いとおかし、いとおかし13 説教
今回は、まずまるまる「説教台本」から。〽は節かけ記号
春彼岸会説教
讃題)
「縦令一生造悪の 衆生引接のためにとて
称我名字と願じつつ 若不生者とちかひたり」
序弁―彼岸のいわれ)
いただきましたご讃題は、親鸞聖人ご製作のご和讃。さきほどお経があがりましたが、私どもがいただくお経は、漢訳経典、中国語でございます。そのままでは、珍文漢文(ちんぷんかんぷん)。そこで、聖人はそれをやわらかくしてくださったで和讃。やわらぎほめ、というわけです。
それでもわたしたちはわかっているようでわかっておりません。この「彼岸」というのもそうです。こんな話がある。
譬喩1)ヒガンはなに?
「こんちは。」
「なんや御前か。こんな朝からくるとは珍しい。さては借金のたのみか。」
「いやそやない。あのな今日は話があてきたんや。あんた日頃から何でも知ってるて言うてなはるけど、ほんまか。」
「まあ世間並の常識は一通り知ってるつもりやが。」
「けどヒガンは知らんでしょ。」
「そんなもん知ってるわい。」
「あはあ、また知ったかぶりして。教えであげまひょ。あのね最近、カラスがゴミをあさりにくるでしょ。今朝もゴミだししたら、ばたばたばたとカラスが飛んできてね。ゴミ袋をつつくから、こらーちゅうたら、電線に飛び上がってあほーちゅうてなくねん。」
「おお、カラスもようしってるやないか。」
「てんごいいなはんな。でね、こらカラス、人のことばかにしたら承知せんぞ、といううてやった。ほんなら憎たらしいカラスめが、ふんというような態度であほーあほーあほーと三回もいいよって、ぼたぼたぼたと頭にフンをしよったんで。頭きたさかいに、そこにあった石を3つ4つ拾うて、一つなげたったらカラスの足にごつんとあたりよったさかい、カラスがおこっって、何すんねんこのおっさんと。」
「言うたんかい、カラスが!?」
「といいようにギャーとないたと思うたら、ばさばさばさと襲い掛かってきた。そこでもう二つ三つ石なげたったら頭にあたってことんとカラスが落ちた。ほんでうちの心張り棒にぎって、やっつけたろうとふりかざしたら、隣の婆がとんででてきて、『何をすんねん。あんた彼岸やのにーて、エライ権幕で叱られたん。あんた彼岸、てカラスのことやったんや。知ってた?」
「知るか。違うがな。それはな、彼には殺生するな。生物の命をうばうなよというお釈迦様の教えをいうたんじゃ。それをカラスとは、ほんまのアホーじゃ!」
「ああ、あんたもカラスやったんか。」
まあばかばかしい落とし噺でありますが、殺生をしちゃならんというのが、まさにこの彼岸会。この春秋の彼岸には、お釈迦様の御説教をお聴聞して、成仏道を歩む御縁とさせていただくのが本来であります。
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