「脳死」判定の男性、心臓を取り出される直前に目覚める!
目が覚めると、自分の心臓が取り出される寸前だった…
そんな悪夢のような出来事が米ケンタッキー州で発生していたことが明らかになりました。
NPR(米国公共ラジオ放送)の報道によると、この事故は2021年10月に起きたもので、「脳死」と診断されていた男性患者がドナーとして心臓の摘出手術を受ける直前に突然目を覚ましたという。
この件については現在も調査が続いており、今後、脳死と判定するためのプロトコル(診断手順)の見直しが検討されています。
参考文献
‘Horrifying’ mistake to take organs from a living person was averted, witnesses say
https://www.npr.org/sections/shots-health-news/2024/10/16/nx-s1-5113976/organ-transplantion-mistake-brain-dead-surgery-still-alive
ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
「脳死」と判定される基準は?
2021年10月、米ケンタッキー州リッチモンドに暮らす30代の男性トーマス・フーバーさんは、薬物の過剰摂取により意識不明の重体に陥り、地元のバプティスト・ヘルス病院(Baptist Health Hospital)に緊急搬送されました。
フーバーさんは心停止の状態にあり、医師の懸命の処置もむなしく、意識が戻ることはありませんでした。
そこで医師らは正式な手順にもとづき、患者の「脳死」の判定を行っています。
脳死は脳活動を含むすべての身体機能が不可逆的(=2度と元に戻らない状態)に停止していることと定義されます。
正式に脳死が確認されると患者は亡くなったと判断されますが、脳死と判定するには、絶対に間違いがないよう厳しい基準をクリアしていなければなりません。
まずは患者が深い昏睡状態にあることを確認し、身体にピンなどで刺激を与えて脳が反応しないかどうかを観察します。
次に瞳孔に光を当てて変化がないことを見ます。
さらに脳幹の働きによる自動的な身体反射が確実に消えていることを調べるため、気管内にチューブを入れて咳き込まないか、角膜を刺激して瞬きしたり、眼球の動きがないかなどを確認します。
それから自発的な呼吸が停止しているかどうかをチェックします。
ここまでの一連の検査が終わった後、大体6時間以上の時間を空けた後、再び同じ手順を繰り返します。
そして脳を含む身体機能がまったくの無反応であることが確認されれば、「脳死」と判定されるのです。
報道によると、フーバーさんの場合はこれらの項目がすべて確認できたので、医師が「脳死」と診断したといいます。
その後、フーバーさんが生前にドナーとして自らの臓器提供に承諾していたことから、家族の同意のもと、心臓の摘出手術が準備されることになったのです。
ところが摘出手術の直前に、誰もが予想していなかった出来事が起こりました。
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