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#017 The Witcher3・音楽などの考察②

前回に引き続き"The Witcher 3"について書きます。
引き続き独自研究を多分に含んでいます。

前回の記事では、The Witcher 3の楽曲はそのほとんどの楽曲がDm(ニ短調)で制作されているということを書きました。ほとんどと言うか、"Geralt of Rivia"という楽曲を除いて、全曲です。Apple musicのリンクを使って貼り付けてみましたので、ぜひ聴いてみて頂ければと思います。

The Hunter's Path

ゲーム本編の実質舞台である「ヴェレン」の中央部の楽曲。この曲は序盤ずーっと聴くことになりますが、とにかく陰鬱な曲です。ヴェレンは激戦地で「主無き地」とされていてそこら中に打ち捨てられた人や合戦の後があり、雰囲気も暗く、序盤としてはかなりヘヴィで、それをしっかりBGMでも演出しています。

Forged in fire

「ヴェレン」中央部のでの通常バトル曲。ウィッチャーのバトル曲はいずれもこの曲のようなローテンポで重めのモノが多いです。この曲はまだテンション高めな方です。「ヴェレン」での散策はこの曲のお陰で多少救われています。でなければ延々と上記のThe Hunter's Pathを聴く羽目になります。

Drink up, there's more !

ヴェレンの北、作中最も大きい町「ノヴィグラド」のある区画や、グウェント(ゲーム内のカードゲーム)で流れます。ウィッチャーの中ではかなりテンションの高い曲です。

The Song of the Sword-Dancer

いわゆる「中ボス」のバトル曲。ゲーム中ではかなり珍しい、転調のある曲です。なんてことない転調なんですが、作中ではこの展開は少ないので、特別感を感じます。そこも意図的だったらすごいなぁと思います。

Spikeroog

物語中盤に訪れる「スケリッジ諸島」のスピカローグ地方の楽曲。
このスケリッジ諸島はアイルランドやケルト圏の北部をモチーフとした島嶼部で、ヴェレンと比較して、メロディの立っているが多くあります。

The Tree When We Sat Once

物語中盤に訪れる「スケリッジ諸島」のフェロー島の楽曲。上記同様、メロディの美しい曲で、途中イーリアンパイプスなどが使われていて、ヴェレンが中世音楽寄りだとすると、こちらはよりケルト風味が強い楽曲になっています。

Kaer morhen

ウィッチャーたちの拠点「ケィア・モルヘン」の楽曲。#2 Geralt of Rivia(メインテーマ)のモチーフが使われています。※Kaer(ブルトン語で町・砦)Morhen(ブルトン語で海辺)で「海辺の砦」という意味になります。
こちらもメロディが立っている楽曲です。

Fanfares and Flowers

ここからはDLC「血塗られた美酒」からの抜粋になります。同DLCの舞台であるトゥサン公爵領はフランスを中心とした西欧がモチーフになっていて、この曲はトゥサンのテーマソングのような位置づけの曲です。0:41~以降はこのウィッチャーシリーズの中では非常に珍しくメジャー調で、戦乱に明け暮れている北方諸国から、一気に舞台が変わる「異国感」を演出しています。

For Honor! For Toussaint!

トゥサン全域での通常バトル曲。
個人的に全バトル曲の中でこれが一番好きです。
「名誉のために、トゥサンのために」という曲名は、トゥサンの騎士道を重んじるそれが反映された曲名だと思います。

The Slopes of the Blessure

トゥサン最大の城下町ボークレールの楽曲。
アコーディオンが入ることによって一気にフランス感が出ている曲です。
曲名の"Blessure"はフランス語でという意味で、華やかな都の曲なのに何故「傷負いの丘」という曲名になっているかは、ゲームをやればわかるようになっています。

The Musty Scent of Fresh Pâté

トゥサンでもグウェントは大流行していて、その際の曲です。
「新鮮なパテ(テリーヌ)の饐えた香り」とは、なかなか小気味いい曲名だなぁと思います。

こんなところでしょうか。全部で100曲近くあり、そのうち一部を取り上げましたが、どれも同じキーであることにお気づきでしょうか。なかなかこれほどのコンセプトを持ったサウンドトラックもそうそうないと思います。

ちょっと音楽から逸れてしまいますが、このシリーズはとにかく時代考証の段階からものすごく作りこまれていて、歴史に興味をある人や好きな人にはすごく刺さるのではないかと思います。実際、自分はそれほどアクション系のゲームは得意ではない(Dark Soulsシリーズは開始10数分で投げるほどです)のですが、音楽ももちろんですがストーリーとその作りこみに感動して大ファンになりました。

自分はフランス留学をしていたこともあり、そのフランスを中心に構想を練られているトゥサン編が大好きで、細かい部分にまで反応していました。

例えば地名

Champs-Désolés(シャン・デゾレ、荒れ果てた野原の意味)

Toussaint(トゥサン・諸聖人の日、カトリック教会の祝日の一つ)
ただしゲーム中では、一神教ではなくドルイド教など多神教をベースにした架空の宗教。エポナフルドラモリガンなどの記載があるので、ケルト・北欧・ポーランドなどをベースにしていると思われます。

Beauclair(Beau"ボー・美しい"clair"クレール・澄んだ"という意味の単語を2つつけた造語と思われる)
ゲームの中心になる公爵城で、とにかく豪華絢爛な城です。

Sansretour(サンルトゥール、"帰らずの~")
サンルトゥール川、サンルトゥール谷などがあり、モチーフは恐らくフランス・ブルターニュのVal sans retour(ヴァル・サン・ルトゥール)というブロセリアンド(中世ヨーロッパ各地に伝わる神秘的な場所、特に森)だと思われます。アーサー王伝説に登場するモリガンが統べる地域とされています。

また、人名

アンヌ・アンリエッタ(ゲーム中は英語読みでアンナ・ヘンリエッタ)、ダミアンギヨームヴィヴィエンヌアンリルドヴィックなど、フランス人名がほとんどです。

また、宿屋などで購入できる食品(回復アイテム)もカマンベールのサンドウィッチ牛肉のブルゴーニュ風ブリオッシュテリーヌコンフィリエットなどフランスの地方伝統料理がメインです。

その他建造物ぶどう園などの景観もよく練られていて、果ては天候にまで気を配られています。いわゆるケルト圏は曇りや雨が多いイメージがあり、実際ヴェレンなどは結構雨が降るのですが、トゥサンでは8割方晴れです。

…と言いつつも、トゥサン各地にあるぶどう園はコルヴォ・ビアンココロナータカステルダッチアなどイタリア語が元のものも多くあったり、トゥサン編冒頭の巨大な風車をなぎ倒して巨人が出てきたりして(しかもそこの地名は"セルバンテス"ドン・キホーテ作者)少しスペインも顔を出しています。

ウィッチャー本編が戦乱真っ只中の中世という位置づけなので、この対比として、もちろんこのトゥサン編も明るい話ではないですが、全体的におとぎ話の国のような演出が各所で見られます。

途中からゲーム全体の歴史オタクっぽい話になってしまいましたが、それほど夢中になれてしまう素晴らしいゲームです。確かにプレイする人を選びますが、自分の感性に合うようであればやって損はないです。

ということで、二か月連続でThe Witcher 3 についての話でしたがいかがでしたでしょうか。ここまでお読みいただきありがとうございました。

それではまた。

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