【エッセイ】はじめて過呼吸になった夜。
小学生の頃から、「息苦しい」と感じることがあった。
喉の中が急に締まって、息を吸うのが苦しくなるような……そんな感覚だった。
緊張している時やすこし心が辛い時、この息苦しさは喉元に現れた。
だから、頭の悪いわたしは「そういう体質なのかな」なんて、漠然と捉えていたのだけれど。
(――“コレ”が体質って、死んじゃうって)
四月十五日。夜。お風呂上りの、洗面所にて。
下着姿で地面に倒れ込みながらわたしは、がたがた震えた。
腕が震える。指の末端は感覚が薄く、痺れだけが鈍く肌に刺激を与えた。
体を伝う振動が、空気の音に変換されてわたしの耳へと届く。
は、っは、は、っは、は、は、は、ひ、ひ、ふ、ふ、ふ……。
しばらくして、この耳障りな空気の音はわたしの口から漏れていることに気が付いた。
それに気が付いた瞬間、さらに喉が閉まった気がした。
心臓が不自然な動きをする。心臓の中に満ちているはずの血液がなぜか冷たくて、鼓動を感じるたびに体全体がひやりとした。
いよいよ目の前が白黒にチカチカしてきたタイミングで、わたしはようやく事態が飲み込めた。
【過呼吸】。
目の前が白と黒でパチパチ火花をあげるのを見ながら、わたしの頭は学生の頃保健の授業で習った単語を思い浮かべていた。
***
そこが一番根本的な問題だろうと思われるかもしれないけれど、過呼吸になった原因についてはザックリバッサリ省略させていただく。
ずいぶん長くなるし、暗くなるし、あと現在進行形の話だからオチがない。
ただ、少しばかり添えておくならば。
わたしは風呂場で呼吸が落ち着いた後、フラフラと着替えて自室に戻り、その数分後に自室でも過呼吸を引き起こした。今まで我慢していた分が爆発したかのように、どうしても止めることができず、落ち着くこともできなかった。
それではわたしがこんな状態の時家に誰もいなかったのかと言われればそうではなく、バイト帰りの姉がいたのだけれど、わたしの息の不自然な音を聞いているはずなのに、わたしの為にピクリとも動くことはなかった。
母が家に帰ってきたのが深夜。母が帰ってきてようやく落ち着き、眠りに着けた。
――上の文章はあくまで我が家の一部分の状況を切り取ったものであるけれど、このダラダラと長い数行を読むだけでも分かると思う。
細かい事を書き出すと、ただただ長くて退屈なだけなのだ。
だからわたしは、その後見た夢について、ダラダラ書こうと思う。夢の方がまだオチがあるのだ。
夢の中でわたしは、とにかく多くのことを非難されていた。
夢には大きなパソコンが出て来て、そこに家族の顔が映し出されていた。
そして家族が、わたしの事を「お前は傲慢だ」「お前が全部悪い」「お前が全てをややこしくしているんだ」と強い口調で言ってきた。
学生時代のあれこれや、人間関係、今の現状にいたるまで、わたしの全てを、家族は声高に否定していた。
あんまり強い口調で言うものだから、夢の中のはずなのに頭に響いて苦しかった。
――お前が悪い。
――お前が悪い。
――お前が悪い。
――お前が悪い。
――お前が……。
頭に響く声が本当にしんどくて、夢の中のわたしは頭を掻きむしりながら散々に泣き叫んだ。
そして、その夢のわたしの叫び声に耳を打たれて、現実のわたしは目を覚ました。
お気に入りの毛布に包まれながら、わたしはぼんやり天井を見上げて少し考える。
(ひょっとしなくても、わたしちょっとヤバいなあ)
もぞもぞ起き上がりながら、わたしはもそもそ呟いた。
***
そんなわけで、わたしは今このエッセイをパソコンで書いている訳である。
どういうわけで、と思われるかもしれないが、それも仕方がない。
この文章たちは自分の心を整理する為に書いたものなので、読み手にまで気を回せていないと思う。文章が普段以上に拙く見えるのも、今の自分の動揺が現れた結果なのだろう。
こんなヘンテコな文章をわざわざ周囲に公開していいものかとも思うものの、やっぱりわたしは誰かに聞いて欲しいのだろう。
知り合いにスラスラ言える話ではないだけに、どうしても聞いて欲しいと思ってしまうのだ。
とりあえず、今この瞬間はちゃんと息ができているということを書いて終えておく。
呼吸ができるって、本当に幸せなことだと思います(*^-^*)
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