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ヤングNazca海外出張 ソウル編㉘

■前回のエピソード
Nazca達は「バッカスD」という「リポビタンD」のパクリ商品を差し入れとして購入し、タクシーに乗りサンプル工場へ向かった。


岩巻・Naz
「アンニョンハセヨ!」

今僕と岩巻課長は「イ課長」と3人で某縫製サンプル工場に来ている。

理由は明日の朝、帰国する時に「ショートパンツ×300枚」も一緒に持ち帰ってこいとの「指令」を受けた為、その商品の現在の進捗を確認すべく「縫製現場」まで訪れている。

因みに「型紙」と「生地」を工場に投入したのが本日の午前なので常識的に考えればかなり無茶を言っている。

しかし、とても売れ筋な商品だと日本の本社の「部長」が言っているので是が非でも間に合わせなければならない。

仮に間に合わず手ぶら帰国した場合、本社の皆に「ブーイング」を喰らい「つるし上げられる」ことになる。

そのことを想像し、深くため息をつきながらも、僕はイ課長が購入した「バッカスD」を工員達に配り始めた。


この工場は「量産工場」ではなく「サンプル工場」の為、規模的には非常に小さい。

工員もどこか「かき集めてきた」感があり6名ぐらいで作業をしていた。

本当に間に合うのだろうか・・・

僕は少々不安になり「イ課長」を通して「ジャン課長」に本当に間に合うのかと聞いてみた。

すると「ジャン課長」はこう答えた。

ジャン課長
「クェンチャナヨ!」

もはや通訳などいらない分かり易い返答だった。

更に話を聞くと「洗い加工」も無い製品なので時間のロスも少ないと言っていた。

僕はその言葉を聞き少し安堵した。

工場内も意外にも「ポジティブ」な雰囲気が漂っており、作業者は皆にこやかな表情をしていた。

僕はいきなり「無茶苦茶」な要求を突き付けられて皆「嫌々」作業をしているのだとばかり思っていた。

この流れは良い・・・
本当に大丈夫かも!

心に少し余裕ができた僕は、現在の作業工程を確認してみた。


現在の工程は「裁断」が終了し、一部のパーツを縫い合わしている段階だった。

そしてふとその作業を観ていると「あること」に気がついた。


それは「チャコペン」の跡だった。(チョーク跡)

画像1

この「白い線」は出荷先の「日本」で度々問題とされているのだが、いくら注意してもいっこうに歯止めが利かず「慢性的」に起きているのだった。

日本本社
「消さないのならチョークは使うな!」

これは毎度注意していることなのだが全然改善されていない。


嫌な物を見てしまった。
何故だ。
何故使うのか。
いや、使ってもいい、だが何故毎回消さずに出荷するのだろうか。

僕はこの時「瞬時に」自問自答を繰返した。

どうしよう・・・
注意すべきか・・・
それとも今順調に進んでいるので「黙認」するか・・・


そして出した答えが「黙認」することだった。


これはイチ管理者としてかなり「問題」な行為だったと思うが、とにかく「物」を納めることを「優先」する思考が勝った。

また良い流れを「止めて」周知注意し、作業者の「士気」を下げさせることはマイナスだと判断した。

僕はイ課長にやんわりと「仕上げでチョークを消すように伝えて」とお願いした。

イ課長は「分かりました」と返事をし、ジャン課長にそのむね伝えていた。

僕は「岩巻課長」がこの間何をしていたのか、視界に入っていなかった。

それほどまでに緊張し「集中」していたのかも知れない。


これがいわゆる「アウト・オブ・眼中」てやつだろうか?

■1部分ネタバレ
結果的にショートパンツ×300枚は日本に持ち帰れたが問題の「チョーク」の跡はくっきり残っていた。

㉙へつづく


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