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空を見上げたくなるお菓子「琥珀糖 SORA AI」はこうして生まれた 【フードデザイナー・Aiさん×和菓子職人・金谷さん対談】

食や暮らしをメインにした、Nazunaの公式オンラインストア「Ossekai」


全国の方々にNazunaの「心を込めたおせっかい」をお届けするために立ち上がったこちらのサイトでは、ある和菓子を扱っています。

琥珀糖 SORA AI

フードデザイナーAi Horikawaさんと、京菓子職人の金谷 亘/かなや わたるさんがコラボレーションして開発した、Osekkaiオリジナルの琥珀糖。

時間によって移り変わる空模様を、日本の伝統的和菓子「琥珀糖」で表現しています。

5:00:夜明け、優しく空が白んでいく様子
9:00:早朝、澄んだ青空に柔らかな雲が浮かぶ様子
18:00:夕暮れ時、陽が沈んでゆっくりと闇に溶けていく様子
23:00:夜中、天の川がかかる夜空(or深い藍色の空)に星が瞬く様子

外はシャリっと、中はゼリーのように柔らかく、食感の違いも楽しいお菓子です。

今回は、この「琥珀糖 SORA AI」を開発したフードデザイナーAi Horikawaさんと京菓子職人の金谷亘さんのおふたりに、お話をうかがいました。

Nazunaでの宿泊体験をもとに生まれた「琥珀糖 SORA AI」


ーー金谷さんは京都の老舗和菓子屋をされていますね。

金谷:西陣にある安政 3 年創業「京菓子司 金谷正廣」の 6代目を務めています。

ーーAiさんはフードデザイナーとして活躍されています。

Ai:私はもともと、TASTEMADEというフードメディアの会社に勤めていました。2021年9月に独立して、いまはフードデザイナーとして活動しています。

ーーそれぞれ違ったご経歴を持つおふたりですが、なぜ共同で「琥珀糖 SORA AI」を開発することになったのでしょうか?

金谷:お店の近くに「Nazuna 京都 御所」というお宿があるんですが、そこが和菓子をテーマにした旅館なんですね。

和菓子をモチーフにした客室が楽しめる「Nazuna 京都 御所」

金谷:それで、せっかく和菓子をコンセプトにしているなら、ぜひうちの和菓子を使ってくださいとNazunaに連絡したんです。そのご縁で、今回関わらせていただくことになりました。

Ai:私は、もともとSNSでお菓子の発信をしていた縁で、Nazunaさんと知り合いました。そこで「新しいチャレンジをされている京和菓子の方がいるよ」と紹介されたのが金谷さんです。

ーー素敵な出会いですね。「琥珀糖 SORA AI」は「時間によって移り変わる空模様」をコンセプトにしたお菓子ですが、どうやってこのコンセプトを決めていったのでしょうか?

Ai:琥珀糖は、宝石のようにきれいな色が出せるお菓子なんです。コンセプトを考えるにあたって、その「色」に、少しアーティスティックな要素を足せるといいなと思っていました。

実際にコンセプトを思いついたのは、Nazunaに泊まらせていただいたときです。

私はもともと空を見上げるのが好きなんですけど、Nazunaから見える空の色を見て「時間や季節ごとに違う空の色を表現できたらいいな」と思いました。

フードデザイナーのAi Horikawaさん

ーーNazunaでの体験が「空」というコンセプトに繋がっているんですね。金谷さんは最初にコンセプトを聞いたとき、どう感じましたか?

金谷:「京都らしいもの」というと、やっぱり京都タワーのようなランドマークや、四季を取り上げることが多いんですよ。

でも、Aiさんのアイデアはそうではなくて、京都の「空」というところをわざわざ切り取っていますよね。地元の人にはなかなか思いつかないコンセプトで、すごくいいなと思いました。

Ai:金谷さんは、金谷さんは和菓子の伝統を大事にしながらも、このコンセプトに寄り添ってすごく柔軟に対応してくださり、すごく心強かったです。

たくさんの試作を重ねて生まれた、天然ものの「色」


ーー「琥珀糖 SORA AI」をどうやって作っていったのかをお伺いしたいです。

金谷:琥珀糖は作るのに時間がかかるお菓子なんです。乾燥するのに3日ほどかかるので、けっこう時間をかけて試作をしていきました。

Ai:1回試作するだけでかなりの量ができるんですよね。

金谷:そうなんですよ。フレーバーやサイズなどを試して、合計11回ほどは試作したと思います。

制作の様子

ーーたくさんの試作を重ねて出来上がったのが今の形なんですね。特にこだわったポイントはどこですか?

Ai:「色」ですね。できるだけ天然のものを使いたかったんですが、思うように色が出せないものもあって。少し入れるだけで劇的に色が変わる材料などもありました。

金谷:逆に、そうやってわざと混ぜて、色を変えているものもありますね。これまであまり色を操ってお菓子を作ることがなかったので、やっていておもしろかったです。

京和菓子職人の金谷亘さん

Ai:人工の着色料を使うと、簡単に思い通りの色を出せるんですよね。でも「琥珀糖 SORA AI」では、できるだけ体にいいものを使いたいと思っていたので、天然ものにこだわりました。

金谷:Aiさんが「天然ものを使いたい」と言ってくれたのは嬉しかったですね。「体にいいものを使いたい」という僕たちの感覚を、最初から持ってくれているんだなと思いました。

ーーおふたりが特に気に入っている色のものはありますか?

金谷:僕は朝の「5:00」が好きですね。淡くてきれいだなと思います。

「琥珀糖 SORA AI」朝5:00

Ai:私は夜の「23:00」が好きです。夜の空って、真っ黒に見えて意外と青色や紫色が混じっているんですよね。その色合いがよく出ていると思います。

「琥珀糖 SORA AI」夜23:00

「琥珀糖 SORA AI」が空を見上げるきっかけになって欲しい

ーー味についてもお聞きしたいです。

Ai:企画のときは少し不安だったんですけど、金谷さんのおかげで本当に「おいしい」と思える味になりました。

金谷:ぜんぶ味が違うんですよね。「これは何味かな」と思いながら食べてもらうと楽しいと思います。

Ai:量もこだわりポイントですね。琥珀糖は甘みが強いので大きすぎず、でも満足感も出るように小さすぎないちょうどいいサイズになるように調整していきました。

ーー小窓がついた美しいパッケージも印象的です。

Ai:部屋の中から空をながめているような雰囲気を出せたら、と思って作りました。パッケージの色がそれぞれ違うんですが、それも着色ではなく、紙の風合いで色の差を出しています。

金谷:パッケージについては、「お菓子を並べてグラデーションで表現する」というのが珍しくて気に入っています。全体的に洗練されているので、持ち歩いていてもかわいいと思います。

ーー最後になりますが、「琥珀糖 SORA AI」が今後どんな風に広がっていってほしいですか?

金谷:京都のおみやげにしてもらえたら嬉しいです。もし来られない方も、(「琥珀糖 SORA AI」を通して)京都に行きたいと思ってくれたらいいなと思います。

Ai:スマホ社会で下を向きがちですが、このお菓子が空を見上げるきっかけになったらいいなと思います。大切な人のことを思いながら、どの空合いがいいか選ぶ楽しさも感じていただければ嬉しいです。

ーー本日はありがとうございました。


プロフィール

<Ai Horikawa/フードデザイナー>

フードデザイナー。学生時代に美大でグラフィックデザインを学ぶ傍ら、お菓子の写真をメインにSNSで発信を始める。ライフスタイルメディアでクリエイティブディレクターを勤めたのち、2021年に独立。株式会社Vailを設立し、フードスタイリングや撮影、商品プロデュースなどを主に行なっている。その他、旅メディアの運用やインテリアデザインなども。

Instagram:https://www.instagram.com/ai_mogmog/

Twitter : https://twitter.com/ai_mogmog


<金谷亘/和菓子職人>

京菓子司 金谷正廣 6代目。代々伝わる【京菓子】を守りながら、新しい物作りに挑戦している。京都市京セラ美術館での【日本画和菓子】、世界のスパイスやドライフルーツと日本の古い製法を掛け合わせたお菓子の制作、異業種の職人達とコラボレーションした[Hasuha]のキュレーションや[flat plate Kyoto]の立ち上げ等、活動は多岐に渡る活動を展開している。

HP : http://shinseimame.com/wk/index.html

Instagram: https://www.instagram.com/wagashi_kyoto_kanayamasahiro/


Nazunaとは

「Nazuna」及び「季楽(きらく)」ブランドで、町家をリノベーションした高級旅館・高級一棟貸し宿を運営しています。

ミシュランガイド京都・大阪の3パビリオンを獲得している「Nazuna 京都 二条城」、2018年の日本経済新聞「専門家が選ぶ全国古民家町屋ランキング」で8位を受賞した「季楽 京都 姉小路」など、伝統的でありながらも独創的な宿を展開しています。


取材&ライター:まいしろ
エンタメ分析家。なんでもないことを真剣に調べてみる記事をたくさん書いてます。デイリーポータルZ、Yahoo!個人などで書いてます。
Twitter:https://twitter.com/_maishilo_ note:https://note.com/maishilo


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