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トラックドライバーの走行を復元する「復元ルート」機能をリリースしました

はじめに

こんにちは、バネ屋です。
ナビタイムジャパンで『トラックカーナビ』をメインにiOS/Androidの開発を行なっています。

今回は2023年6月14日にプレスリリースを出した『トラックカーナビ』の「復元ルート」についてご紹介します。

物流2024年問題

「復元ルート」の話をする前に、みなさんは物流の2024年問題をご存知ですか?
働き方改革関連法により、2024年4月1日以降はトラックドライバーの時間外労働時間の上限が年960時間になることで起きる諸問題のことを指します。
今までマンパワーでどうにか運んでいたものが、時間の上限により、運べなくなってしまうのです。
また、ドライバーの高齢化や新規ドライバー不足、労働時間短縮による賃金低下によってドライバーの数も少なくなると予測されていて、これも運べなくなる要因になっていきます。

トラックドライバーというと一般的にイメージされるのは宅配便かもしれません。
ですが、トラックでの輸送量の中で宅配の割合はおよそ2%と言われいます。
つまり大多数が、企業間での輸送です。
企業間輸送ができなくなるとこんな問題が起こる可能性があります。
・スーパーやコンビニに商品が並ばなくなる
・部品が届かないので家電の生産ができなくなる

こうした問題の改善に『トラックカーナビ』をはじめ、当社のサービスで何かお手伝いできないかと考えております。

「復元ルート」機能について

どんな機能か

「復元ルート」機能はその名の通り、ドライバーの走ったルートを復元して検索、ナビする機能です。
通常のルート検索ではいくつかの条件で最適なルートを検索しますが、「復元ルート」機能を使うことで少し遠回りだけど自分が走りやすい道や自分だけが知っている最適ルートを通るルートを検索することができます。

復元しないと求めている経路は検索できない

『トラックカーナビ』ではトラックログという1日ごとの走行記録が自動で保存される機能があります。また走行記録から自動で滞在地点も算出するようになっています。

日別と月別のトラックログ画面

こちらのログをもとに、できるだけ復元した走行ルートを検索します。

『トラックカーナビ』ではドライバーの安心安全のため、完全に再現ということはあえて行わず、道路の状況によってルートが変わるようにしています。
具体的には
・道路が通行止めになっている
・ドライバーの運転する車両の違いによって規制が発生する
・事故渋滞が発生している
などの場合には、その部分を回避しつつ元のルートに近いルートを復元するようにしています。
ルート検索結果に元々の走行ルートのログを重ねて表示しているため、元ルートとの比較も簡単に行えます。

地点の変更にも対応可能

トラックログで滞在地点として推定できない場所があった場合や、出発地や目的地が変わっている場合には、ご自分で地点を追加や変更していただくことで希望のルートに変更も可能です。

地点が足りない場合は追加することで合わせることが可能

他のドライバーの走行も再現可能

トラックログは共有が可能です。
そのため、自分が受け持つ配送ルートを別の人にも同じルートで回ってもらうということが可能になります。
これにより、ルートを教えるという工程をより簡単に行うことができるようになります。
つまり、ベテランドライバーのルートを新人ドライバーに共有したり、急遽休むことになってしまった場合に同僚ドライバーにログを共有したりするだけで、自分と同じ道を走行して業務に当たってもらうことができます。

共有された走行ログからルート検索

どうやって実現しているか

「復元ルート」ではログの緯度経度情報を元に通りたい場所の「コスト」を下げることで復元を行なっています。
コストについては以前に書いた記事があるのでこちらもぜひご覧ください。

緯度経度情報はトラックログの段階で道路上に補正されているため、高速道路や一般道の区別もできます。特に高速道路に関してはどこから乗ったかという移動の状態もログから判別できるため、一般道と高速道路が並走している区間だとしても基本的には復元が可能となっています。

道路を細かく指定して完全再現することも可能ですが、前述の通り、その場合には渋滞が発生している場合や規制が追加された場合に考慮することが難しくなります。
この通りたい場所のコストを下げるという対応をすることで、渋滞や規制でコストが上がった場合には回避するというような柔軟なルート検索を行えるようにしています。

なぜこの機能の開発をしたか

物流2024年問題では労働時間の制約により物が運べなくなるというお話の中でも少し触れましたが、トラックドライバーの労働人口の減少や高齢化に関しては以前から問題視されていました。

トラックドライバーの年齢階級別構成比*1

元より『トラックカーナビ』では新人の教育や安全運行の補助に使っていただきたいという思いがありました。
今回の機能によって、より確実にベテランのルート選びを学ぶことができたり、他の方のヘルプに入ったりということがしやすくなります。
また、会社によっての運行ルールや荷物の納品先でのルール(左折入庫必須等)の遵守にも役立つと考えています。

今後の展望

今回作成した「復元ルート」は特定の1日分を順路で再現しますが、実際にはリアルタイムで今日走行したルートと同じ道で帰りたいという要望もあるかと思います。
リアルタイムでの利用や部分再現等で今後もお客様からの要望をもとに開発を進め、この機能以外にも物流問題に対応できる機能の検討を引き続き行ってまいります。

日本の物流を支えるトラックドライバーの皆様を微力ながら支えることができたら幸いです。

出典
*1 全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2022」
https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/yusosangyo2022.pdf