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手掌多汗症で悩んだ、15年に終止符を。術後10年経った今の気持ち。

手掌多汗症。
インターネットで調べると、”日本人の20人に1人の割合で発症すると言われている”と書かれていて、珍しくない病気と知る。これは大人になってから知ったことです。

いつからの悩みかは定かでは有りませんが、物心ついた頃にはもう手のひらに大量の汗をかいていたなということは覚えていて、21歳までの最も多感な時期で一番の悩み事でした。

私は年長の頃からピアノを習っていました。毎週毎週、ピアノ教室に通っていくうちに気づいたこと。それは練習中に鍵盤についた汗を、先生が何度も拭ってくれること。

優しい先生は嫌な顔ひとつせずサッと拭いてくれていましたが、拭く度にポロンポロンと響く音を聞くと、小学校高学年になる頃には”申し訳なさ”と”恥ずかしさ”で徐々にピアノ教室に行くのが嫌になっている自分がいました。

その頃から、
【ノートやテスト用紙が手汗でふにゃふにゃになり、文字が薄れて書きにくい。】
【黒板に文字を書くとき黒板から手を浮かせて書くので、字が汚くなる。】
【発表会などでスポットライトがあたったりする場面では、暑さと緊張で”床に滴るほど”汗をかいているのでは(見えているのでは)と不安になる。】
【レクリエーションなどで手を繋いだり触ったりする内容がある時は、ひとりだけ地獄の時間。】
など、ほんっっっとに、毎日毎日苦痛な時間の方が多かった記憶があります。

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こんな私でも、夢は美容師になること。
大人になれば治ると信じて生きてきた私も、進路を決める高校2年生になっても相変わらずの手汗。それでも”あと1年ある”と信じて、時は高校3年生。小学生の頃からの夢だったので、直前で夢を諦めるという選択肢がなく、そのまま悩みとともに美容専門学校に入学しました。

シャンプー練習や1人で行う実技練習は楽しく行なっていましたが、メイク授業やネイル授業などはやはり苦痛でした。というか、練習モデルを組んだまだ仲良くない友達にどう思われているかを気にしてしまい、授業が頭に入らないのです。大好きなメイクやネイルの授業なのに、毎回気持ちはドン底です。

そんな専門学校生活が2年続き、国家試験は合格。
就職先も決まり、1年ほど美容室で美容師アシスタントとして時が経った頃。いつも教えてくれる先生に悩みを打ち明けました。手汗が気になって、練習で教わった内容が頭に入らないこと。もう気持ちが限界なので、辞めさせて頂きたいということ。

「教わったことはその日にすぐ理解したり出来るようになる器用さをもっているのに、なぜ何日経ってもそこから成長しないのか、理由がわかった」と言われました。美容学校で言われた「出来るようになるのは1番早いのにそこから成長があまりない」という言葉と重なりました。

先生たちの言葉に傷ついたわけではなく、むしろ”なるほどな”と受け入れていました。今まで手術という考えはありませんでしたが、帰ってインターネットでたくさん調べました。

四谷メディカルキューブという病院に目が留まり、早速お母さんに相談。お母さんはいつでも娘の味方をしてくれるので、二つ返事でOKしてくれました。

手術は全身麻酔。日帰りの人が多いみたいですが私は一泊二日で退院。
当時、近くに住んでいたお兄ちゃんと実家の田舎からお母さんが来てくれました。
手術前に、こういう手術でこういう副作用があってなどのお話を聞き、21歳で初めての大手術。
副作用として、胴体などから代償性発汗が出現する可能性が高いと聞きましたが、当時そんなこと気にならないくらいの手汗量だったので、すぐに手術を決めました。

手術台。麻酔医の方がカウントダウンを始めると、スッと記憶がなくなり、目覚めるとベッドの上。手を見ると、サラサラの手。長い長い悩みだった手汗がこんなにもあっけなく無くなるんだ、と、もっと早く手術すればよかったなと思いました。
手汗ひとつで、こんなにも世界が変わるんだと、本当に嬉しかった記憶が蘇ります。

10年経った今でも、ほとんど手汗はかきません。顔や頭、腕もほぼ汗をかきません。その代わり、少しお話しした代償性発汗が脇の下の全身から出現し、気温や室温が高い夏などは胸や背中から滝のような汗が流れ落ちます。ですが、「よく使う手から大量の汗(毎日)」と「見えない胸や背中から大量の汗(暑い時だけ)」を天秤にかけたときに、断然、私的には後者の方が耐えられるので手術して正解だったと思っています。手術の傷痕も、当時も小さかったので、今ではどこにあるかもわかりません。

(手術した年の冬、初めて手が乾燥し、初めてハンドクリームを使った時は感慨深かったな〜)

手汗を気にしなくなった生活で思ったことですが、販売の仕事を経験した時、お客様の手に触れた際、手のひらが汗ばんでいる方が意外と多かったり、それを気にしてる素振りがない人も多いということがわかりました。

冒頭でお伝えした、手掌多汗症は日本人の20人に1人の割合で発症する病気というのも、確かにうなずけます。今思えば気にし過ぎの面もあったかもしれません。それでも本人からしたら、教室で例えたら1人や2人しかいない病気がなぜ私なんだと思うわけです。

手術するのもひとつ。
手術しなくても、別の道が選べるならそれもひとつ。

少しでも多くの悩んでる人に、私の経験談に共感してもらったり、ちょっとでも勇気を出せるようになったり、未来に希望が持てたりして頂けたら嬉しいです。

美容業は半ば諦めていた部分もありましたが、手術後も結婚するまで大好きな美容業に復帰できておりました。

誰かの踏み出す一歩になれたらと思い、
ふと書いたお話しでした。

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