リモートで行う「ふりかえり」研修
初のリモート研修
こんにちは。「メタルは全てを解決する」です。ナビタイムジャパンにも、4月からフレッシュな新人たちが入社してきました。
全員リモート参加で新人研修を行う、というのは弊社としても初の試みです。
特に「ふりかえり」はPCから離れてホワイトボードや模造紙、付箋を使って行うことが多いワークです。リモートで実施するハードルは高いように感じられました。
一方で「理想と現実のギャップを明らかにし、よりよい状態を目指してアクションする」という考え方はなるべく早い段階で身につけてもらいたい、とも思いました。これは、ふりかえりを繰り返すことで成長が加速されるからです。
ふりかえりの本質をおさえつつ、リモートの環境に適合したプログラムにする。それが今回の「ふりかえり研修」講師に課されたミッションでした。
研修の構成
研修は以下の構成で行いました。
ご覧の通り、大半を演習が占めるプログラムで構成しました。
これは、座学で学ぶ→実際にやってみる、を繰り返し小さい単位でふりかえることで学びを深めるためです。
午前中1: なぜふりかえりを行うのか(座学)
ここが一番大切だといっても過言ではありません。
「ふりかえり」という言葉は、ひと昔前と比べるとずいぶん浸透したように思えます。であるがゆえに、なぜふりかえりをやるのかが不明瞭で、形骸化したふりかえりになってしまう現場もあることでしょう。
そうではなく、ふりかえりの意義を理解し主体的に取り組んでもらうため、午前中最初のセッションで「なぜふりかえりを行うのか」を伝えました。
うまくいっていないときには「自分の能力が足りないからだ」と自己批判を行い、うまくいっているときは「自分が天才だからだ」と慢心してしまう。
それでは経験は経験のままで成長につなげることはできない。
課題と原因それぞれに問を投げかけ、解像度を上げる。そうすることで課題が具体的になり、経験から学ぶことができるようになります。
とどのつまり、経験から学ぶ「経験学習モデル」に沿って経験を学びに変えることが重要で、そのために「ふりかえり」を行うのだ、という話をしました。
※「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」p.084を参考に話しました
午前中2: 個人個人でふりかえりをやってみる(演習)
基本的な考え方のみを伝えた状態で、個々人でふりかえりをやってもらいました。
立ち止まってふりかえることで「できる」「できない」という粗い解像度ではなく、向き合うべき課題が明らかになるということを実感してもらえたようです。
一方で、どうしても「うまくいっていない」ことにばかりフォーカスしてしまう、といった課題も浮き彫りになりました。
午後1: ふりかえりの構成(座学)
午後は「どうやって」ふりかえりを行うかを解説してきました。
まずは「ふりかえり」をどうすすめるべきか、その構成を伝えます。
午後2: 場の設定(座学)
ふりかえりでありがちなのが、「発散した結果、本来解決するべき課題にフィットしないズレた施策が出てしまった」「ギスギスしていて思うように意見が言えなかった」というような失敗です。
これらは、ふりかえりを始める前になんのためのふりかえりなのか、どういうプロセスで進めたいかを話し合っておく、つまり場作りをすることで防ぐことができます。
おやつ神社について紹介したところ、興味をもつ方がちらほらいらっしゃいました。
午後3: データの収集(座学 + 演習)
時系列に起こったことを列挙し、ふりかえり対象期間にあったことを洗い出す「タイムライン」を実際に作成してもらいました。
後述するJamboardを利用しての作成でしたが、特に問題なく作成できていたようです。
午後4: アイデア出し、アクション決定(座学 + 演習)
ここでは、おそらくふりかえり手法としてもっとも有名であろう「KPT」を使い演習を行いました。ここもJamboardを使いましたが、スムーズにふりかえりを実施できていました。
午後5: 振り返り終了(座学 + 演習)
最後は、あらためて気づいたこと、よりよくなるためにアクションすることをまとめてもらい、各々の日報に記載してもらいました。
午前中に行ったものと比べ、向き合うべき課題に向き合えている様子がみてとれました。
また、私としても初の試みだったということもあり「Happiness Door」でふりかえりへのフィードバックを行いました。
このとき「このHappiness Doorにふせんを貼ってから、ドアを出てください」というメタファーが機能しました。
オンラインのビデオ通話はどのタイミングで退席するかに悩みがちですが、こういった「○○をしたら退席」というルールが定まっているとやりやすい、というのが副次的な気づきとして得られました。
そして、受講者からの評判はすこぶるよかったです。もちろん入社したての新入社員が先輩社員の講義に悪い評価をつけづらい、というバイアスはかかっているでしょうが、Whyを伝え、Howを学び実践し、スタート地点との差分を知るという構成のおかげでうまく伝わったのではないかと考えています。
補足: 利用したツール
ナビタイムジャパンではG Suiteを利用しており、社内に利用のための知見が溜まっています。
そのため、タイムラインやKPTといったワークを実施するにあたってはJamboardを活用しました。
慣れているからかもしれませんが、このJamboardがあればオフラインでのふりかえりと同じようにワイワイ実施できると感じています。
おわりに
というわけで、初のオンラインふりかえり研修を実施しました。
オンラインとは一見相性の悪い「ふりかえり」ですが、ツールの力を借りること、また適切な手法を選択することでオフラインとかわらずに実施できるということがわかりました。
オンラインだとどうしてもふりかえりは途絶えがちですが、こういった不確実性の高い状況でこそ、想定と現実のギャップを知りアクションしていく「ふりかえり」は重要です。
この記事は「新卒向けに行ったふりかえり研修」について解説しましたが、新卒に限らず、リモートでどうふりかえりを行うべきか悩んでいる現場を後押しするものになれば幸いです。
6/9追記 研修で使用した資料をslideshareにアップしました。