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八村塁のディフェンスから読み解くNBAのスタッツ(統計)

コロナウイルスの影響でNBAが中断となっているが、僕個人としては過去の試合を見返して、さも今日行われた試合を観るように楽しめているので、意外にも毎日がいつもと同じように楽しい。
いずれにしても早く終息する事を願うばかりである。


先日テレビを見ていたら
八村塁のプレイが解説されていたのだが
「課題だったディフェンスが改善されてきた」
という内容で彼のディフェンスを紹介していたのだが、僕はそれを見ながら
「改善もなにも、彼は以前からディフェンスも良いぞ」
と思ったのである。

実はこれまでにもNBAバスケに通じている
一部の人達にディフェンス力が問題
という事は言われてきた。
そういう話に触れるにつけ僕は、彼のディフェンスの何が悪いのか?と疑問に思わざるを得なかった。

しかし、僕は彼らに比べてバスケやNBAに関する知識も経験も少ない訳で、彼らのその言説を基本的には信じているのだが、この点に関して、彼らと素人の僕とでは、一体、何が違って見えているのだろうか。

それが今回僕がこの動画を作った理由だ。

そう、結論から言えば、八村のディフェンスに関して、僕は彼らと違う見方をしてます。
八村塁のディフェンスは優秀。それもエースキラーになれるほどの可能性を持っていると思っている。その点では渡邊雄太を遥かに凌駕するディフェンス力を発揮できる潜在能力があると思っている。

八村は大学時代からカワイ・レナードと比較されてきたらしいが、将来的にカワイのライバルとなってもおかしくない。それを感じさせるものを持っている。
動画中のウィザーズの試合は全てシーズン序盤のものである。序盤だからこそ相手のエンジンがかかっていない状態だった、と言うことも出来るが、それは八村も同じである。まして彼はルーキーである。
ちなみにスタッツ(統計)で見てみると、八村のディフェンス力は最悪である。

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DEFRTG 117.8 とある。
これはディフェンスレーティングという数値で、100回攻撃された時の平均失点を表す。ちなみに動画中でディフェンスのスペシャリストとして紹介したPJ・タッカーとR・コビントンはそれぞれ109.2と109.8である。八村よりも良いのは当然としても、さほど良いように思えない数値である。これには理由がある。

これは今シーズンの個人のディフェンスレーティングのトップ10である↓

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八村の数値との違いを見ればその差は歴然である。この数値がそのまま彼らのディフェンス力を示すとなれば、八村のディフェンスはザルと言ってよく、ディフェンスが課題どころかお話にもならない程のダメさ加減である。だが実際にはそうはならない。

何故か?

実はこの数値の算出方法は所属チームのディフェンスレーティングを元に算出しているのである。つまり所属チームのディフェンス力によって大きく左右されるのだ。
では、八村所属のワシントン・ウィザーズのディフェンスレーティングを見てみよう。

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30チーム中最下位です。
つまり、チームディフェンスが最悪のウィザーズに在籍している限りどんなに素晴らしいディフェンスをしても個人スタッツは上がらないのである。
個人ディフェンスレーティングのトップ10中7人がミルウォーキー・バックスの選手になっているのも、バックスのチームディフェンスレーティングがダントツでトップなのが原因と言っていい。もちろん選手個々のディフェンス力が高い為に、チームディフェンスレーティングが良くなっているのは間違いないが、個々のディフェンス力の完全な指標として見るには不十分であり、様々な要素を考慮に入れないとその本質を見誤る可能性がある。

つまり先ほど挙げたディフェンスのスペシャリストのPJ・タッカーとR・コビントンの数値もチームディフェンスレーティングに影響されているのである。ここには載ってないが、参考までに2人の所属するヒューストン・ロケッツの数値を見てみると109.9で30チーム中16位である。大体チームのレーティングと個人のレーティングが同じ位になっている。
ちなみにコビントンは一昨年ではあるがNBAオールディフェンシブ1stチームに選出された程の選手であり、タッカーは選出こそされていないものの常にその名が候補に挙がる選手である。
NBAオールディフェンシブチームとは、その名の通り優秀なディフェンス能力を持つ選手が選出され、1stチームと2ndチームとで計10名で選ばれる。つまりコビントンはNBAで最もディフェンスの優れる5名の内の1人なのである。受賞したのは一昨年の話ではあるが、そのコビントンがディフェンスレーティングのトップ10はおろかトップ100にすら入れない数値なのである。それだけ見ても個人のディフェンスレーティングが如何に実際のディフェンス力とかけ離れているかが分かるだろう。

そして、八村の対カワイ・レナードのマッチアップもスタッツとして見られるが、これも数値だけ見れば完全にカワイに完敗しているのだが、実際に観た印象はそうではない。カワイがスクリーンをかけてスイッチさせようとしている場面もあり、明らかに八村のディフェンスを警戒していたのが分かる。もちろんその時のコート上の他の選手と比較しての判断であり、その時々で状況は変わるだろうが、少なくともウィザーズにおいてはカワイと対等に渡り合えた数少ない選手の内の1人であったのは間違い無い。それはその後のシクサーズ戦やヒート戦を見ても明らかである。特にシクサーズ戦におけるJ・エンビードとのマッチアップは見ものだった。その辺も動画にしているのでぜひ見て欲しい。

ディフェンスに関して言えば改善すべきなのはウィザーズというチームのディフェンスである。それはシーズンの序盤からずっと変わらない。動画を見て貰えば明らかなように八村は序盤から素晴らしいディフェンスをしている。
八村のチームディフェンスへの連携が良くないという意見も聞かれるが、そもそも最悪のチームディフェンスが問題なのであって、それをルーキーである彼のディフェンスの問題にするのは間違っている。


ルーキーなのだから課題は沢山あるだろう。
それは八村自身が1番よく分かっているはずだ。そして、それは渡邊雄太や馬場雄大にも通ずるものだ。色々と言いたくなるのも分かるが、良いものは良いと素直に褒めれば良い。冒頭に挙げたようなTV番組での解説などは、もっともらしい事を言いたい玄人気取りがほざいているだけだ。


さて、僕がここで書き連ねてきた事も、玄人気取りの浅見な批評だろうか。

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