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前職が残念なことになり、2か月ほど仕事探しに悶々としていた


またも失職してから4か月

年齢と既往歴によって狭まった選択肢の中から掴み取った貴重な仕事に、それなりの決意と、準備を進めて臨んだが、またも人間関係のトラブルを理由に、数か月で退職することになった。

あれから4か月。私はまた次の仕事を見つけ、その環境に適応するべく日々努力している。

離婚歴のある私にも、生活を共にしてくれるパートナーがいる。籍こそ入れていないが、相手の両親にも認めてもらい、内縁の妻と呼んで差し支えない関係性と生活を営んでいる。

彼女との同居生活を続けていくには、どうしても私も働いて稼ぐ必要がある。パートナーはフルタイムの派遣社員だが、二人でそこそこ余裕を持って暮らしていくには、いわゆるダブルインカム、二馬力でないと成り立たない。彼女の収入だけでは、相当切り詰めた暮らしぶりになってしまい、いずれ破綻するのは目に見えているから、せっかくの二人暮らしをささやかでも幸福を最大化するために、私も稼ぎたい。そしてこのモチベーションがある限り、生活保護や福祉からの支援を選択することはない。

うつ病の短くない治療期間の証明と、ASD(自閉症スペクトラム障害)が確定した診断書を用いれば、それなりの支援を受けられることは経験から言って容易なのはわかっている。しかし、それを活用すれば、パートナー(とその家族も含む)関係性や、いま構築した生活スタイルが大幅に望まない方向に変化することもまた想像に難くなく、支援を受けることと現状維持とを天秤にかけ、私はまだ仕事を続けることを選んでいる。

パートナーとのことがなければ、とっくに労働市場から退場して、世間との関りを避けた隠居生活に入っていることだろう。それくらいには社会との接点を持つことにくたびれてもいる。

世界最先端のコールセンターは超合理主義

今度の仕事も在宅勤務のコールセンターだ。すでに1か月半ほど勤務している。

かなり大手のECサイトのカスタマーサポートだ。商品が届かなかったり誤配されてしまった顧客と、配送中のトラブルに遭遇した配達ドライバーの、その両方をサポートする仕事だ。

転職サイトなどの口コミでは、きつい仕事と言われることも多いようだが、私がこれまで経験してきたコールセンターの中ではかなり易しめの難易度であると感じている。

私が初めてコールセンターで働きだしたのは15年ほど前だが、当時は業界全体が未成熟で、業務環境は今よりもずっと劣悪だった。Windows XPや2000といった当時でも化石になりかけていたOS上に構築された、まともに動かないツールを使い、ろくな研修もなく顧客対応をさせられていたあの頃を知る身としては、いまどきのコールセンターは、どこもイージーに感じる。これは「経験」という、私が持つ数少ない財産なのだろう。

業務の隅々まで、最先端のIT系テクノロジーが導入されている、良くも悪くも合理的=正義のセンターだ。研修はオンライン学習で極限まで自動化されているし、顧客対応中に参照する必要のある情報も、大体2回程度クリックすればスムーズに取り出せるように整理されている。

チャット対応にはAI技術が十分に活かされており、顧客が打ち込んだ文章を瞬時に解析して、4パターンほど回答案を提示してくる。オペレーターはその中から適切なものを選ぶだけでいい。会話の8割は、AIが示した回答案をそのまま入力するだけで自然な対話が成立するほどの精度だ。回答案は顧客が1行メッセージを打ち込む度、1秒かからずに表示されるし、精度も極めて高いから驚く。

忙しい時には、電話で応対しながら、チャット対応を最大2人の顧客を並行してこなすという、同時に3人の顧客を捌く運用となる時もあるが、まあそれも慣れてくるとそれほど苦労せずにこなせるようになるだろう(今の私には無理だが、あと2か月もあればその域に達することができると見込んでいる)。

人間関係もドライで合理的

会社は基本的に数字上のパフォーマンスしか気にしない社風のようだ。

いつも人の気持ちがわからず、ひどく嫌われてトラブルに巻き込まれる自分には、この社風は有利に働いている。情とか、空気とか、社交辞令が、私を退職に追いやるからだ。

トレーナーや上司はフレンドリーだが、交わされる会話はドライで合理的。人当たりは良いが不必要なことは一切会話しない。オペレーターも管理職も、みな忙しくてそれどころではないというのが実情なのだが、私個人としては、職場というコミュニティにおいてはそれが理想的だと感じてしまう。若い頃はこうではなかったが、ASD当事者として20年以上会社で働いてきて、今や180度反対の価値観が備わってしまった。

ちなみに同僚(自分と同じ新人)においては、この1か月半で会話は一切発生していない。本当にただの1度もない。朝礼や終礼には、同じWEBミーティングに接続はするが、基本的にはマイクをミュートにしているだけでそれらは終わる。

我々新人が言葉を発するときは、業務上わからないことを質問する時だけで、その相手はトレーナーに限られるから、新人同士の会話は生まれない。
非効率な新人同士のグループワークなどしないし、座談会的な集まりもない。

人によっては耐え難い職場環境かもしれないが、私のようにできるだけボロを出さないように気を付けなければならない発達障がい者には、こんな楽な環境もない。

いつも自分がなぜ嫌われたのか、怒らせたのかがわからないまま、事態が深刻化していく私には、コミュニケーションの機会は直結的なリスク因子であり、少なければ少ないほど、事務的であればあるほど、安全なのだ。

前職が残念なことになり、2か月ほど仕事探しに悶々としていたが、その時期と比較して、ストレスはきれいに解消された。いつも、仕事以外の人間関係のいざこざが嫌になって会社を辞めてきた自分には、退職リスクが極めて低い環境に身を置けている安心感は非常にパワフルな効果を人生にもたらしている。

が、課題はある。

副業探し

実は今回の仕事は実働4時間のショートタイムジョブだ。

ぎりぎり手取りは月10万に届かない程度の収入だ。さっそく来月から、最近の世相を受けて賃上げが実施されることになったが、それでも2万円程度しか上がらない。

在宅で働けるコールセンターを探し続けたが、最終的に採用にまで至ったのは今の職場だけだったから、選びようはなかった。好きでショートタイムに飛び込んだわけではない。何度も企業にお祈りされて、採用まで至ったのが、この条件の求人だったに過ぎない。

とはいえ、実働4時間というのは、体調やメンタルのことを考えれば理想的だ。うっかり忘れそうになるが、私は元うつ病患者でもある。数年かけて寛解し、今は通院もしていないが、それでも油断すると倦怠感や頭痛、睡眠障害などが顔を出してくる。

トリガーは1にも2にもストレスで、一定以上のストレスを感じると、身体的な不調感がどっと襲ってくる。

だから4時間程度の勤務時間は、長過ぎず短過ぎず、ちょうどいい。

一方で収入としては、心もとない。月に20万とは言わないが、15万には届かせたい。ここまで稼げれば、二人の暮らしぶり的には、ちょっとした旅行にでかけるとか、外食して美味しいものを食べるとか、ライブにでかけるとか、色々な楽しいイベントを経済的な圧迫感なくセッティングできる。

老後に備えた投資資金にも余裕ができる。

だから私は、本業が決まった後、間髪入れずに月に数万円稼げる副業を探すことにした。

業務委託や個人事業主として働くってさぁ…

本業の会社は、他社と雇用契約を結ばない形であれば副業を認めている。つまり、業務委託などで個人事業主として稼ぐ仕事だ。

UberやAmazonの配達員なんかがすぐに思いつくが、身体への負荷が大きすぎるのではないかと心配で二の足を踏んでいる。さらに私は札幌に住んでいるが、冬のことを考えると自動車を使わないとやっていられないと思うが、自動車を維持する経費のことを考えると頭が痛くなる。買うにせよ、借りるにせよ、自動車は金食い虫だ。副業のためのコストとしてはリスクが大きすぎるように思う。持たなくていいのであれば、マイカーは真っ先に処分すべき贅沢品である。その分をiDeCoやNISAに回せば、どれだけのリターンが見込めるか、具体的な数字を出して計算すべきだろう。

コールセンター系の仕事でも、業務委託のものはあるが、基本的にろくな案件がない。テレアポ、テレアポ、テレアポばかり。テレアポが悪いとは言わないが、この仕事はただひたすらに忍耐力勝負で、スキルなどまるで身につかない。怒られても嫌がられてもめげない鋼のメンタルを獲得できるが、何年もやる仕事ではない。実際にやっていたからわかる(管理者まで経験済みだ)。ろくでもない仕事だから、いつでも切り捨てられる業務委託での募集がかかっている。いつでも使い捨てられるマンパワーが欲しいと、隠そうともしていない下品な求人が幅を利かせている。その分、下品にまとまった額の金を稼げるポテンシャルもあるから、リスクを理解できるなら一概に否定できるものでもないが、今の自分が求めている要件にはとことん合わない。瞬間最大風速ではなく、長期に安定した土台作りが課題だ。

横道に逸れるが、同じコールセンターでも受電(インバウンド)と架電(アウトバウンド)があり、ほかのセンターでも使えるスキルが身につくのは受電系のセンターだ。受電業務は難易度も高いが、お客様のお問い合わせに対して論理的に解決を導く力や、業務ツールの使いこなし、社内での色々なワークフローへの対応といったスキルは、ほかのセンターに転職や転籍をした時にも応用が利く。対してアウトバウンドは、苦情に対する忍耐力や、無知な消費者をだますトークスキルは身につくが、正直1、2週間もあれば勘のいい人ならばコツがつかめる程度の浅い領域のスキルしか習熟できない。この先、長い目で活用できるスキルや経験は、圧倒的に受電系のセンターで身に着けることができることだけは、ここで主張しておく。

稼ぎたい・稼がなければ、という気持ちと、人生の貴重な時間をこんなことに投入したくないという気持ちが、天秤の左右で振れている。

また業務委託で募集をかけている会社は、怪しい雰囲気の会社をちらほら見かけることもある。応募してみると、「今回はもう募集を打ち切っていますが、別のビジネスを紹介したいのです」と持ち掛けられ、なぜかいきなりLINEの友達登録を促される。

なんだか怪しいとネットで調べてみると、典型的な詐欺の手法らしい。「新しいビジネスを始めるには…」と高額な登録料やセミナー受講料を支払わせるアレな感じでダメなやつだ。

この副業探しも1、2か月継続しているが、残念ながらろくな成果は上がっていない。極まれに良い仕事だな、と思えるものが見つかることもあるが、悉くお祈りされて終わる。ここ数か月で、私の生命は随分と祝福のエネルギーを浴びているからまんざら無駄でもないのだろう。

冷静に状況を俯瞰すれば

いっそ会社に内緒で、近所のコンビニやスーパーでアルバイトでもしようかと甘い誘惑にかられる。ずっっっと求人が出続けているから、履歴書を持っていけば即採用になるような気がする。

社会保険の加入条件を満たさないようにして、年末調整も自分でやるようにすれば、そうそうばれないのではないかと思われる。

しかし、ばれたときは下手すると本業まで失職するリスクは冒せないと思いとどまる。今回、縁があったコールセンターは、間違いなく世界でもトップレベルの規模のセンターで、コールセンター歴が長い自分でも驚きと発見があり面白いのだ。「なるほど、最先端のセンターはここまで来ているのか」と己の好奇心が刺激されるのが楽しい。

40代ともなると、仕事に限らず、“驚くことができる”という体験が非常に貴重で価値を持つことを痛感している。サラリーマンとして長年勤めあげたおじさんが、急に蕎麦打ちに目覚める心境というのがよくわかるようになった。新鮮な感動を求めて、ボールペンを投げ捨てて、蕎麦打ち棒を握りしめるのだ。

いつも環境を整えては、人間関係のトラブルでガタガタになることの繰り返しだ。大学を出て社会に出てから20と数年。スクラップ&ビルドと言えば聞こえは良いが、スクラップのターンが多すぎて、いつも人生焼け野原。

だが、ひとまず本業の目途は立ち、課題は副業探しというところまではこぎ着けた。

ところで最大効率の副業は残業である、という格言もある。実は今の会社も時々残業可能な人を募集しているのを見かける。一定のトレーニング期間が終われば、私もこれに手を上げて残業ができるらしい。トレーニング期間はあと2か月ちょっと。タイミングや運も絡むが、フルタイムのシフト帯のチームに転籍する道もなくはないらしい。

少し我慢すれば、そういう選択肢も見えてくるから、今は焦りすぎず、ゆっくり、でも着実に日々をこなしていく所存。左団扇で暮らす余裕があるわけではないが、冷静に俯瞰すれば、それほど不利な状況というわけでもないからだ。


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