「舞台ウマ娘」からのミュージカル初心者向け宝塚作品紹介 byヅカヲタ
諸君、宝塚も良いぞ。
先日私がTwitter(そしてふせったー)に流したこの呟き。
私も楽しんでいるメディアミックス作品『ウマ娘プリティーダービー』が舞台化された『舞台「ウマ娘 プリティーダービー」~Sprinters' Story』。ABEMAのPPVで観劇した私が、観劇直後の勢いで書いたレビューだった。
いま読み返すと、なかなかにテキトーなことも書いていて正確性に欠ける部分も多いが、私の想像を超えて拡散され、それなりの反響をいただいた。
そのほとんどが好意的なものだったことを、まずはここに感謝したい。
そして思った。「舞台ウマ娘、良かったよね」
さらに思った。「2.5次元ミュージカル、面白いよね」
重ねて思った。「諸君、宝塚もいいぞ」
2.5次元ミュージカルは今や、アニメやゲーム、漫画作品の舞台化としてのフォーマットとして大きな地位を手に入れている。
ここから舞台、もといミュージカルには初めて触れた方も多いだろう。特に、今回の「舞台ウマ娘」では、これが初観劇という方が割合多かったように思う。(個人の感想です)
そんな初の舞台鑑賞を経て、舞台やミュージカルっていいなあ、他のも見てみようかなあ、でもハードル高いよなあ、などと思った方へ、最大級のお節介を焼きたくなった。
題して「舞台ウマ娘からのミュージカル初心者向け宝塚作品紹介」。
なーんのひねりもない。そのまんまである。
宝塚≒2.5次元ミュージカル
最初に、声を大にして言いたい。
「2.5次元好きは、ヅカヲタになる才能がある」と。
なぜか。それは、もともと宝塚歌劇団は漫画の舞台化作品がとても多いからである。
宝塚は2.5次元ミュージカルの元祖と言ってもいい。
2.5次元ファンからもオールド宝塚ファンからも刺されそうな発言。でも本当にそう思ってるんだから仕方ない。
まずは、そんな2.5次元的作品から、おすすめをご紹介していこう。
2021年雪組本公演『CITY HUNTER』『Fire Fever!』
『CITY HUNTER』といえば、言わずと知れた名作漫画・アニメ作品である。
劇中ではあの名曲「GET WILD」も歌われたことで話題となった。
また主人公冴羽獠の「もっこり」を、お下品禁止(いわゆるすみれコード)の宝塚に合わせて、「ハッスル」と言い換えたことも各所を賑わせた。
原作ファンからも評判が良かった本作。
現在も雪組トップスターを務める彩風咲奈さんが主演ということもあって、この作品で彼女にハマっても、まだ舞台に応援に行けますよという意味も込めて、最初にこれを紹介したい。
もうひとつのポイントとして、本作は『CITY HUNTER』の後にショー『Fire Fiver!』も併せて上演されたことも挙げておきたい。
ショーって何さ、という声が聞こえてきそうなので説明しておこう。
「ショー」とは、簡単に言えばディズニーランドのイベントパレードみたいなものである。
超絶雑な表現だが、そんなに間違っていないはず。
ディズニーランドでは、通常のパレードとは別に、毎年ハロウィンやクリスマス、ベリーベリーミニーなどの特別パレードショーが行われている。
宝塚のショーは、あんな感じで「あるテーマ」に沿った歌と踊りで楽しませる、小一時間ほどのパレードなのだ。物語性のある作品もあるが、基本的にはその辺は考えなくてよい。次々と登場する華麗な衣装、ダンス、聞きごたえたっぷりの歌とコーラスを楽しむ。それだけでよい。
つまり本作は『CITY HUNTER』を楽しんだ後、ショーまで見られちゃうというお得作品なのだ。めっちゃカッコいいから見て。男役全員足何メートルあるんよって思うから。
2020年花組本公演『はいからさんが通る』
アニメ化・実写化で幾度も取り上げられてきた作品『はいからさんが通る』。原作者をして「これまで『はいからさんが通る』は、アニメや映画、ドラマになりましたが、その中でも一番いい出来です」と言わしめた本作。
紅緒と忍、そしてその周りを取り巻く演者たちも豪華。一部を除いてほとんど原作に忠実に作られていて、2時間半たっぷり、物語の世界を楽しめる。
本作は花組トップスター柚香光(れい)さんと娘役トップ華優希さんのコンビお披露目公演だった。華さんはすでに退団されているが、柚香さんはいまも現役トップスターなので、忍に惚れたら是非劇場へ行こう。会えるぞ。
2022年月組全国ツアー公演『ブラック・ジャック 危険な賭け』『FULL SWING!』
https://shop.tca-pictures.net/shop/g/gTCAB-203/
公式映像が無いのが死ぬほど残念。
本作『ブラックジャック』は、宝塚では何度も取り上げられている作品。その初演は1994年にさかのぼる。
初演のときは、メインの役(二番手役)をあの真矢みきさんがやった。
ハードボイルドな作風が得意な正塚晴彦氏による大胆な脚色により、
ブラックジャックとピノコ以外はオリジナルの登場人物による作品になっている。
男のカッコよさ全振り作品なので、キラキラ派手派手なイメージの宝塚とはちょっと違うかもしれない。でも、掛け合い歌唱とかゾクゾクするほど聴いていて気持ちいい。
そうそう、ピノコちゃんと出ますよ。
え? 宝塚って子供は入れないのでは?
ええ。大人がやりますよ。
……うん。宝塚ってね、見た目が幼児の役でもぜーーーーんぶ大人がやるんですよ。超シュール? まあ、いいじゃないか。舞台の魔法じゃい。
本作にもショーが付いている。
実は、宝塚はひとつの公演で物語のミュージカル一本だけを上演するということはあまりない。
宝塚1公演の尺は、間に30分休憩を挟んでの約3時間。
その内訳は以下の2パターンに分けられる。
① 約1時間半のミュージカル+30分休憩+約1時間のショー
② 約1時間15分のミュージカル前編+30分休憩+約1時間15分の後編
このうち、宝塚は①の公演形態がほとんどを占める。
②の公演形態は、大作ミュージカルに限られる特別な形式といっていい。
最初は物語性があんまりないショーには興味がわかないかもしれないが、推しが決まるとショーがめちゃめちゃ楽しみになるんだな、これが。
映画や小説もめっちゃやるよ
なんだか書いててめちゃめちゃ時間がかかることがわかってきたので、
ここからは駆け足で行こう。
宝塚では映画や小説の舞台化作品も多い。
2022年宙組本公演『HiGH&LOW ―THE PREQUEL―』『Capricciosa!!』
はいイケメン。
胸やけする勢いのイケメンの大嵐。
ハイローだもん。しょうがないよね。
本作の主演、宙組トップスターの真風さんは退団が決まってるので、次がサヨナラ公演になる。会いに行くなら最後のチャンスですぞ。
……チケットが取れるならな!
2021年星組本公演『柳生忍法帖』『モアー・ダンディズム!』
山田風太郎原作だもん。これも実質2.5次元だよね(暴論)。
宝塚って、和風なやつもやるんだぜ。
月代だってやりこなすのがタカラジェンヌってもんですよ。
つーかまこっちゃん(礼真琴さん)男前すぎんよー。
声、超好き。
例によってショー付き。『ダンディズム!』という1995年に制作された古典のショーのリメイク版。作ったのは岡田敬二さんという宝塚ショー界の重鎮。彼の創るショーは言ってみれば義務教育。
彼の作品を見れば「宝塚ショー」の基本中の基本が抑えられる。
悪く言えば古い、だけどよく言えば「宝塚らしさ」の権化。
何故「あれ」は取り上げないのか?
ここまで読んでいただいて、もしかしたらこんなことを思った方がいらっしゃるかもしれない。
ねえ「ベルばら」は?
宝塚といえば「ベルばら」でしょ?
仰る通り。宝塚といえば「ベルサイユのばら」。
そのイメージは根強い。
だがその理由は簡単。
「あれはもはやヅカヲタの間でも超古典作品になってる」
これに尽きる。
たしかに宝塚の伝統的作品だが、伝統といっても、朝ドラ的作品ではない。
どっちかというと、水戸黄門的作品である。
もはや初心者向けではないのだ。
上記動画は数年前に行われた記念イベントの模様だが、登場している方々を見れば、いかに本作が歴史的作品になっているかわかるだろう。
そして、セリフ回し、曲調ともに実に時代を感じるものになっていることがわかるだろう。
いまとなっては初心者向けではない。宝塚という世界観をしゃぶりつくしたいレベルになって初めて触れていい作品だと思う。
じゃあ「エリザベート」は?
「ファントム」は?
「スカーレット・ピンパーネル」は?
そう、このあたりが現在の宝塚としてメジャーな作品である。
いずれも海外名作ミュージカルを宝塚用に潤色したもの。
良作であることが保証されているし、いろんな再演の映像があるから、楽しみも多い。
……でも、初心者に筋書きを知らない作品や、キャラを知らない作品をおすすめするのはどうかと思うのだ。
そういうのは、宝塚を好きになってから観ればいい。
まだまだ紹介したりない
取り急ぎ、駆け足でここまで来た。
全組の作品を取り上げることはできたが、
書き切れなかったものがまだまだたくさんある。
その辺のことは、スペースなどでお話しよう。
(わあ言っちゃった言っちゃった、大変だぞ)
とにかくここで伝えたいこと。
それは、舞台に貴賤などないということだ。
とかくに宝塚は他の舞台と比べて高い位置に祭り上げられがちで、ファンもお高くとまっているイメージが付きまとっている。
それは宝塚の持つ特殊な雰囲気によるものが大きい。
(その辺もスペースでお話ししよう)
だが、結局は芝居で、ミュージカルで、ショーなのだ。
スキルの違いは当然ある。
声優や専属の俳優が行う2.5次元ミュージカルとは、趣が異なっている部分はもちろんある。
だが、同時に共通点も非常に多い。
私は結局、どちらも楽しんだら最強だと思うのだ。
舞台って、楽しい。
観るのも、演るのも。
場内でどのように振舞うべきか、しきたりや作法はもちろんある。
でもそれは、何でもそうだ。
ミュージカルも、映画も、レースも。
守るべきルールはどこにだってある。
でも、その先は、楽しむのが最強なのだ。
決してその溝は深くない。
舞台ウマ娘を楽しめたのなら、宝塚も楽しめるのだ。
宝塚を楽しめたのなら、2.5次元ミュージカルも楽しめるのだ。
諸君、舞台ウマ娘は良かったぞ。
諸君、宝塚も良いぞ。