのひとつにセット替えがある。セット替えや小道具の移動は黒子ではなく主に生徒役の出演者たちで行われる。そのひとつひとつの動きにも振り付けがつけられているようで見ているだけで楽しい。ただ椅子を運ぶという動作であっても順番に上に掲げてウェーブをつくったり。時折椅子(椅子なのか?踏み台なのか?名前わからない)の銀色が暗転の中少し反射するのだけでわくわくする。そんなことを思っていたら演出のジェフリーがわざと裏面を鏡張りにするように言ったと知った。まんまとわたしは演出の思うつぼにハマったみたいだ。

それからセリフ。海外コメディの吹き替えのようなセリフの言い方(伝われ)。滑舌がとびきり良くないとジェイミーには出演できないのではと思うほどの日本の作品では見られない早口(伝われ)。翻訳も演出もわざとこの海外っぽさを強く残したのではないかと思う。このセリフのテンポのよさが特にジェイミー、マーガレット、レイの強さや真っ直ぐさを際立たせているように感じて、こんなところにまで楽しさを見いだせてしまう。

そしてミュージカルといえば私が熱く語りたくなるのが音楽だ。元からジェイミーの音楽が大好きで何度もリピートして聴いていた。なんせ楽しすぎる。いつもミュージカル曲はアップテンポでアガる曲ばかり聴くがジェイミーの音楽はバラードも素敵でたまらない。M13「He's My Boy」なんて言わずもがなだ。そして海外版の音源に聞き慣れてしまったわたしが今回日本でのジェイミーを観てあまりの配役のぴったり加減には驚いてしまった。今回のキャストの方々の歌声が役にハマりすぎている。海外版のオリジナルのいいとこ取りをしたような感じだ。M10「Limited Edition」の保坂さんレイの歌い出しなんて思わず震え上がった。音楽が最高だとミュージカル観るの楽しいよね!


・ふたりのジェイミー
運良くわたしはウィンくんジェイミーと颯くんジェイミーの両方を観ることができた。同じジェイミーでもかなり雰囲気は違う。
受けた印象としてはウィンくんジェイミーはとにかく芯が強い。どんな時も真っ直ぐ前を向いている。だからこそその存在が余計にキラキラと眩しかった。ドン引きされると思いますがジェイミーが初めて赤いハイヒールに足を入れた瞬間からわたしは泣き始める(開始10分)。そして泣きのピークは1幕最後のジェイミーが真っ赤なドレスでステージに立った瞬間。なぜなら輝きすぎているから。ウィンくんジェイミーはキラキラオーラも強烈。とにかく強いのだ。

一方、颯くんジェイミーはといえば繊細さが印象深い。「時々女の子になりたい男の子なの」のセリフに沿って考えてみれば男の子より女の子の部分の方が大きいように感じた。その繊細さゆえ、颯くんジェイミーの1番の泣きポイントはバス停でのヒューゴとのやり取りだった。
同じ作品を見ているのにキャストが違うとここまで感じ方が変わるのかと。今までキャスト違いで見た作品は何本もあるがここまで感じ方が違ったのは初めてだった。ウィンくんジェイミーでは前を向いてキラキラと進んでいく1幕で大号泣し、颯くんジェイミーでは少し後ろを向きかける繊細さが表現された2幕で大号泣した。本当に2人のジェイミーを見れてよかった。

そう思っていたら流司くんディーンがパンフレットで同じようなことを言っていた。ウィンくんジェイミーは心強くあろうとするから勝ってやりたくなるし、颯くんジェイミーは本当に悲しそうな顔をするからいじめていて心が痛いと。
2人のジェイミーの違いが他のキャストのお芝居にも違いを生んで、ジェイミーを観る楽しさを倍増しているのかもしれない。ジェイミーという作品が本当にすきすぎる。


ジェイミーを観るとなんだか強くなれるし優しくもなれる。多様性がもっともっと認められればいい世界なんだけどな。それは性的マイノリティーという意味だけではなくて、容姿だったり考え方だったり自分と違うものを受け入れることだと思う。ジェイミーの父についても言葉や態度は許されるものではないけど、性的マイノリティーをどうしても受け入れられない人もいるということを受け入れるということも多様性と考えられるのではないだろうか。特別描かれているわけではないけどクラスメイトたちは最後にはジェイミーやプリティたち"マイノリティー"をすごく柔軟に受け入れている。なんだか当たり前のようにみんなが認めあって褒めあっている。とんでもなく素敵な世界だ。とある高校生たちが教えてくれたこと、大人たちこそできるようにならなくちゃね。



さらっと書くつもりが5000字になってしまった…
これだから下書き減らないんだよ…

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