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ビジョンなんていらない

こんにちは

謎の診断士です。

(今回はちょっと毛色が違います。そして長いです。)

中小企業診断士として、企業の事業計画書を作成する機会が多くあり、その度に社長さんにヒアリングをするのですが。

皆さん「こんなことをやりたい!」とか「もっとこうしたい!」というような強い意志を持っていらっしゃいます。

そんな話を聞くたびに、私は「すごいな~」と、少しうらやましい気持ちになるんです。

というのも、私自身にはあまり、「将来こうなりたい」とか「いつまでにこれを実現するんだ」という明確なビジョンが無いのです。

昔からそうでした。

何度か転職も経験していますが、「あなたはどうしたいの?」とか「3年後にはどうなっていたい?」みたいなことを上司から聞かれることがあったのですが、私はいつも言葉を詰まらせてしまうのです。

結局、「もっと意志を出した方がいいよ」みたいなふわっとした助言をされて終わっていました。

そんなことを言われても、無いものは無いんです。

もちろん、家族と過ごす時間をしっかり確保したいとか、そういうことはあるのですが、
「正直言ってそれはこの会社じゃなくても実現できるんですけど」
みたいなスタンスになっちゃうんです。

だから、
「この会社で、この仕事で何を成し遂げたいのか?」
みたいなことを聞かれても、その会社の理念に沿った優等生的な返答はできるのですが、別に本心ではないわけです。

この「自分のビジョンがない」ということに、悩んで無理やり作ろうとしたこともありましたが、そんなとってつけたようなものはすぐに忘れてしまうんですよね。

そんなもやもやした日々を過ごしていた時、前職の上司が退職する際に最後に上司がみんなに向かって話をする場があったのですが、その時の言葉が結構素敵だなって思ったんです。

内容的には大体こんな感じです。

「この会社につとめたおかげで、私は良い時間を過ごすことが出来ました」

「この会社のビジョンはとても素晴らしいと思います。」

「私は、人生を楽しむことを目的にして生きていますが、この会社のビジョンは、その目的を果たすための良い手段になってくれました」

みたいなことを言っていたのです。

私は一瞬よくわからなかったのですが、後からしっかりと考えてみると、この上司にとって、
ビジョンは目的ではなく手段だったんです。

ビジョンとは目的=ゴールだと思い込んでいた私にとっては、新しい考え方でした。

楽しく一日一日を過ごすということが目的であって、ビジョンがある事で人生に張りが出て、目的を果たしやすくなる。

という事ですね。

この言葉を聞いて以降は、

「どうなりたいか」は明確になっていなくても、「どうありたいのか」ということがあれば良いのではないかと思うようになったんです。

何になりたいのかはよくわからないけど、常に機嫌よく居たいとか、

何か困難にぶつかった時にはどんな自分でありたいのか、常に前向きな自分でありたいとか、

そういう、自分のスタンスを目標に置けばよいんじゃないかなと。
それを実現するための手段としてビジョンがあるなら、ビジョンはコロコロと変えたっていいし、無いなら無いでもいいんじゃないかと。

少し気が楽になったんですよね。

ゴールを明確に定めて、そこに突き進むだけがすべてでは無くて、

その過程をどんな風に楽しんだり、いろいろと感じたりするかってことの方が大事なんだなって思ったんですよね。

実際、その人が何を成し遂げたのかってことよりも、その過程でその人が何を感じて、どんな態度で困難に向き合って、っていう方が物語になるじゃないですか。

態度的価値っていうんですかね。

その人の実績よりも、その人の考え方や感じ方の方が、周りへの影響も大きいような気がします。

診断士としてヒアリングさせてもらった社長たちも、それぞれのビジョンの裏にはこんな思いがあったのかもしれませんね。

そのビジョンを実現する過程で、社長はどんなスタンスや態度で困難に向き合いたいのか、どんな自分でいたいのか。

社員からすれば、むしろそこを知りたいのかもしれません。

そんなことを意識しながら、ヒアリングが出来るとよりクライアント理解も深まるのではないでしょうか。


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