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途切れながら続く渋滞の規模や、どこのIC・JCTまで渋滞が続いているかがわかる「断続的な渋滞案内」を提供開始しました

こんにちは、青春パンクです。
ナビタイムジャパンでナビゲーションエンジンの研究開発をしています。

カーナビアプリで欠かせない渋滞案内の機能において、新たに断続的な渋滞の案内が追加されました。渋滞に関する案内は、先日「渋滞増減傾向の案内」が記事として公開されていますので、あわせてお読みいただければ幸いです。

今回の対応では下の図のように渋滞案内が変更になりました。
今回の記事では、この案内を実現するにあたって存在した社会的課題や、仕様検討の話等について、紹介していきます。

残念ながら、渋滞による悲しい事故は日々起きています。そのような社会的課題に対して、どのようにアプローチしたかをご紹介します。
また、この案件を実現するためにはナビタイムジャパンが扱うナビゲーションエンジンへの知識だけでなく、渋滞情報への知識が必要不可欠でした。
このような実現のための課題についても紹介しますので、なにかお役に立つことがあれば幸いです。

対応イメージ

断続的な渋滞とは

今回、新たに案内している「断続的な渋滞」(以下:断続渋滞)について簡単に説明します。

断続渋滞のイメージ

断続渋滞とは上の図で赤い四角がある区間全体を指します。
この記事内で用いる用語の説明も兼ねて、詳しくみていきます。

渋滞区間と非渋滞区間

断続渋滞は、渋滞や混雑している区間(以下:渋滞区間)が、速度回復している区間(以下:非渋滞区間)を挟んで渋滞が連なっているような状態を指します。

よく高速道路を走行される方は、道路情報版に断続渋滞20kmと書かれたような表記を目にしたこともあるのではないかと思います。

道路情報板のイメージ

断続渋滞案内について

今回『カーナビタイム』をはじめ、『ドライブサポーター』や『auカーナビ』等で提供を開始した「断続渋滞案内」は、先の渋滞区間や非渋滞区間を考慮して断続渋滞と判断された場合に、従来までの「この先、渋滞しています。」ではなく「この先、断続的に渋滞しています。」と音声で案内する機能です。

『auカーナビ』内でのお知らせの画像

開発背景

ここからこの案件を実施するに至った開発背景について紹介します。

社会的課題

背景の一つは「事故の防止」という目的のためです。
ニュースでも渋滞に伴う事故の話は最近よく目にすると思います。

なぜ渋滞していると事故が起きてしまうのかをイメージしてみましょう。今回は、断続渋滞が起きている区間でどのような道路状況になっているかを考えてみます。

断続渋滞が起きているような区間では、渋滞区間と非渋滞区間が繰り返しやってくるため、「渋滞の先頭がどこまで続いているのか」をドライバーは把握し辛くなります。また、速度回復や速度減少が繰り返されるため、注意力が散漫になりやすくなります
こういった状況は、追突事故や、玉突き事故が起きやすくなるため、ドライバーはより細心の注意を払う必要があります。

断続渋滞の時のイメージ

そういった事故を防ぐために、「ユーザーに大体どれくらいの規模で渋滞が続くのか、どこのICやJCT付近まで渋滞しているのかを伝える」ことで断続渋滞による注意喚起ができないかと考え今回の案内を実現することに決めました。

異動に伴う新しい発見

また、ナビタイムジャパンの研究開発組織は機能毎に分かれています。

その中で私は、昨年の夏まで2年半、渋滞などの交通情報の研究開発をするチームにいました。そして昨年の秋から今のナビゲーションエンジンの研究開発をするチームに異動しました。

異動前のチームでは渋滞のデータそのものを扱っていましたが、異動後のチームでは経路全体の音声ガイダンスをはじめとしたナビゲーションを扱うため、各渋滞のデータをどのように利用すれば利用者にとってベストかを考えることがメインとなりました。

データを扱い作成する開発からデータを利用する開発に切り替わり、思考の仕方を変えていく中で、前のチーム内での対応はむずかしかった「渋滞のデータ面だけでは解決することが難しい、経路上の少し離れた渋滞をつなげて案内すること」ができるのではないかと考えました。「渋滞のデータに関しての開発した知見」と、「ナビゲーションに関して開発した知見」の両方がないと提案できない内容でした。

異動について

実現方法

仕様検討

今回の案内をする上では仕様の検討が重要でした。現実での電光掲示板やJARTICのラジオでの放送でも断続渋滞に関しての言及があるため、できるだけそちらの案内とは乖離した仕様にはせずに、かつ、違和感がない案内ができる仕様を考えることが肝でした。

特に、非渋滞区間の間の距離はどこまで許容できるのかといった点です。
この距離が大き過ぎれば実際とは乖離した案内になり、全く別の渋滞をつなげて案内してしまうことになります。

事故渋滞と工事渋滞が間を開けて起きている

一方で小さすぎると、速度が出ている高速道路では断続渋滞と感じるような渋滞なのに、従来のまま細切れに渋滞が案内される状況が続いてしまうことになります。

実際には、上記のことを考慮し、3月や4月の休日のユーザーの走行ログや、平日朝夕のラッシュ時の走行ログを用いてナビゲーションを作成し、当時の交通情報と比較して、ナビゲーションの妥当性を判断しながら仕様を決定していきました。

最後に

この記事では、断続渋滞案内の機能の紹介とその開発の際にあった課題や断続渋滞の案内をする意義について紹介しました。渋滞による事故を防ぐきっかけになればと思います。
また、今後もよりわかりやすくユーザーの皆様の事故防止/休憩促進ができるような案内を目指し邁進して参ります。
最後までお読みいただきありがとうございました。