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DX Criteriaでギャップを埋める #CTOA

はじめに

こんにちは、ナビタイムジャパンのVPoE「メタルは全てを解決する」です。
この記事はCTOA Advent Calendar 2020 3日目の記事です。

昨日のFindy.筋肉CTOのまさたんの記事は「CTOが困っているエンジニア組織の課題ランキング」でしたね。どれも「あるある~」とうなずける課題ばかりでした。こういう課題を自分の組織以外も持っているのだ、ということがわかるというのも、アドベントカレンダーのいいところですね。

今回は、VPoEとして推進している「ナビタイムジャパンにおけるDX Criteriaの活用」について書きます。

ナビタイムジャパンについて

 本題に入る前に、私が所属する「ナビタイムジャパン」について簡単に説明させてください。

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 株式会社ナビタイムジャパンは「経路探索エンジンの技術で世界の産業に奉仕する」という経営理念のもと、人々の移動をサポートする様々な事業を展開している企業です。

 「NAVITIME」をはじめとしたコンシューマ向けのナビゲーションサービスは、もしかしたらご存知の方もいらっしゃるかもしれません。(もし使ってるよ!という方がいらっしゃったら、大変うれしいです!)

私はVPoE以外にも経路探索の研究開発部門における責任者を担当しており、直近では以下のような新機能の開発に関わっていました。

DX Criteriaとは

 いよいよ本題です。DX Criteriaというのは、日本CTO協会が提供しているガイドラインで、Digital Transformation, Developer eXperienceの2つのDXを一体でとらえた基準です。

 チームビルディングやタスクマネジメント、CIにCD,データドリブンな意思決定やデザイン思考…キーワードとしては頭の中にあり、また実践もしているものたちですが、果たして客観的に見たときに、自分たちの組織がどういう状況にあるのかということを知るすべはありませんでした。

 そこに登場したDX Criteria。これを活用することで自分たちの現在地が明確になり、さらに発展・成長していくための足掛かりとなると考え、活用することにしました。

DX Criteria活用の3-STEPS

 DX Criteriaを知り、活用を始めてからほぼ1年。ふりかえってみると3つの段階を踏んで活用を広げていきました。

STEP1 事業部ごとの読み合わせ(責任者主導)
STEP2 現場での読み合わせ(メンバー主導)
STEP3 トップダウンとボトムアップのすりあわせ

ひとつひとつ解説していきます。

STEP1 事業部ごとの読み合わせ(責任者主導)

 ナビタイムジャパンでは、コンシューマ向けのスマホアプリ以外にもさまざまな事業を展開しています。以下は公式サイトに掲載されている事業一覧です(2020年12月時点)。開発機能を有している部門としては、ここに列挙した事業部に加え研究開発部門があります。

ナビゲーションサイト・アプリの運営・開発
経路探索エンジンのライセンス事業
経路付地図配信ASP事業
ビジネスナビタイム事業
法人向けソリューション事業
Webメディア事業
テレマティクス事業
交通コンサルティング事業
海外事業
インバウンド事業
トラベル事業
MaaS事業

  まずは、この事業部単位でDX Criteriaのアセスメントを実施することにしました。なぜ会社全体ではなく事業部単位での作成なのかというと、それぞれが置かれているビジネス環境などにより状況が大きく異なるためです。(なお、コーポレートの項目については全社共通となるため、この項目だけは全社共通で行っています)

 この事業部単位でのアセスメントは、各事業部の責任者主導で実施してもらいました。いうなればトップダウンのアセスメントです。さて、このアセスメントを実施することで各事業部の特徴が浮き彫りになりました。

・研究開発部門はチームの項目が高く、デザイン思考の項目が低い
・新しい事業部は全体的に高い
・歴史ある事業部は相対的にシステム、データ駆動の項目が低い

 DX Criteria自体には、「こういった項目を伸ばせばよい、ということがわかってありがたい」というポジティブな反応がありました。

STEP2 現場での読み合わせ(メンバー主導)

 事業部ごとにアセスメントを行った次の一手は、「メンバー主導での読み合わせ」でした。(コロナ禍でのバタバタもあり、STEP1からはずいぶん期間があいてしまいました)

 なぜ現場での読み合わせを行ったのか。これは、現場から「DX Criteriaの理解を深めたい」という声が上がったということと、現場目線で理解を深めることでトップダウンでのアセスメントとは違った学びが得られるのではないか、と考えたためです。このときは「チーム」の項目に焦点を当て、有志メンバーで項目への理解を深める読み合わせを実施しました。

 この読み合わせは好評だったこともあり2回実施することになりました。わかったことは以下の通り。

・評価項目を現場に落とし込んだときのリアルな課題が明らかになる
・読み合わせから発生する議論自体が、現場を前進させるきっかけになる
・必ずしも現場に合わないCriteriaも存在する。しかし、それはアンラーニングするべき箇所なのかもしれない
・Criteriaに記載されていることが現場からは遠く感じるものもある。しかし、読み合わせを通して「最終的に目指す姿としては意識するものの、いまできていないからといって悲観するものではない」というコンセンサスが得られる

 どのように実施したか、など詳細については別の記事にまとめていますので、よかったらご一読ください。

STEP3 トップダウンとボトムアップのすりあわせ

 いよいよ最終ステップです。読み合わせを通してDX Criteriaへの理解を深めたメンバーに、自分が所属する事業のアセスメントを行ってもらいました。(全てを作るとボリュームが大きいため、チームの項目のみ)

 いわばボトムアップのアプローチによるアセスメントの実施。以下のような狙いがあり、実施することにしました。

・責任者と現場とのギャップを見える化する
・ギャップから対話の機会を生み、改善へとつなげる

実際にやってみると、基本的に現場のほうがシビアな評価を行っているということがわかりました。

トップダウンとボトムアップの間に生まれるギャップ

 ギャップが生まれている項目は、以下のようなものでした。

・タスクマネジメント
・透明性ある目標管理
・経験主義的な見積もりと計画

 おおむね責任者サイドのほうが、現場サイドより高く評価していました。
これは「マネジメント側にとってやりやすい環境に最適化されている」、そしてそれが現場にとっては必ずしもやりやすいわけではない、ということの表れではないか、と推測しています。

 こういったギャップについて、責任者へ共有しました。「確かに現場からはわかりづらい部分があるよね」といった気づきにつながったようなので、今後の改善に期待がもてます。

そしてもうひとつ、興味深い事象が観測されました。

期初から大きく改善した事業部

 前述のように、全体としてはトップダウン評価よりボトムアップ評価のほうがシビアになる傾向がありました。しかし、例外的にボトムアップ評価のほうが高い事業部がありました。

 この結果について責任者サイドに共有したところ、以下のことがわかりました。

・期初のアセスメント結果は良好ではなかった
・いくつかプロセスを見直した
・責任者サイドとしては、改善したと思っている

 この、責任者サイドの自己評価については知らないメンバーが行ったアセスメントで数値の改善が見られていたのは、とても印象的でした。

 ここからいえることは「アセスメント結果という客観的な指標を持つことで、改善するべきポイントが明確になる」「その改善は働いているメンバーが実感できる形で表れる」ということです。

進化し続ける現場を目指す

 まとめます。

・3つのSTEPでDX Criteriaを活用していった
・トップダウンとボトムアップでの認識のギャップを見える化した
・「見える化」することで現場は改善していける、ということがわかった

 今回はDX Criteriaという指標をベースに現場を見える化し、よりよい現場へ進化していくためのきっかけを模索しました。そしてその狙いはある程度うまく当たってくれたな、という実感があります。

 DX Criteriaのアセスメントでよいスコアを出すことは目的ではありませんし、それだけを指標にするべきでもありません。しかし、このようなわかりやすい指標があることで現場の改善は進めやすいことも事実です。

 こういった有用な指標などを活用しながら、ナビタイムジャパンの現場をよりよいものに進化させていくー。それが、私「メタルは全てを解決する」の大切な使命です。

CTOA Advent Calendar では全25日、様々な CTO の方のあり方、そして様々な切り口で情報が共有されていきます。組織規模とCTOの求める役割の変化について書かれた松本さんの記事、CTOが困っているエンジニア組織の課題ランキングについて書かれたまさたんさんの記事、そして今回はDX Criteriaによる組織の見える化・立場による視点のギャップを埋める取り組みについて紹介しました。明日以降も、きっと新たな知見に会えるはず。楽しみです。

明日は株式会社M&Aクラウドのkazuhei__さんの記事です!お楽しみに!