現存する「世界最古のペニスの化石」
交尾で繁殖する生物にとって生殖器官は絶対に欠かせません。
生命史の中で生殖器官がいつ誕生したのかは定かでありませんが、現存する世界最古のペニスなら知られています。
それは約4億2500万年も前の「貝虫(かいむし)」という生物のペニスです。
一体どのようなものだったのでしょうか。
参考文献
元論文
An Ostracode Crustacean with Soft Parts from the Lower Silurian
https://www.science.org/doi/10.1126/science.1091376
ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
コレが現存する「世界最古のペニス」だ!
世界最古のペニス化石は2003年、イギリス西部ヘレフォードシャーにある約4億2500万年前の古生代シルル紀の地層から発掘されました。
発見者の一人である英レスター大学(University of Leicester)の古生物学者デヴィッド・シヴェター(David Siveter)氏によると、化石は火山灰に埋もれていたことで腐食や分解が防がれ、驚くほどの精巧さで軟部組織が保存されていたといいます。
この化石は「貝虫(学名: Ostracoda)」という甲殻類に属する微小生物のものでした。
貝虫とは、全身が二枚貝のような殻で覆われた体長1〜2ミリほどの小さな甲殻類です。
貝虫は現生種と絶滅種を合わせると数万種が見つかっており、最も古い種だと約4億5000万年前にまで遡ります。
生殖器官を含む軟部組織は貝殻の中にすっぽりと収まっていますが、隙間から付属肢を出してちょこちょこと移動することが可能です。
彼らは太古の昔から今日に至るまで、世界中の海水および淡水域に広く生息し、水中の懸濁物(けんだくぶつ、水に溶けずに残る粒子)や動植物の遺骸などを食べて生きています。
では、シヴェター氏らが発見した貝虫のペニスとはどのようなものだったのでしょうか。
チームが見つけた貝虫の化石は体長1ミリほどの小さなものでしたが、目や付属肢、呼吸するためのエラといった軟部組織がほとんど無傷のまま残されています。
そしてデジタルスキャンにより3Dモデルを作成したところ、体の後部に非常に長い突起が伸びているのに気づきました。
これこそが現在記録されている”世界最古のペニス”だったのです。
実際の画像はこちらから閲覧してください。
(※ 一番右のコピュラトリー・オーガン(Copulatory organ)というのが生殖器官のことです)
しかも貝虫のペニスは体長の約3分の1を占める巨大なものでした。
これは比率でいうと、貝虫がとんでもないサイズの生殖器官を持っていることを意味します。
さらに驚くべきは貝虫が長さ10ミリもの巨大精子を作ることです。
これは全長の約10倍もの長さに匹敵します。
こうした巨大精子には「受精率の高さ」や「メスを惹きつける」などのメリットがあるといいます。
この発見からシヴェター氏らは、貝虫の化石にギリシャ語で「大きなペニスを持つ傑出した泳ぎ手」を意味する「コリンボサトン・エクレクティコス(Colymbosathon ecplecticos)」との学名を与えました。
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