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【書評】福ねこお豆のなるほど京暮らし

町家の点景から広がる京の街、流れる時間

『町家えほん』に続く山口珠瑛の2冊目の著作。前作に引き続き、かわいらしく柔らかいタッチのお豆さんと福ねこさんが色鉛筆で描かれ、それでいてしっかりしたパースの町家の構造がしっかりと描かれている。
裏写りの少ない厚手の紙にフルカラー。

本書では町家の暮らしに続いて、町家が集まってできた「京の街」の紹介で点が面に広がり、さらに京の街を流れる「四季」という時間軸と、京都に対する視点がどんどん立体的に拡がっていく。

職人が何度も使い込んだ道具に習熟していくように、京都の人も何百年と町家を、京の街を生活という形で使い続けてきた。それは当然、道具としての家、町に対する習熟を生み、上手な使い方と共に何重にも塗り込められた意味を持つようになる。

効率的に上手に使う、とは限定された環境の物を「重ねて使う」事であり、同じ物を使うのであれば道具は約分化されて行く。
これが「文化の洗練」という事なのだろうと思う。

この本は、京都の人がそうやって育んできた文化の「洗練」をしっかりと正確に伝えている本だと思う。
豊かで合理的な京都の生活を覗き見するのにはぴったりの良書だと感じた。

山口珠瑛のYou Tubeチャンネル

この本の絵を描いている山口珠瑛さんが最近、You Tubeでの動画配信を始めたとのことなので、ここで紹介。
まだ現時点(2020年8月8日)の段階では始めたばっかりなので、一番最初からまとめて見るのもそんなに大変ではない。
ゆるくて和む系。

#書評

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