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言い表せない感情

映画を見てきた。

公開終了間近で人も数える程しかいないような映画だった。

映画が終わって外に出ると思いの外寒くて、喧騒も落ち着いて、静かだった。

空を見上げてゆっくり歩いた。
星が見たかった。

遠くにある星は確かに光っている。

街灯の明るさに小さな苛立ちを覚えた。
幸せなはずなのに何故か落ち着かなかった。

私はこの感情の名前を知らない。

私なりに言葉を掻き集めて見たけれど
上手く表現出来ない。

読み捨てられたいつかの雑誌も
誰かの足音も

手の平の小さな宇宙でさえも

私の今の感情を上手く表現出来ない。

深く暗い今の空も、紺色でも群青色でもダークブルーでもない。

赤みがかった、それでいて限りなく黒に近い紺色。

喉まで出かかったその色の名前を私は知らない。

私がいかに無知であるかをつくづく感じさせる。

楽しい
嬉しい

美しい

寂しい
もどかしい

優しい
冷たい

でも暖かい

身体のもう少し奥
喉の下

そこで生まれる感情にさえ名前をつけられない。

手離したくない今のこの感情もあと数秒で失われる。

空の色もまた少し変わった気がする。

言い表せないこの感情には名前があるのだろうか。
あの空の色は一体何色なんだろうか。

いつかそれが知りたい。

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