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2023年 面白かった映画TOP 5

2023年は映画館で50本ほどの映画を鑑賞することができました!
その中から面白かった映画TOP 5 を記録しておきたいと思います。

5位 オッペンハイマー(仮)

色々と物議を醸してしまった映画ですね。バーベンハイマーとか日本で上映しない問題とか(結局2024年の上映が決まりました…)色々とありましたが、とにかくノーランファンとしては見たくて仕方なく、ついにマカオへ飛んで字幕上映版を鑑賞してしまいました。

なんとなくノーランの映画ってセリフより映像で語るようなイメージがあったし、マカオということは漢字字幕がつくということで、漢字なら読めるだろう!という自信から鑑賞してしまいました。

実際、映画が始まる前のディズニーのウィッシュとかは英語音声+漢字字幕でなんとなく内容が理解できた気がしたし全然いける!と思っていたのですが実際は…ほとんど解読できませんでした…。

事前にオッペンハイマーの伝記まで購入して予習していたんですが、とにかくこれまでにないぐらい台詞が多かったんですよね。結構長い映画だったのですが、映画の最初から終わりまで基本ずーっと音楽と台詞が続いています。

普通の映画なら冒頭に盛り上がるシーンを入れて、そのあとは音楽とか台詞の情報量も落ち着かせて…そこからまた中盤盛り上がっていき…みたいなリズム感で進行していくと思いますが、オッペンハイマーは最初からロバート・オッペンハイマー博士の物語がフルスロットルで進んでいく感じです。

とにかく台詞の量とBGM鳴りっぱなしが凄いんですよね。とにかく大量の情報で映画が埋め尽くされています。ロバート・オッペンハイマー博士の脳内ってこんな感じだったのかな〜とか思いながら鑑賞することになります。これは原子爆弾開発の映画ではなくてオッペンハイマーという一人の科学者、人間の物語なんですよね。

映画中盤の世界初の核実験のシーンは逆にほとんどの音が無くなってとても印象的。普通の感覚なら絶対に入るであろう核爆発のドカーンみたいな下品な効果音は無く、爆風と人物の衣擦れとか呼吸音だけが響いています。おそらくこのシーンを立たせるために、ずっと音をパンパンに詰め込んでいたのか。

オッペンハイマーの人生も原子爆弾開発をきっかけに変わっていきます。原子爆弾はアメリカにとっては、終わりの見えない戦争を終わらせてくれたヒーローのような存在でした。当然、開発に成功したオッペンハイマーは拍手喝采を浴びるわけですが、その歓声が少しずつ阿鼻叫喚、呻き声や叫び声に変わっていく演出はドキっとして良かったですね。足元には黒焦げになった死体。オッペンハイマーは核爆発によって人々がどれぐらい苦しい目に遭うのか知りませんでした。

映画のなかで原子爆弾を落とされた日本の様子は一切出てきません。このことは批判されたポイントでもあるのですが、一方でオッペンハイマー自身の原爆に対する情報量を反映させているのではないかとも思いました。オッペンハイマーは実際に被爆地を訪れたわけでもないし、原子爆弾の開発を悔悟したかも分からない。後に原子爆弾による被害を知って苦悩することになるのですが、一方で積極的に知ろうともしなかったことを反映させている感じがします。

「原爆の父」として歴史に名を残してしまったオッペンハイマーですが、戦争という環境が無ければ生まれることがなかった爆弾でもあります。オッペンハイマーは死神でもなんでもない、戦争における登場人物の一人に過ぎないと思います。

無理してマカオまで映画を見に行きましたが、結局2024年に日本でも公開されることが決まりました!ようやくちゃんとしたストーリーを理解できそうです。頼むからIMAXシアターで上映されてください!!

オッペンハイマーの公開を願いすぎていた時のnote

4位 BLUE GIANT

これはもうとにかくサウンドトラックが素晴らしいです!!!

映画の尺も2時間でちょうど良いし、物語は王道そのもの。
とにかく映画館で見るにはこれ以上ないド直球な娯楽映画だったな〜と思います。映画を見た会社の先輩は「BLUE GIANTはさぁ、"某監督"の作品に比べてチャラくないんだよ!!チャラチャラしてるそこらの映画とは違うんだ!!」と吠えていたのですが、まさしくそういう感じで、実直なストーリーになっています。

ただ正直……演奏シーンのCG作画はどうしても慣れなかったんですけど、それでも映画全体としてはもう文句のつけようがないエンタメです。

原作漫画では「絵から音が聞こえる」と言われるような素晴らしい作画だったわけですが、映画は実際に音がスピーカーから聞こえちゃうわけだからそれほど特別に感じられません。だからBLUE GIANTはCG作画と手描き作画を組み合わせて、楽器や人間そのものから音が飛び出す感じをアニメーションで表現していました。そうした演出で彩られた演奏シーンは本当に素晴らしいんですけど、その分平場のCG演奏シーンがやっぱり厳しく見えてしまいますね…。特にピアニストの沢辺が初登場するシーンはヌルヌル動くタコみたいなCGでじわじわきてしまいました。ピアノを弾く作画って一番難しそうですよね。まぁどの楽器の作画も難しいと思いますが、ちゃんと作画するなら楽譜通りの鍵盤の位置に指を置かないといけないし、それは手描きでもCGでもとてつもなく大変なことだったと思います。手元を映さないとか、もっと引きのショットにするとか、誤魔化す方法はいくらでもあったと思いますが、それでもちゃんと作画されていたのは素晴らしかったと思います。

ごちゃごちゃと文句を言ってしまいましたが、とにかくこれは些細なことで、映画のクライマックスは超かっこいい楽曲と相まって最高の盛り上がりになっています。観賞後は通勤やドライブでサントラを聴いちゃうこと間違いない映画です。

3位 キャメラを持った男たち

NHKの映像の世紀とかを見ていると、映し出されている歴史的事象もさることながら、同じぐらい映像を撮影した人間についてずっと気になっていたんですよね。

例えば戦争の空襲の様子の映像とか、炎上している建物のすぐそばで撮影していたりする。空襲の生々しい映像も凄いけれど、そこで撮影してる人も考えてみたらとんでもなく凄いですよね。どう考えても一目散に逃げ出したくなるような状況で、どうして重くて扱いづらい当時のカメラを持ち出してまで撮影に臨んでいたのか、その答えがこの映画にはありました。

キャメラを持った男たちで描かれるのは関東大震災を撮影した人々です。関東大震災が発生した9月ぐらいになると当時の火災の様子などをとらえた映像がニュースでも流れたりしますが、正しいクレジットがないことがほどんどです。それは撮影した素材がニュース映画などにまとめられて、さらにそのニュース映画の映像を切り抜いた別のニュース映画が制作されたりして情報が散逸してしまったからだそうです。

この映画では散逸した情報を精査し、3人のカメラマンを特定することに成功しています。関東大震災の記録映像の撮影者が初めて正しく明らかになりました。

地震が起きた1923年当時、フィルムは可燃性が高くて、火の気があるとすぐに燃えてしまったそうです。ニューシネマパラダイスでも描かれているやつですね。関東大震災は地震そのものよりも、そのあとに起きた大火災の方が圧倒的に被害が大きかった災害でした。あたりが火の海になるなかで、ガソリンが入った箱を手に持ちながら撮影していたようなもの。実際、勇敢にもカメラを持って撮影に飛び出した人のうち何人かは帰らぬ人になってしまったそうです。

さらに誰もが必死に逃げ惑うなか撮影を行なっているカメラマンに対して罵声が浴びせられることもあったようです。これは空襲後の焼死体を撮影し続けた写真家と同じですね。どんなに危険で不謹慎だとしても、この光景を後世に残したいと思ったのかもしれない。

考えたこともなかったのですが、映像の撮影場所についても特定が試みられています。関東大震災と東京大空襲によって東京はほとんど過去の面影を失っているため、記録映像を見ても場所なんて分かるはずがないと思っていたんですが、このドキュメンタリー映画ではちゃんと映像を解析して、撮影者、撮影場所、撮影した順番まで完璧に解明できた記録映像もありました。

「東京市火災動態地図」
東京都立中央図書館のPDより

全然知らなかったのですが、こういう詳細な火災記録図も残されているんですよね。火元とそこから延焼した区域、方向、時間が詳細に記録されています。こうした情報が残されていたからこそ、撮影者と撮影場所を特定できたんですよね。

この映画を見て「撮影者が分かったから何なの?」という感想を持つ方もいると思いますが、これがきっかけでこの時代について調べたりするのも面白いですし、記録を残す映画というメディアにとってはとても相応しいドキュメンタリーだったのではないかと思います。

2位 コンパートメントNo.6

ドライブマイカーという映画がありましたが、あれは車サウンド映画だったなぁと思います。映画館で存分に自動車の音を聴きながら旅情に浸る映画でした。

一方でコンパートメントNo.6という映画は大変優れた鉄道サウンド映画。かなり丁寧に音ロケをしたんだろうなと分かる生々しい鉄道サウンドに包まれます。列車の連結部のガシャン…という重くて冷たい音が響いたりするわけです。

これが本当に素晴らしい!寝台列車に乗ったことがある人なら分かると思いますが、特に安い寝台だとレールからの振動とか列車の揺れみたいなものが身体にバシバシ伝わってきたりします。寝台列車って重いんですよね。自由に動き回れる船とか飛行機とか自動車と違って、鉄道は硬くて冷たくて動きようのないレールに縛られていて、列車はどっしりとした鉄の重さがある。旅をしている人間にとって寝台列車は圧倒的で身を任せる他ない存在に思えたりします。これを表現するのに音の情報はかなり重要になってくるので、この映画は音が良いだけでもうすでに傑作になってしまうわけです。

この映画を見ていると、旅の目的地に答えがあるんじゃなくて、目的地に到着するまでの時間に全てがあるのかもしれないと思ってしまいますね。主人公はペトログリフという古代の岩面彫刻が見たくて旅をするわけですが、結局たどり着いた先でペトログリフは一度も出てきません。それは旅をするなかで主人公の中で何かが変わったからですよね。

なかなか変えられない日常から抜け出したくて、決まっている筋書きから少しでも離れたくて重くて冷たくて融通の効かない寝台列車に乗り込むみたいな話。何かを変えたくて旅をしたわけじゃないけど、気が付いたら何かが変わっていたみたいな、旅にはそういうマジックがありますが、この映画にも同じような魔法があります。

主題歌 Voyage voyage 旅に出る時に聞いちゃいます。

1位 フォール

2023年で最も面白かった映画はフォールです!

単純明快。この予告編のサムネイルだけで伝わってくる物語。こういう映画が一番好きだからコンパートメントNo.6が2位になるのも仕方ないですよね…。

どうして人は高いところに登りたがるのだろうか。例えば東京スカイツリーへ行ったのに麓にあるショッピングモールだけ楽しんで帰ったら、それは東京スカイツリーへ行ったことにならなさそうですよね。やっぱり高さ450mにある展望台・天空回廊まで登ってこそ、東京スカイツリーに行ったということになりますよね。

都心の超高層ビルも「高ければ高いほど偉いのだ」と言わんばかりにより高さのあるビルの建設が続いています。まさに欲望そのもの。最近では新しくできた超高層ビルが古い超高層ビルを"喰っている"とも言われています。

このフォールに出てくる高さ600mの電波塔は、まさに余計なものを完全に削ぎ落としたソリッドな超高層建築物と言えます。お金を生み出すためのオフィスやホテルもなく、展望台があるわけでもない。ただ600mという高さだけに価値があるような建築物です。

電波塔は塔をよじ登ろうとする愚かな欲望に塗れた人間を差別することはありません。振り落とすわけでも、助けることもない。ただ1本のハシゴと600mの躯体のみが存在しているだけです。その塔に登る主人公たちの運命は、すべて彼女たちの行動次第というわけです。

こんなにカッコ良く面白く恐ろしく、そして何より美しく人生を描いた映画はなかなか無いのではないかと思ったりします。もちろん、単純に極上のハラハラを楽しめるエンターテイメントでもある。映画の結末もちゃんと筋を通していて納得しかない。こんなにシンプルで力強い映画に出会うことができて幸せでした。ちなみに撮影は山の頂上に小さな塔を設置して行なっており、カメラに映る広大な景色はCGではなく、本当に高さ600mから撮影したものになっているそうです。

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年の瀬に…

今年はたしか5月ぐらいに「今年見た全ての映画の感想記事を書く!!」と高らかに宣言したのに結局記事を書けたのは5作品ぐらいでした。結局見てすぐ書かないとダメなんですよね…来年こそは実現できるよう頑張りたいと思います!!今年もありがとうございました。

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