ビジネスの未来を見通す弁証法

かなり煽った題名でトライしてしまったが特に遜色ない。(10-15分以内で読めるかと)

まずこの本を紹介したい。

『使える弁証法』著:田坂広志 東洋経済新報社

本著は勤務先の同期から薦められ、面白すぎて爆速で読み終えた一冊(1時間くらいでいける?)

一見ヘーゲルの弁証法という難解に見える内容だが、筆者の地頭の良さがでる文体と鋭い洞察で誰でも理解できるのでオススメだ。

要約をするならば、この世の中の事象、文化などは螺旋的発展の法則で成り立っているというもの。

もっと踏み込むと、螺旋階段は上へ上へと確実に進歩・発展していくものと考えられる一方、螺旋を上から見ると実は循環する円となっており、物事は発展するものの、実態は古きものが新しさと懐かしさを伴って還ってくるというものが、螺旋的発展だ。

具体的な例を持ち出すと、
電子メール。このツールは「文(手紙)」の弁証法的発展の産物と言える。
手紙は伝えたい内容を書き記し、投函、相手のもとに届いてというフローを辿る。江戸時代・明治・大正あたりまでメインツールだったのではないだろうか。
しかし手紙も「電話」という伝達スピードで勝るツールに取って代わられた。
注目したいのは、手紙が一度トレンドから消失した点だ。
その後インターネットという技術革新の末、いつでも瞬時に読める、送信・保存が出来る電子メールが現れた。これはある意味、手紙のアップデート、螺旋的発展の法則に則っていると言えるのではないだろうか。

もう一度整理するが、あらゆる事象は、一度は消失するが後にかならず新しさ・有用性を伴って還ってくるというのが螺旋的発展、弁証法の活用ということだ。

偉そうに要約してみたが、ろくにヘーゲルの弁証法についての理解を深めたこともなく、本著で初めて触れただけだ。もっと例があり、興味深いので面白そうだと思ったら是非読んでみてほしい。感想ももらえると嬉しい。

〜本論〜

さて、この弁証法的思考をビジネスの未来を見通す方法として活かすというのがメインだが、非常にワクワクする。
自分でも考えてみたものを1つ。

ZOZOスーツ。
オンラインで採寸し、個人にフィットするアイテムが届く(くらいの認識でok?)
これはどのビジネスの螺旋的発展事例だろうか。

私が考えるのは仕立て屋さん。イメージで恐縮だが、江戸時代、近所の呉服屋さんが、どこそこの田子作の家に採寸に行って、採寸し、それに合わせて仕立てる。長年主流ではなかっただろうか。

では、この伝統は何に取って変わられたか。
大量生産だ。安価で、色もサイズ数もあるアイテム揃いはあっという間に、高い・遅い・選択肢が比較的狭い仕立て屋を追いやった。

しかし、ZOZOスーツというツールは自分にぴったりのアイテムを作ってくれる仕立て屋さんのような懐かしさと、手軽で割と早いという新しさを伴って確実に還ってきた。

さらにここではなぜ大量生産が衰退しつつあるかという点にも注目してみたい。(メールの例で言うなら電話がなぜメールに押されたか)

日本ではユニクロなどの大手SPAは今でも健在だが、forever21、old navyなどは日本撤退などを強いられ、大量生産体制に陰りが見える。

逆にエバーレーンなどの価格の透明性・トレーサビリティなどで顧客の納得感に訴求するアパレルブランドは、大量生産ではなく売り切り型で在庫を持たず、更に実店舗も持たない方法でコストカットを図りネットEC販売に注力する。彼らをいわゆるD2Cと称するが、世界各国で爆発的に伸びている業態だ。
いずれにせよ、ポイントは個人だ。

つまり、個人(仕立て屋)→大衆(大量生産)→個人(個々人の納得感と共感)のサイクルがそれぞれの技術革新を経て循環している。
村の仕立て屋さんが、一時は廃業したけど、すごく環境に配慮した素材を使って、納期も早く私にサイズぴったりのアイテムを届けてくれた。とでも言うのだろうか。
ZOZOスーツの例は、少し説明が抜けていたり飛躍している箇所もあり分かりにくい部分もあるだろうが、とりあえずイメージはついただろうか。

忘れかけていたが、これは現状の分析に過ぎない。テーマはビジネスの未来の見通し方だ。
ここでは、繰り返すようだが、次に来るのは消えかけたと思える事象の螺旋的発展だ。すなわち、大量生産。これが懐かしさと新しさを伴って還ってくる。
今の個人へのシフト段階からは到底考えにくい分野だが、頑張ろう。

大量生産の現在の課題は何だろう。前述の在庫になるという点ほか、大量に作る分売れるアイテムでなければならないため、アイテムの独自性が下がりやすい、コストカットのために質の低い素材になってしまうなどが考えられる。

逆に個人シフト、D2Cに今後起きうる課題は何だろうか。
まず物理的な早さでは大量生産を越えられない。5分後に必要なtシャツは、次の日届くTシャツよりも価値が高い。
また、メリットでもあった、個人のニーズにあったブランド展開も煩わしさになるかもしれない。
例えば価格透明性が高く、環境配慮した、tシャツが200社あればどうだろう、面倒くさすぎる。と同時に買ってみたものの、質の差が出てしまい返送できるとはいえ、面倒くさい、選択肢の多さが逆に足かせになるかもしれない。

大量生産が還ってくるとするなら、①すぐ手に入る、②安いといった懐かしさとともに、どこでも買えて、サイズぴったりでオリジナリティの高いオシャレなアイテムといった新しさを伴うのだろうか?

それは多分おそらく、脳でイメージしたアイテムと同じ形状・素材・デザインに変化する衣服なのかもしれない。

戻るボタンを押さないで欲しい。あと少しで終わる。

無味無臭なtシャツだが想像すれば変幻自在に変わるtシャツ、これだと作る側からすれば同じアイテムだけを大量に作ることができ、安く拡販できる。在庫は人間が1人1着以上もたない限り売れるかもしれないしそこまで行かなくても、在庫は確実に減る。
さすがにこのプロダクトは螺旋を4、5回経たあとに考えるべきものだろうが、20年前に話すよりまだ現実的ではないだろうか?そんなことないか。

もっといいアイデアがあれば教えてほしいが、この螺旋段階では、今ホットな再生繊維技術の革新がより現実的な案かもしれない。
伊藤忠が進めるRENUというプロジェクトが代表的だが、衣服を繊維レベルにまで分解し、再度衣服を作る。これは従前のリサイクルと変わらないが、近年のSDGsの高まりから再注目されている。通常のリサイクルと何が違うかの説明はさておき、衣料の循環がより簡単に安くどんなアイテムでもできるなら、大量生産しても在庫になっても繊維に戻せばいいので、再び大量生産の流れがくるかもしれない。結構いい線いってるのでは?

以上でエッセイも終えたいが
もう一つ言いたかったのはこの螺旋的発展のサイクルがどんどん早まっているということだ。
仕立て屋さん〜大量生産〜仕立て屋さん2.0までの時間と大量生産〜仕立て屋さん2.0〜大量生産2.0までのスパンはドンドン早くなっている。

これはどの事象にも当てはまる。インターネットの技術革新からこの流れは急速に早い。
常に次のビジネスモデルを見通すメソッドをこの弁証法は教えてくれる。逆にこの方法を用いれば次に来るビジネスを作り出せるのかもしれない。
是非何か思いつけば共有してほしい。

このnoteでこうした弁証法的アプローチでビジネスを多数考えていければと思う。

KJ

#ビジネス
#弁証法
#新規事業



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